勇と麗華は上海ギャング団の女ボスと直接対決する=「満州アヘンスクワッド」15【ネタバレあり】

第二次世界大戦前、中国東北部に徒花のように成立した国家「満州国」の植民地支配を狙う日本陸軍の「関東軍」、中国の闇組織「青幇」に対抗して、独立した犯罪組織をつくりあげ、そこから、中国全土から世界へと成り上がろうとする「日下勇」や「麗華」「リン」たち若き犯罪者の活躍を描くクライム・ストーリー『門馬司・鹿子「満州アヘンスクワッド」(ヤングマガジンKC)』シリーズの第15弾。

前巻まででは、ビジネスの飛躍を狙って、大連から上海へと進出し、そこを支配するギャング集団「紅幇」や日本軍と対立する中国政府の「工部警察」を出し抜いて勢力圏を広げた「勇」や「麗華」だったのですが、縄張りを侵食された「紅幇」が本気で牙を剝いてきます。

あらすじと注目ポイント

第15巻の構成は

第百三十三話 絢爛たる対面
第百三十四話 紅幇の歓迎
第百三十五話 育成
第百三十六話 策士たち
第百三十七話 組織のヒビ
第百三十八話 ただの騒めき
第百三十九話 女帝・対峙
第百四十話  証明の銃声
第百三十五話 静かなる企み
第百三十六話 エンカウント

となっていて、ユダヤ人街を襲った紅幇とユダヤ人たちとの戦闘が続く中、大連から味方になったと思われていた貿易商「静(ジン)」に拉致された「勇」は、紅幇のボス・蘭玉の前に連れていかれます。彼女の威圧感に圧倒される中、彼女の二人のボディガードたちに暴行され、死を覚悟する「勇」だったのですが、蘭玉から出されたのは「私のために、真阿片を作れ」という意外な言葉です。

どうやら縄張りを荒らされている中で、蘭玉は「真・阿片」にビジネスとしての価値を見出したようで、自らの闇ビジネスの拡大に利用しようと考えたわけでですね。

もちろん、麗華たち仲間を裏切り申し出を拒否する「勇」だったのですが、蘭玉が引き下がるわけはなく、そこから勇の協力を引き出すために、監禁と拷問が始まり・・という筋立てです。

一方、ユダヤ人街を逃れた麗華とリンは紅幇のアジトの場所をつかみ、女ボス・蘭玉と直接対決のチャンスを得るため、表面上は紅幇と対立しているように見える「工部警察」の力を利用ししようと「紅幇」と偽って、わざと彼らに捕縛されることによって、アジトへと潜入することに成功します。

ここから、上海の闇世界を牛耳る「紅幇」の女ボス・蘭玉とかつて上海を支配していた青幇のボス・杜月笙の娘である「麗華」との対決が始まるのですが、その詳細は原書のほうで。

さらに、勇の身を案じてユダヤ人街にやってきたところを「紅幇」の配下に拉致されてアジトへつれてこられた春鈴は、そこで蘭玉のボディーガードたちによって惨殺されてしまいます。そして、これが勇の暴発を招くこととなり・・という展開です。

レビュアーの一言

「上海」篇で勇たちの敵方として大きな力を持っているのが「紅幇」という組織なのですが、Wikipediaなどによると、もともとは清朝初期に四川省に移り住んだ移民たちと内陸の水運業者が一緒になって勢力を伸ばし、さらに1796年の白蓮教との乱や1851年の太平天国の乱の混乱などによりさらに勢力を揚子江下流域へと拡大していったようです。

日中戦争当時は、蒋介石が重慶政府を樹立にも協力をしていたようですが、上海での勢力図は青幇のほうが優勢だったという情報もあります。

このあたりに歴史の長さが日中露各国の国家的思惑が蠢いていた「満州」地域とは違う複雑さを見せているのでしょうね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました