清河八郎は刺客に斃れ、近藤勇は京都守護に乗り出すーヒラマツ・ミノル「アサギロ」11・12

幕末の歴史を、薩摩の西郷隆盛や長州の桂小五郎といった倒幕勢力や土佐の坂本龍馬といった維新志士たちの対抗勢力として、必殺の剛剣をふるって、京都の街を血で染め「浅葱色の狼」として恐れられた新選組の近藤勇や土方歳三、沖田総司の姿を描いた「アサギロ」シリーズの第11弾と第12弾。

京へ到着した「浪士組」なのですが、それをのっとるための清河八郎の本当の謀みが動き始めるとともに、それに対して近藤や芹沢たちの「徳川家」に対する志が試されるのが本巻です。

構成と注目ポイント

第11巻 清河の謀略に、近藤勇と芹沢は反逆する

第11巻の構成は

第66話 乗るべき舟
第67話 幕臣の義
第68話 清河を斬れ
第69話 川
第70話 聞いてないよォー
第71話 その道は・・・

となっていて、「将軍警護」と「京都の治安維持」のために江戸から上洛させた「浪士隊」を「攘夷の兵」に再編するための、清河八郎の謀略が動き始めます。

攘夷派公卿の「中山忠光」を壬生の浪士隊屯所に招き、浪士たちに「攘夷の兵となれ]
と扇動します。今まで、帝どころか、京都の公家も見たこともない浪士たちへの「帝のお言葉」ですから、これは効きますよねー。雪崩をうつように清河たちの求めに応じていきます。

ただ、ここでこの多数派の動きに抗う者たちがでてきます。近藤勇たち試衛館勢と芹沢鴨の天狗党派ですね。近藤は

という主張ですし、芹沢は

という主張ですが、いずれにせよ清河八郎の策謀に、二つの穴が開いたことは間違いありませんね。

清河八郎にまんまとしてやられた、鵜殿と佐々木たち幕府側は、攘夷派に転ばなかった浪士組の浪士を集めて京都の守護に当たらせるとともに、清河の暗殺命令を出します。

もちろん、清河たちのほうも防御策を考えていて、それが「影武者」をたてることです。目をつけたのは、飢饉で子供をなくした末に給金目当てに浪士組に参加した武士なのですが、襲撃が予測される日、その影武者が山岡鉄舟に、浪士組の今までの給金10両と影武者の代金10両、あわせて20両を故郷の家族に送ってくれと依頼します。彼の思いは

ということのようですが、その気持を汲み取った山岡は彼を刺客から守ることを約束するのですが・・という展開です。

少しネタバレすると、この影武者を襲った芹沢も近藤も、彼の剣の腕を見て偽物であることを直ちに見破り襲撃を止めるのですが、別の一派に属する「殿内」という浪士が、鴨川に逃げてきた影武者を討ち果たし、幕府側に届け出ます。この功績で、彼は浪士隊を仕切る地位を得るのですが、実はここにある秘密が隠されていて・・・、という展開です。
野望と私怨を晴らすためには仲間の生命も犠牲にする清河の二重三重の謀略は、あくどくてちょっと「うーむ」となるところなのですが、これに協力する殿内も「ゲス」な人物であることは間違いりません。近藤勇の「粛清」は少しスッキリするところですね。

Bitly

第12巻 芹沢と近藤の「浪士組」、正式に始動する

第12巻の構成は

第72話 怨念
第73話 死神
第74話 人斬りの選択
第75話 三人と二人
第76話 十、太刀を振るうちに
第77話 隊士募集

となっていて、清河八郎がニセ首を使って幕府側を欺き、江戸へ逃れたことを知り、彼を始末するため、佐々木只三郎が自ら江戸へ向かいます。

浪士組を乗っ取られそうになった上に、派遣した刺客に彼のスパイが混じっていたのですから、ご公儀の権威丸つぶれで、幕府側も必死です。

しかし、ここでも策士・清河八郎に裏をかかれ、佐々木とともに清河を襲う刺客の中に彼の内通者が忍び込んでいて、一転して、佐々木只三郎は返り討ちの危機に遭遇します。

自らの命を捨てて清河に迫ろうとする佐々木なのですが、清河の手勢に取り囲まれていて「もはやここまでか」と思われた時、集団の一番うしろから清河の集団に斬りかかる者の姿があります。それは、清河をずっと付け狙いながら、沖田たちに阻まれて失敗していた人斬りの「一」こと「斎藤一」です。今まで、幸運と謀略で、命の危機を逃れてきた清河も今回は逃げることができませんでしたねー。

後半部分では、京へ居残った近藤、芹沢たちが描かれます。会津藩のお預かりとなって彼らは、京都守護職である会津藩主・松平容保へのお目見えも叶い、正式に京の治安維持に取り組むこととなります。もっとも、松平容保に忠義の心を抱く近藤に対し、

「連中のわしらを見る目・・・あれは犬っころを見る目だ」と芹沢の見方は批判的です。

一応協力して隊の運営に当たることになった近藤たちの江戸派と芹沢たちの水戸派なのですが、政治的な動きに長けた「水戸派」たちの策略で、浪士組の筆頭局長は芹沢鴨、局長に水戸派の新見と試衛館勢の近藤の二人が就くという、水戸派優勢の体制が敷かれることとなります。

そして、本格的に京の見回りを行うため、隊員の拡大を図ることになるのですが、それは長州藩の高杉晋作たちがつけ込んでくる所でもあって・・・という展開です。

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【レビュアーから一言】

第11巻で「殿内」は、近藤勇によって粛清されるのですが、彼が清河の間者であることを密告した「家里」も、近藤によって「士道不覚悟」という名目で粛清されてしまいます。
近藤勇たちの理屈によると

ということのようなのですが、このあたりは現代人の感覚ではちょっと「?」のつくところかもしれません。

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