久能整は風呂光の故郷・富山の不審死の謎に挑む=田村由美「ミステリと言う勿れ」12

天然パーマが爆発したような特徴的なカリフラワーヘアーの持ち主で、人と交わるのが苦手な心理学専攻の大学生・久能整(くのう・ととのう)が、望まないのに向こうのほうから降りかかってくる奇妙な事件を、その丁寧で鋭い観察力と、雑多な博学的知識をもとに謎解きをしていく。Z世代が探偵の新感覚ミステリー・シリーズ『田村由美「ミステリと言う勿れ」』の第12弾

前巻は、旧函館区公会堂を模した建物に呼ばれての、タイムカプセル探しとか、ライカさんと久々のデートで訪れた商店街で見つけた、ひらがなが書かれた福引の謎といった小編だったのですが、今回は再び本編に戻り、久能整くんが登場した最初の事件で知り合った大隣警察署の女性警察官・風呂光が出会った殺人事件の謎解きに巻き込まれていきます。

あらすじと注目ポイント

構成は

episode17 さざなみひとつ
episode17-2 殺人未満
episode17-3 すべては水面下
episode17-4 打ち返す玉響(たまゆら)の
episode17-5 流されて

となっていて、時系列的には第10巻の青砥頸部が巻き込まれた、連続誘拐事件のすぐ後のあたりです。
今回主人公となるのは、弱気さが抜けない「風呂光」巡査部長で、彼女の故郷の富山で、祖母の教え子で幼い頃から世話になっていた「水島妙子」という初老の女性が、冬の花火とイルミネーションイベントの最中に、イベントの中心となる公園にかかった橋の欄干から転落して死亡した、という報せが入ります。

風呂光の祖母は、誰かに殺されたのではないかと告げてきていたため、その女性の葬儀の出席と真相を調べるため、故郷へ帰省するのですが、久能整も8・9巻で解決した財産相続をめぐる殺人事件の被害者になりかけた三つ子の家庭教師のために、岐阜にきていたところを急遽ピックアップして、富山で事件の調査に協力してもらうこととなり、という展開です。

地元で風呂光たちの調査の協力者となるのが、元教師の風呂光の祖母・加納悦子、祖母の教え子の一人で氷見警察署の刑事・流宗光の二人なのですが、偶然富山で再開した10巻に登場した最低最悪の雑誌記者・久我山の知り合いの雑誌記者で、旅雑誌「@旅めし」の担当の望月と蕪木の撮影していたデータから、被害者がイベント会場で誰か知り合いらしい人物と出会い、その後、転落して死亡したことや被害者がその時、帽子に着けていたお気に入りのブローチが無くなっていること、がわかります。

風呂光は調べた結果を、大隣警察署の青砥警部に報告したところ、先月、いくつかの警察署のウエブサイトに、「ant」と名乗る人物から富山で何かがおき、それが連続殺人の一端の可能性があるという内容の書き込みがあったことをしらされます。

休暇の終わった風呂光はここで久能を別れて東京へ帰還することになるのですが、なにか事件のヒントをつかんだらしく、東京で独自に捜査に入るようです。

そして、富山に残された久能は、風呂光の祖母の教え子の流刑事の家に泊めてもらこととになるのですが、そこで彼から「@旅めし」の雑誌のことをあれこれ教えてもらうのですが、これがきっかけで彼も殺人事件のあるヒントをつかんだようで・・という展開です。

本巻は、これから数巻続くであろう連続殺人事件の発端となるもののようで、今回の捜査のメインキャストは風呂光巡査部長のようです。
第1巻の登場以後、遠慮がちなところが抜けきらない彼女が、一皮向けるチャンスになりそうな予感の漂う第12巻です。

ちなみに本巻では、彼女が警察官になろうと思った、幼い頃のエピソードが出てきます。

Bitly

レビュアーの一言

風呂光の故郷・富山で、久能くんは、彼女の祖母が開く大宴会の助っ人として呼ばれるのですが、その席で出席者たちの様々な悩みを、彼の特徴である冷静なコメントとともに解決していっています。

中でも、今回メインとなるのは、祖母の旧友の地元の実業家の孫娘・陽菜から依頼されたもので、東京の大学への進学を認めない実業家の老人への説得に久能が乗り出します。女性は家庭に入り、子育てに専念するのが一番と言う老人を、その主張を逆手にとって、女性ほど教育と教養が必要だと考えを変えさせる久能くんの論法は一見の価値がありますので、原書のほうで確かめてくださいな。

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