アイルランドの浮浪児・アメリアはアメリカのゴールドラッシュを目指す=北野詠一「片喰と黄金」1

イギリスの地主たちに土地の大半を所有され、人々が貧しい暮らしを強いられたいた19世紀後半のアイルランドでは、じゃがいもに大規模な伝染病が発生したことやその後の食糧政策の執政によって大飢饉が発生し、人口の20%から25%が餓死し、10%から20%がアメリカやカナダなどのアイルランド島以外へ移住していくという大惨事がおきています。

この時代に、小さな自作農の家で祖父の跡を継いで暮らしていた14歳のアメリアが、土地を失った末、使用人のコナーとともにアメリカにわたり、当時、ゴールドラッシュだったカリフォルニアで金鉱をあてて大富豪となることを目指す物語『北野詠一「片喰と黄金」(ヤングマガジンKC)』の第1弾。

あらすじと注目ポイント

第1巻の構成は

第1話 アイルランド
第2話 大西洋
第3話 ニューヨーク①
第4話 ニューヨーク②

となっていて冒頭では、荒野に行き倒れている男性から金目をものを漁っている、アメリアとコナーの姿から始まります。

アメリアは祖父の跡を継いで小さな農場を経営していたのですが、アイルランド中に蔓延したじゃがいもの伝染病の影響を受け経営破綻。使用人の息子だったコナーと一緒に浮浪児となりながら、当時、ゴールドラッシュがおきていたアメリカのカリフォルニアに渡航するため、移民船のですコーブ港を目指している、という境遇です。

その間、食料が手に入るあてもなく、道中、行き倒れている死体から金目のものを奪いながら旅をしている、という設定です。

で、行き倒れていたと思って金目のものを探っていた男性がまだ生きていたことから、彼の住居に案内され、そこでぼろぼろの寝床や、肉と野菜と香辛料抜きのじゃがいもシチューをごちそうになったり、と歓待をうけるのですが、彼はアメリカへの渡航のための費用を貯めているうちに、愛娘に死なれてしまい、アメリアたちにも無謀な移民はやめろと説得するつもりなのですが・・という流れです。ここで、アメリアがアメリカを目指している「闇」の事情が垣間見えるのですがそこは原書のほうで。

しかし、今までの栄養失調状態のせいか、少し栄養のあるものを食べると鼻血を出してしまう体質になりながらも明るく笑うアメリアを見て、彼女を応援するポジションへと変わっていきます。

それは、アメリアたちが移民船の前で金が不足して大騒ぎしているときに一番の助けになって・・という展開です。

中盤部分は、三段ベットでカビと汚れにみちた一番下の船倉の船室でアメリカを根ざす船旅の様子が描かれます。1ヶ月あまりの船旅で半分が船の中で死んでしまう、通称「棺桶船」と呼ばれるものなのですが、ここでアメリア&コナーは、先に移民して安定した生活を構築している家族からの招待状をもつ「ダラ・マリー」という男とベッドが一緒になります。彼は日中から強い酒をあおり酔っ払っているのですが、実はある秘密を抱えているのですが、それは・・というところは原書の方でご確認を。

そして、地獄のような移民船で命を落とさずに無事、アメリカのニューヨークに到着した二人は、港に集まっている宿屋を手配するぼったくりの客引きの中から、比較的良心的そうな少年に宿を斡旋されます。
ただ。ここも移民船ほどではないですが、三段のハンモックという相当劣悪な環境なのですが、暖房があって凍死することがないというのが取り柄でしょうか。

さらに、ここでアメリアたちが遭遇したのが、激しいアイルランド移民への反感です。おおぜいでやってきて、安い賃金でニューヨーカーから仕事を奪うとして排斥運動をする人も多かったのですが、その急先鋒がニューヨークのギャング団「バワリー・ボーイズ」のリーダーに出会うのですが・・という展開です。

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レビュアーの一言

隠された人並み外れた能力をもっているわけでも特別美しかったり醜かったりしているわけでもなく、不思議な運命に導かれているわけでもない主人公・アメリアが、美しくもなく、むしろバイオレンスと直接的な欲望に満ちていた時代のアメリカの西海岸を目指す、アイルランドの浮浪児少女の物語、という最近のマンガには珍しい設定の物語のスタートです。
二人のトラブルに溢れた旅物語が展開されそうですね。

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