ヤノハは我が子を手放し、天の岩戸を出る。事代主には日下の調略の手が=「卑弥呼ー真説・邪馬台国伝」11

古代史最大の謎「邪馬台国」を舞台に、日向の巫女の娘が、権謀術数の限りを尽くして、生き残り、女王として成り上がっていく漫画版・卑弥呼物語『リチャード・ウー・中村真理子「卑弥呼ー真説・邪馬台国」』シリーズの第11弾。

前巻で九州や本州一円に流行している「厲鬼」から、山社連合の国の民を守るため隔離生活に入ることを決意したヤノハは自らの出産準備とあわせて千穂に山中に籠もったのですが、本巻ではいよいよ、赤子のうちに殺さねば、卑弥呼が逆に殺されれしまうとモモソによって予言された子供の出産とそれに続くヤノハを襲った危難が描かれます。

あらすじと注目ポイント

構成は

口伝79 誕生
口伝80 争い
口伝81 最悪の好機
口伝82 絶望
口伝83 一縷の望み
口伝84 闇と光
口伝85 使者
口伝86 偽りのお告げ

となっていて、冒頭ではヤノハがいよいよ出産の時を迎えています。

ヤノハは天の岩戸に閉じ込められる

ヤノハの出産は初産ではあるのですが、そうトラブルもなく、「ヤエト」と名付けられた男子が生まれるのですが、大雨による土砂崩れで、籠もっていた洞窟の入り口が大岩によって塞がれてしまいます。

赤ん坊の「ヤエト」と一緒に洞窟内に閉じ込められてしまったヤノハは、大岩の隙間から、ヤエトを弟・チカラオに託して逃れさせます。

そして、山社の民が、閉じ込められたヤノハの救出作業を始めます。まず「ウズメ」という名前の女の子の巫女による祈祷の舞に続いて、力自慢の多くの者が大岩をどかそうと取り付きます。ここらあたりが、日本神話のアマテラスの「天の岩戸」伝説につながったという解釈でしょう。この救出作業の結果については、原書と日本神話のエピソードで詳細をお確かめください。

ちなみに、この「天の岩戸」の原因となった弟・スサノオが織女たちの織屋に皮を剥いだ馬を投げ込んで織女の一人が死んだというエピソードは、スサノオによる織女への性的暴行による死亡とも解釈されているものもあるので、このシリーズの7巻でのヤノハが弟・ナツハに襲われたエピソードとかぶってきます。

事代主へ吉備津彦の調略の手が伸びる

一方、ヤノハに「厲鬼」の退散方法を伝授した事代主が宗教指導者となっている出雲・金砂国の吉備国を制圧した日下国に圧迫された「鬼国」が迫り始めています。

「鬼国」は本書によると韓から渡来した製鉄技術をもつ「タタラ人」とそれを守護する戦士たちによる集団で、鳥取県の日野郡周辺にはたたら製鉄の歴史もあり、岡山県の総社市や鳥取県の伯耆町周辺には「鬼」伝説が残っているので、ここらあたりに割拠していた「製鉄集団」であろうと推測されます。
ここの王ともいえる「温羅」はすでに日下国によって暗殺され、その地位を簒奪されているようです。

ここで日下国の調略の手は、金砂国王のミクマ王へと伸びてきます。吉備の国を統治する「吉備津彦」の称号を得た日下のサセリ将軍は、事代主のち胃の譲渡と引き換えに「鬼国」との講和の仲立ちを申し出ます。
ここで、日下国の西征の目的が、鬼国のもとタタラの技術と、金砂国の砂鉄であることがわかってきますね。

そして、事代主は出雲へ兵を出している「鬼国」の逆をついて、彼らの都を急襲しようという作戦を考え、鬼国の本拠へ忍び込むのですが、そこで待ち構えていた「吉備津彦」が事代主に出した条件は・・という展開です。

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レビュアーの一言

今巻では、ヤノハが息子・ヤエトをナツハ(チカラオ)に託し、二人が何処ともしれず逃れていったり、日下の国の将軍でもある吉備津彦から、出雲の国の宗教指導者・事代主に提携の申し出がされたり、と次の大きな政変に向けての布石が語られています。

次巻以降では、大和による出雲侵攻の神話をモチーフにしたストーリー展開がされるものと推測するのですが、「ヤエト」がどういう役回りになっていくのかは調査不足でまだわかっておりません。託された卑弥呼の鏡がヒントになるのでしょうか?

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