久能は過去のタイムカプセル探しに隠れた夫婦愛を見抜く=田村由美「ミステリと言う勿れ」11

天然パーマが爆発したような特徴的なカリフラワーヘアーの持ち主で、人と交わるのが苦手な心理学専攻の大学生・久能整(くのう・ととのう)が、望まないのに向こうのほうから降りかかってくる奇妙な事件を、その丁寧で鋭い観察力と、雑多な博学的知識をもとに謎解きをしていく。Z世代が探偵の新感覚ミステリー・シリーズ『田村由美「ミステリと言う勿れ」』の第11弾

前巻で、青砥刑事の娘・友香をはじめとする、8年前の連続小児誘拐事件に関わった者の子供の大量誘拐事件を解決し、8年前の事件の真犯人をあぶりだすとともに、青砥刑事と娘との行き違いを解決した「久能整」だったのですが、今巻では久能がバレンタインデーに関連する二つの事件の解決譚と、ガロが姉・愛珠の謎の死に関わっていると推測している医師・鳴海の正体を調べるため、家へ潜伏する物語が収録されています。

あらすじと注目ポイント

構成は

episode15 失われた時を重ねて
episode16 果報の塩梅
episode14.5 気がつけば潮目
番外編 ある結婚の風景

となっていて、今回はシリーズものではなく単話構成。

episode15 失われた時を重ねて

第一話の「失われた時を重ねて」では、大学の同級生で、やたらコミュ力の高い「相良レン」が「変なバイト」をしないか、と誘いをかけてきます。それは、「日本語の読み書きができて」「ひらめきがあって」「集中して考えるのが得意で」「まじめで騒がしくない」人を募集しているというもので、およそ何をするかわからない代物のため、万事、慎重派の「久能整」くんは尻込みするのですが、強引な「レン」によってひきずりこまれてしまいます。

函館公会堂を模して作られたという、2~3年前まで学校だったバイト会場で聞いた仕事の内容は、22年前に埋められたタイムカプセルを探し出すというもの。カプセルを埋めた人物は若年性の認知症にかかっていて、その場所を思い出せなくなっているため、その人物の妻が依頼主となったわけです。
さて、バイトを引き受けた久能くんたちの推理は・・ということで心温まる夫婦の愛情物語が現れてきます。

episode16 果報の塩梅

二話目の「果報の塩梅」はひさびさに「ライカ」さんとのデートです。彼女は春がくれば自らを消してしまうつもりなので、それまでの短い間の「逢瀬」ですね。

そしてデートで訪れた商店街で福引を引くのですが、彼のもっていた袋の中からでてきた赤い玉には子供の字で「け」という文字がかかれています。この玉の字が意味するものは・・という筋立てです。

この玉の謎解きとは別に、整くんには嬉しいハプニングがおきることになりますね。

episode14.5 気がつけば潮目

第三話目の「気がつけば潮目」は久能整くんのエピソードではなくて、姉の死の謎を追っている「ガロ」くんのエピソード。

姉の死に関係していると睨んでいる、心理カウンセラーの「鳴子」のマンションの屋根裏に忍び込んで、彼のしっぽをつかもうとしている「ガロ」なのですが、鳴子のしかけた罠にひっかかってあやうく塩素ガスで中毒死しそうになります。その間際に、鳴子のマンションに忍び込んだことや、姉の愛珠を殺した犯人にたどり着いた「漂流郵便局」の手紙も、彼がつくった仕掛けだったのでは、と「鳴子」の手の上で踊らされている自分に気づいて・・という展開です。どうやら、愛珠の死にはまだまだ秘密が隠されていそうです。

Bitly

レビュアーの一言

今巻は前回の青砥刑事が長年取り組んでいた連続小児誘拐事件が解決し、次の大きな謎に向かう前のインターバル、というか休憩モードの巻です。第7巻の久能の恩師の奥さんの殺人事件の解決編で一緒だった相良レンが再度登場したり、ライカさんとガロが偶然の出会いをしたり、と過去のエピソードででた人物が再登場したりするので、「復習」にはよいかもしれません。

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