セシルの憧れの人「アン・ブーリン」、スキャンダルで処刑?=こざき亜衣「セシルの女王」3

イギリスが強国スペインを破り、世界を股にかけた超大国として名乗りをあげはじめたのが「エリザベス1世」の時代。実は、カトリックとプロテスタントが血を血で洗う抗争の時代でもありました。この世界史上最も有名なイギリスの「王」といっていいエリザベス女王から信頼の厚い、忠実な臣下として仕えた「ウィリアム・セシル」が、一介の郷紳(ジェントリー)の身分からイギリス政界を動かす重臣へと成り上がっていく物語「こざき亜衣「セシルの女王」(ビッグコミックス)」の第3弾です。

前巻までで、アン・ブーリンに仕えながらも、ヘンリー8世の怒りをかって宮廷から追い払われた後、ケンブリッジ大学で学生生活をおくるセシルだったのですが、ケンブリッジの学長である「フィッシャー司教」がクロムウェル護国卿によって逮捕されるなど、プロテスタントとカトリックの対立に巻き込まれていきます。さらに、宮廷内でも権力交代の動きが激しくなっていきます。

(前巻のあらすじはこちらから)

https:.//takafam.com.weblog/2022/08/21/cecil-jyoou-02/

あらすじと注目ポイント

「セシルの女王」第3巻の構成は

第15話 ロンドン塔の飛べないカラス
第16話 もゆる命
第17話 黃と赤
第18話 馬上槍試合
第19話 Watching you
第20話 片思い
第21話 兄と妹
第22話 夢駆ける少年
第23話 手紙

となっていて、冒頭は前巻で、ロンドン塔に収監された「フィッシャー司教」の説得をするため、セリルたちがテムズ川から塔の地下にある水路で出入りする「逆賊門」から中へ忍び込むところから始まります。「逆賊門」はこの塔に収監される重罪人の多くが舟によって移送され、中に入ると二度と娑婆に出ることはなかったことからつけられた名前とのこと。ただ、現在では堤防工事によって川とは断絶しているようです。
(このあたり、少し古い記事ですが、4travel.jpさんの「漱石の倫敦塔」に詳しいです。)

そして、塔に忍び込み、牢獄内のフィッシャー司教に、形だけでもいいのでヘンリー8世がイングランド国教会のトップであること認めるよう説得するのですが、司教は頑としていうことをききません。イングランド国教会はカトリックとはヘンリー8世の離婚問題という政治的なことから分離しているので教義的には共通するものが多いのですが、宗教的な地位的優位性を国王に認めるかどうかがキーになるようです。

このフィッシャー司教の裁判にあたって、重要な証言をしたのがロンドン塔内で司教の身の回りの世話をしていおた「リチャード・リッチ」で、彼はトマス・モアの裁判でも処刑に至る重要な役割を果たしていて、ヘンリー8世とジェーン・シーモアの子供であるエドワード6世の治世下で「大法官」になっています。

物語の中盤からは、ヘンリー8世の寵姫として権勢をふるっていたアン・ブーリンの運命に暗雲が漂います。

まず最初は、アン・ブーリンの権勢をさらに増大すると思われた出来事、先妃である「キャサリン・アラゴン」が亡くなったことから始まります。

キャサリン妃が死去したことで、アン・ブーリンとヘンリー8世の結婚にローマ・カトリック教会がいちゃもんをつけてくるネタもなくなり、喜んだヘンリー8世は喜んで、「馬上槍試合」を開催するのですが、この馬上槍試合でヘンリー8世が負傷し、生死の境目を彷徨います。

このときに、アンの兄「ジョージ・ブーリン」が王位を簒奪する野望を持っているような振る舞いをしたところを、アンの侍女でヘンリー8世が手を出しているジェーン・シーモアの兄「エドワード・シーモア」に目撃されてしまいます。ジョージ・ブーリンはこの失策を挽回するため、アンを再度妊娠させるため、宮廷楽師にアンのところへ夜這いをかけさせるなど悪あがきをするのですが、これがシーモア一族につけいれられ、アンの不倫疑惑など、スキャンダルの噂が飛び交います。

これによって、アンをはじめブーリン一族がどうなったか、については原書のほうでどうぞ。

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レビュアーの一言

フィッシャー司教の処刑後、セシルの従者としてリンカシャー時代から仕え、一緒にケンブリッジに入学していた「ラルフ」がオックスフォードに転学します。もともと敬虔なカトリックであった彼は、急速にプリてスタント化するケンブリッジを嫌ってのことのようですが、この時代、オックスフォードがカトリック派であったかどうかは調べきれませんでした。

現在でもトリニティ・カレッジやセント・ジョンズ・カレッジなどのカトリック系のカレッジがあり、17世紀頃から起こった、イングランド国教会のカトリック的な要素を重要視する「アングロ・カトリック」と深い関わりを持ったのはオックスフォードで、この頃からその徴候はあったのかも、と推測しています。

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