「アルキメデスの大戦」26〜27=新型・大和は部材不良により廃艦。アメリカ開戦は避けられない?

世界大戦へと進んでいく日本の運命を変えるため、その象徴となる「戦艦大和建造」の運命を変えようと、海軍に入り、内部から太平洋戦争をとめようとする天才数学者の姿を描いたシリーズ『三田紀房「アルキメデスの大戦」』シリーズの第26弾から第27弾。

前巻までで、アメリカのルーズベルト大統領に直談判し、アメリカとの和平交渉を引き出した上に、日本での御前会議でも陸海軍の対立や海軍内の出世競争を利用して、新型・大和のアメリカ譲渡と引き換えに和平の可能性を見出した「櫂直」だったのですが、和平の切り札である新型・大和に危機が訪れます。

あらすじと注目ポイント

第26巻 新型・大和に鋼材の欠陥が判明。櫂はどうする。

第26巻の構成は

第249話 物言い
第250話 ぞれぞれの信念
第251話 「大和」炎上
第252話 材質不良
第253話 裏金工作
第254話 廃艦の危機
第255話 天運
第256話 密告
第257話 自白
第258話 混乱

となっていて、冒頭のところでは、日本軍側を指揮した黒沼先任参謀と前巻行った模擬ミッドウェー海戦の、将棋で言う感想戦を行っています。

ここのところで明確になるのが、他の軍人たちの「帝国海軍にはその名にふさわしい戦い方」に拘る姿勢と、櫂の戦争を「殺し合い」と割り切って考える姿勢です。一見、前者のほうが非戦的に見えるのですが、アメリカとの国力差を正確に認識して現実的な判断をすることができたのはどちらかは、歴史が証明しています。ただ、現実的で理にかなっているかかといって、多数の賛同を得られるかどうかは別問題なのが難しいところですね。

そして、連合艦隊の船上にある櫂に対し、新型・大和を建造している尾崎造船の建造場へと場面が展開。艦尾倉庫に保管されていた可燃性塗料が発火し、火災が発生します。幸いなことに火事自体は戦艦全体に及ぶことなく消し止められたのですが、自火事後の現場検証で、艦隊の鋼板に「クラック(亀裂)」が発生していることが判明します。
本来、特殊鋼を使っていて火災など事故には強い構造のはずの戦艦にこういう亀裂が出ることは想定できないのですが、ここから尾崎造船内の材質不正が明らかになってきます。

海軍から支給される特殊鋼を横流しして、普通鋼に差し替えて差額を抜き取るという単純なやり方なのですが、戦艦の材料は膨大なため、そこで着服した金額も相当なものになるようです。この不正の主犯格は尾崎造船の常務と主力銀行の副頭取なのですが、この副頭取の妻が尾崎造船の社長の娘で、櫂大佐が家庭教師をしていた「鏡子」ですね。
大事なところで、櫂大佐の希望を壊していくのは、どうも、この鏡子さんの関係者ですね。櫂はこの人とは関わらないほうがいいような気がしてきます。

そして、和平交渉締結のため、アメリカに譲渡する約束となっている新型・大和の装甲上の欠陥が見つかれば、悪くすれば廃艦も待っているのですが、ここで櫂の出した判断は・・という展開です。

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第27巻 新型・大和、廃艦・裏バージョンの平澤大和、表舞台へ

第27巻の構成は

第259話 「K」
第260話 緊急会議
第261話 「大和」廃艦
第262話 特殊鋼の行方
第263話 真の「大和」
第264話 1年後
第265話 ハワイの価値
第266話 輸送船
第267話 年明け
第268話 武者震い

となっていて、前半部分では、新型・大和に使われるはずであった「特殊鋼」の行方が「呉」であることが判明します。

もともと軍艦の材料となる特殊鋼の需要がそんなにあるはずもなく、軍事物資として国外への輸出が許可されるはずもなく、国内利用しかないのですが、ここで横流しされた先は、櫂の宿敵である平澤中将が極秘裏の建造している「裏・大和」です。
ここに海軍大臣の椅子を狙っている嶋田中将が絡み、櫂の建造している「大和」を廃艦とし、平澤の建造している「裏・大和」を表舞台へと引っ張り上げようと動き出します。

海軍としては、これによる被害は、大和の火災と材料不正の責任を尾崎造船に被らせることに留めることができるので、最小限に済ませることが可能となります。
ただ、アメリカの怒りをかうことは間違いなく、和平交渉どころか開戦必至というところですが、当時の軍首脳陣としては願ったりかなったり、というところでしょうか。

ちなみに、櫂は特殊鋼の横流しに平澤中将が絡んでいるような疑念をもっているようなのですが、前巻の「新型・大和」の火災の報せを聞いたときの反応では、横流しには関与していないように思えます。

そして、巻の後半部分では、新型・大和の廃艦でアメリカとの開戦が避けられないと考えた櫂が、戦争を早期に終結させるための方策を考案し、山本五十六連合艦隊司令長官へ進言しています。

それは、真珠湾奇襲に始まる作戦なのですが、現実とは違ってアメリカがハワイ諸島においている戦略的な価値と日本側の国力を考えた合理的なものなのですが、合理的であるからといって、勢力争いの厳しい軍部内で賛同が得られるかどうかは未知数で・・という展開です。

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レビュアーの一言

第27巻の中盤部分では、アメリカとの戦争を早期終結させる作戦を山本五十六ほか連合艦隊の中枢に説明している際、アメリカにとってのハワイの地政学的な重要度合いを櫂がっ説明しているのですが、実は、1898年(明治31年)のアメリカによるハワイ併合に際しては、当時の大隈重信・板垣退助が主軸となった隈板内閣からアメリカに対し、宣戦布告かと思えるような激烈な抗議がされています。地政学的には、1つの海洋に複数の海洋覇権国家が存在することは難しいと言われているのですが、この当時から戦争に至る火種は存在していたのかもしれないですね。

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