悪辣な妨害を跳ね除け、戦艦「大和」建造費を算出せよ ー 「アルキメデスの大戦 2」

太平洋戦争前の時代を舞台にして、若き天才数学者が、「戦艦大和」の建造中止を企むなど、その数学知識を使って戦争を食い止めようとする異色の戦争マンガの第2巻。菅田将暉さんが主演を務め2019年7月に実写化された「アルキメデスの大戦」の原作ですね。

前巻で、山本五十六たちによって、戦艦「大和」の設計をする平山中将の建造費偽装を暴くための尖兵として海軍に入れられた若き天才数学者」・櫂直なのだが、今巻では、いよいよ彼の才能が爆発的に動き始める。

もともと、その道の専門家でも数週間で軍艦の正しい建造費を割り出すというのは、ほとんど不可能に近いのだが、これに加えて、設計図は軍の最高機密ということで見ることもできず、軍艦の建造費の発注単価などのデータは海軍経理局の平山派の手によっておさえられている、というこれ以上のアゲインストはない、という状態である。

さて、この苦境を「櫂直」はどう打開していくのか、というのが本巻の読みどころですね。

【構成と注目ポイント】

構成は

第9話 櫂の解法
第10話 尾崎家のお嬢様
第11話 怪文書
第12話 櫂の過去
第13話 カラクリ
第14話 鶴辺社長
第15話 平山の野望
第16話 タイムリミット
第17話 新型戦艦計画決定会議
第18話 建造費の方程式

となっていて、「櫂直」が長門での計測結果を使って、平山中将案の計画図を導き出すのが

といった方法なのだが、これは誰でもできる手法ではありませんな。

ただ、櫂に対しての平山派の妨害はどんどんと強くなっていきます。まずは櫂が軍需産業の財閥。尾崎家の令嬢とのトラブルをあぶり出して、

中傷するビラをまいたり、

とけっこう陰湿な手口を仕掛けてきますね。
この妨害の中心となるのが、艦隊決戦が日本軍の伝統と主張する嶋田少将の腹心の高任中尉なのだが、これは

といった風に、とんでもない差別主義者で、悪役間違いないのだが、こういうのが後で、このお嬢さんを騙して結婚なんかしたりするんだよね。

さて、本筋のほうは、櫂少佐は、ようやく軍艦の建造費の単価のデータを握る人に出会うことができ、平山案の「大和」の本当の建造費の計算にとりかかります。この人物が、

という笑福亭鶴瓶師匠そっくりのキャラで、架空の人物であることは間違いないのだが、第1次世界大戦のヨーロッパ戦線で現代戦を実地に体験した人物、という設定になってますね。さらに、このデータを使っての軍艦の建造費の算出方法が、使用する「鉄」の量で算出していくという、驚きの方法でありますね。

そして、舞台は、新艦建造計画の検討会議へと移ります。建造費のデータを手に入れたのだが、計算が終了せず、会議の席上でも計算を続ける「櫂」なのだが・・・、という感じで展開するのですが、ここから先は原書のほうで。

【レビュアーから一言】

「大艦」か「空母」か、というのは、当時の海戦の戦術を二分するもので、以後の推移をみれば、空母主導でいくべきであったというのは後知恵というもの。当時はいずれが優位な戦法なのかは議論が別れたところであったのは間違いない。
ただ注目すべきは、大艦主義を象徴する戦艦「大和」を設計した平山中将の動機は

といった、技術者の自己顕示欲であった、というところで、こういう、本筋とは関係ない個人の思いとか意地とかが、案外に国家や企業の行く末を左右するってなことなのかもしれんですね。

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