総解説>キングダム11~13「馬陽防衛戦」その1=王騎の名采配で、秦軍は趙軍を圧倒=

中国の春秋戦国時代の末期、乱立していた諸国も秦、趙、魏、韓、斉、楚、燕の七カ国体制が長く続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズの第11弾から第13弾までを総解説します。

前巻までで、秦王・政の命を狙う暗殺集団を退け、一応、内乱の危機を脱した秦国なのですが、韓への出兵の隙をついて、趙の軍勢が侵攻を図ってきます。趙軍を秦国領土から追い払うため、一線を退いていた王騎が復帰するとともに、百人将となった「信」が彼のもとで直属の遊撃隊として趙国軍と戦う姿が描かれます。

あらすじと注目ポイント>王騎の名采配で、秦軍は趙軍を圧倒

第11巻 趙が秦領に侵入・王騎、総大将になる

構成は

第108話 三大天
第109話 趙の蹂躙
第110話 将の力量
第111話 任命
第112話 戦友終結
第113話 馬陽
第114話 王騎出陣
第115話 龐煖
第116話 武の結晶
第117話 理由
第118話 両軍揃う

となっていて、韓へ向けて出陣している秦軍の隙きをついて、趙軍が秦の馬央へ侵攻してきます。

当時、趙軍の騎馬隊をはじめとした兵の強さは近隣諸国でも警戒していたのですが、それを率いる将軍が「三大天」亡き後、それを継ぐ人物がでてこなかったので、油断をしていたのですが、「龐煖」という人物が出、趙軍を率いてきたというわけです。趙の国民は「坑殺40万」などで秦に対し恨みを抱えているため、この侵攻戦も単なる領土争いにとどまらず、住民を根絶やしにする苛烈なものになります。

この危機に、秦では急遽10万人の民間兵を集めて応戦を図るのですが、精兵ぞろいの趙軍に対し劣勢は否定できません。この劣勢を補うには、優れた指揮官が必要になるのですが、咸陽に残っていたのは、「攻め」に長けた蒙武のみで、今回のような守戦には不向きといわざるをえません。そこで、引退していた「王騎」に総大将が任されることになります。

この民間兵を中心とする秦軍に「信」も参加しているのですが、前の蛇甘平原攻略戦で功績をあげたため、百人将として部隊を指揮する立場になっています。この部隊に「羌瘣」も副将として加わります。

そして、10万の兵を率いる王騎軍が、馬陽城を囲む龐煖率いる趙軍に攻めかかるのですが、経歴や戦績の不明な「龐煖」という趙の武将は、かつて秦の六大将軍の一人「摎」を斃し、王騎とも激しく戦った武将であることがわかってくて・・という展開です。

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第12巻 信、趙の将軍「馮忌」を撃破

第12巻の構成は

第119話 先鋒隊動く
第120話 任務
第121話 潜行
第122話 特攻
第123話 左軍混乱
第124話 虚を突く
第125話 距離
第126話 精兵部隊
第127話 上手
第128話 百等分
第129話 飛矢

となっていて、まず、蒙武率いる秦の中央軍四万と李白将軍率いる趙中央軍ニ万との激突で戦が始まります。最初はその突破力で優勢だった蒙武軍だったのですが、趙の重騎兵や歩兵斜陣と弓による射撃でだんだんと勢いを削がれ膠着状態になってきます。

ここで王騎将軍のうった手は、中央軍への援護ではなく、地形が険しく、中央軍や右軍とは隔離されている左軍の突撃です。王騎の狙いは、乱戦に持ち込んで、相手の有能な武将を一人づつ片付けていくことで、今回の標的は、趙右軍を率いている、戦局分析に優れた「馮忌」将軍。

秦左軍と趙右軍が激突している最中に、側面から接近し、「馮忌」の首をとってくる役目が「信」の率いる百人隊に与えられます。さらに王騎から直々に「飛信隊」と命名される栄誉をうけます。ただまあ、失敗すれば趙右軍に呑み込まれて殲滅されることは明らかなので、捨て身の部隊であることは間違いありません。

