行方不明のホームズとウィリアムは生きていた。モリアーティ・チーム「復活」=「憂国のモリアーティ」15・16

類まれな頭脳と、あらゆる分野にわたる知識をもち、世界一有名な名探偵「シャーロック・ホームズ」の最大の敵役で、ロンドンで迷宮入りする事件の過半数は彼の犯行と噂される「モリアーティ教授」を中心に、イギリスの腐敗した貴族を次々と暗殺して、体制変革を狙う「犯罪卿」一味の犯罪と彼らの真の目的を描く、クライム・ストーリー「憂国のモリアーティ」の第15弾~第16弾。

前巻までで、「貴族浄化」の最終局面に入り、貴族の連続暗殺とロンドン各地への放火で、一挙に体制不安をあおり、それによって貴族階級と一般市民との協力関係を醸成しつつも、建設中のタワーブリッジから、ホームズとともに落下したウィリアム・モリアーティ。今回は、悲願達成後、残された者たちの行動が描かれます。

あらすじと注目ポイント

第15巻 ルイスのもとに「MI6」復活。イギリスの新造潜水艦の機密を守れ。

第15巻の構成は

#57 空き家の冒険 第一幕
#58 空き家の冒険 第二幕
#59 空き家の冒険 第三幕
#60 空き家の冒険 第四幕

となっていて、前巻の最後で次兄ウイリアムが行方不明となり、長兄アルバートが幽閉生活に入った後、MI6の組織を受け継いだルイスがリーダーとなって、イギリスの治安と国益を守るために新たな活動を始めています。

ウィリアムが「貴族浄化」計画の遂行に逸っていた頃は、MI6のモリアーティ・チームのメンバーは暗殺行為に動員されていたのですが、現在はMI6の本来の任務である「国外の政治・経済の情報収集と工作活動」に戻っているようです。

今回の任務は、イギリス領オーストラリア植民地総督の次男・ロナルド・アデア卿で、彼が父親の事務所から持ち出したオーストラリア沿岸でイギリス海軍が開発中の新型潜水艦の設計図をロシアに売り払おうとするのを阻止する、というもの。

チームの一員アイリーン・アドラーことジェームズ・ボンドは取引が行われるホテルに忍び込んで、アデアが金庫に隠している設計図を盗み出すことに成功するのですが、彼女の眼の前で、アデアは何者かに狙撃され、頭を撃ち抜かれて死亡します。

現場の状況から、音のしない狙撃銃を持ち、鉛の弾頭をもつダムダム弾を使う凄腕の狙撃手の仕業であることは間違いないのですが、そういう人物といえば、かつてモリアーティ・チームの一員だったモラン大佐以外のはいないのですが・・という筋立てです。

そして、モランの行方を探すルイスたちモリアーティ・チームなのですが、ここに現れたのが老人の古本屋に仮装したシャーロック・ホームズで、という展開です。ここで、彼がどうやって命をとりとめ、現在は何をしているのか、そしてウィリアムの消息はといったことが語られるのですが、これは原書のほうで。

このあと、シャーロックも加わって、今回の「海軍潜水艦事件」の黒幕である駐仏イギリス大使の摘発に動く、モリアーティ・チームの活躍が見られるのですが、前巻までは、脇役的な存在だったマネーペニーが立派な「女性工作員」として活躍しますのでお楽しみに。

Bitly

第16巻 ホームズとウィリアムは生きていた!モリアーティ・チーム復活を見逃すな。

第16巻の構成は

#61 空き家の冒険 第五幕
#62 空き家の冒険 第六幕
#63 空き家の冒険 第七幕
#64 空き家の冒険 第八幕

となっていて、冒頭では、ウィリアムの遺志を継いで、貴族の粛清を続けようとしているモラン大佐の行動を阻止しようとするルイスたちが描かれます。彼をチームに戻すのは、ウィリアムとともに行方不明になっていたシャーロック・ホームズなのですが、その決め手は、彼が宇治リアムから預かってきたあるもので・・という筋立てで、それが何かは原書のほうでお確かめを。

一方、ウィリアムを犠牲にしてしまったことを悔み、自ら幽閉生活に入ったアルバートは、ウィリアムとの出会いと一緒に貴族の浄化に踏み込んでいった過去を振り返り、彼にすべての罪と責任をとらせてしまったという後悔の念に苛まれているのですが、そこに現れたのは・・という展開です。

アルバートの復活の顛末については原書のほうでどうぞ。

Bitly

レビュアーの一言

ホームズとウィリアムはテムズ川に転落して生死をさまよっているところをある人物によって救出され、アメリカに渡るのですが、アメリカでは「ピンカートン探偵社」のエージェントとして働くことになっています。

1855年にアラン・ピンカートンが、弁護士のエドワード・ラッカーとともに創設したのが発端で、要人の身辺警護から軍の請負まで幅広く営業活動をしていて、最盛期にはアメリカ陸軍の招聘を上回る探偵を雇用していた、と言われています。

リンカーン大統領も、この探偵社の探偵を身辺警護に使っていて、リンカーン暗殺の時はピンカートン社ではなく、アメリカ陸軍が警備しているときにおきたようですね。

ただ、その組織力と荒っぽい仕事もこなす職務遂行の確かさから、労働スパイ事業や労働組合のスト破りも請け負っていたという黒歴史ももっています。

さらに犯罪捜査事業のほうも、FBIの発足やアメリカ警察の捜査能力の向上で頭打ちとなり、現在では商売敵であったウィリアム・J・バーンズ探偵社と統合されて、警備事業に専念しています。

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