待ち伏せしている伏兵を羌瘣の剣で始末してもらいながら、密かに、趙右軍の側面に接近した「飛信隊」は一挙に、馮忌将軍のいる趙左軍本陣へと突入します。このあたりは、秦左軍を無理やりぶちあてて、守備の兵を前へおびき寄せ、趙右軍本陣の守りを手薄にした王騎将軍の作戦勝ちですね。
そして、突進してくる飛信隊を後退して避けるという巧妙な手も、王騎がうってくる妙手によってつぶされます。最後は、実戦の中で産まれてくる僅かな「誤差」に手をこじいれて広げ、チャンスにしていく「信」の攻めの勝利ですね。

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第13巻 蒙武軍の猛撃は、趙本軍を圧倒する

第13巻の構成は

第130話 名声
第131話 二日目
第132話 力
第133話 戦局打破
第134話 作戦勝ち
第135話 退転
第136話 追走
第137話 現る
第138話 夜襲
第139話 天災
第140話 二対一

となっていて、前巻の最後で指揮官を失った趙右軍はそのまま総崩れとなり四散。趙の中央軍は蒙武軍に押され気味ではあるのですが、趙左軍は渉孟と万極の進撃で秦右軍を押し込み、一進一退が続いています。

本来であればもう少しもみ合うところなのですが、趙本軍からは後退の命令が下ります。軍師の趙荘は慎重に攻める作戦かな、とも思えるのですが、実はこのあたりから、この戦争の後半部分で登場してくる、本当の軍師・李牧の作戦が注入されているのかもしれません。

そして戦闘の二日目。趙の将軍・李白は重歩兵による斜陣と左翼に弓兵を配し昨日と同じ布陣で、蒙武軍を待ち受けます。これに対し蒙武軍も昨日と同じ錐行突撃を仕掛けます。

両方とも昨日と同じ戦法なので、再び蒙武軍が跳ね返されるのかと思いきや、今回は趙の斜陣を切り崩していきます。これを見た李白は陣を曲げて蒙武軍に対し包囲陣をしかけてきます。囲い込んで秦軍を殲滅するつもりなのですが、蒙武軍はかまわず趙軍へ襲いかかり、内側から趙軍を蚕食していきます。兵法を無視した、力で打ち破るやり方なのですが、策を弄する李白軍には意外と効果が大きいようですね。

さらに戦闘の三日目。同じように個々の武勇で突進するも蒙武軍に趙軍は蹴散らされる結果となります。劣勢が続いた趙の軍師・趙荘は、四日目は、全軍で蒙武軍を包囲し殲滅する作戦に変更するのですが、これを見抜いた王騎は、精鋭の5つの部隊を全部、蒙武に預ける作戦をとります。

そして、四日目の当日、蒙武軍を包囲する予定の趙軍は、全軍総攻撃で本陣めがけて押し寄せる秦軍の攻撃に押される一方なのですが、ここで、趙の軍師・趙荘は、あっさりと陣を後方の山中に下げていきます。
秦軍に抵抗する様子のない趙軍の退却に当然、秦軍は後を追うのですが、ここには趙による壮大な「罠」が仕掛けられていることが、「馬陽攻防線」の後半部分で明らかになります。

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レビュアーの一言>王騎将軍の正体は?

キングダムの1~16巻にかけて、大将軍を目指す「信」のロールモデルとして
大きな存在感を示す王騎将軍なのですが、司馬遷の史記の「秦始皇本紀」には登場すのですが、「秦本紀」には名前がなく、実在の人物かどうか議論のあるところです。

「坑殺40万人」などで諸国から怖れられていた「白起将軍」と同時期の人物で、魏の上党郡を併合したり、魏を攻めて黄河の6万人の兵士を沈めたり、敗れたものの信陵君率いる五カ国連合軍とわたりあった、秦の猛将・王齕と同一人物ではないか、という説もあります。ただ年代的には、王齕よりも若い世代なので、個人的には「王齕の甥」とする「達人伝」の解釈を尊重したいところです。戦神・昭王の時代に、白起と並ぶ武将であった「王齕」の衣鉢を継いだ後継者といった感じで考えておくのはどうでしょうか。

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