内戦は終結するも、女性貴族騎兵・ヘルムートを残酷な結果が襲う=「軍靴のバルツァー」9・10

19世紀の帝国主義まっさかりの頃、こちらの世界でいうとヨーロッパ大陸の北東部に位置する軍事国家・ヴァイセンの軍人「ベルント・バルツァー」が隣国「バーゼルランド」へ軍事顧問として派遣され、大陸の強国と弱小国の間で繰り広げられる戦争と謀略に巻き込まれながら、士官学校の生徒とともに国際政治の中心に乗り出していくプチ異世界戦争物語『中島三千恒「軍靴のバルツァー」(バンチコミックス)』シリーズの第9弾から第10弾。

前巻で、バルツァーの去った後、士官学校に籠城して第一王子とエルツライヒの猛攻になんとか耐えていたアウグスト王子と士官学校生徒のもとへ、気球に乗り込んでバルツァーが帰還し、第一王子側との最終決戦が始まります。

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あらすじと注目ポイント

第9巻 バルツァーは気球観測と地雷によって敵軍隊を退ける

第9巻の構成は

第47話 精密砲撃戦
第48話 脅威再び
第49話 突撃行
第50話 戦争のルール
第51話 大陸の中心
第52話 交渉の結末
第53話 破城
第54話 鯨波

となっていて、敵側となったかつての騎兵科の教え子・ユルゲンの助けを借りて、バルツァーたちは気球に乗り、士官学校近くへ接近を始めます。彼は士官学校を包囲する第一王子軍+エルツライム軍の上方から、士官学校へ鏡の反射を使ったモールス信号でディータたち砲兵科の生徒へ指示を出し、これを受けてディータたちが砲撃方向や角度の修正して、大砲の命中精度が格段に上がっていきます。それにエルツライヒ側が気づいたときにはすでに手遅れで、砲撃でエルツライヒの砲兵隊の動きをとめて、バルツァーたちは士官学校内に着陸し、ここから彼が指揮をとっていきます。

士官学校の生徒たちと再会を果たしたバルツァーは、乗ってきた気球を観測塔がわりに使って、敵陣への砲撃を再開します。一番の難敵は丘陵の陰に設置してある巨大臼砲なのですが、これに対しても、大砲は砲台で固定するものという常識から離れた砲撃方法を考案し、臼砲の破壊に成功します。

しかし、第二の危機はすでに迫ってきていて、臼砲への砲撃に学校側の意識が集中している隙をついて、エルツライヒ側の歩兵が、臼砲によって破壊された城壁の割れ目から潜入をはかってきます。

城壁の割れ目へ突撃する彼らを待っていたのは、まずホルベック騎兵の動きをとめた「鉄条網」です。鉄条網にからめとられたところを銃撃されて、動きを一旦止められたエルツライヒ軍は、味方軍の死体を乗り越えてさらに突撃しようとするのですが、そこに城壁の瓦礫の下に仕掛けられた爆薬が爆発し、散弾のように彼らを襲い、攻撃の二波目を退けることに成功します。

一方、士官学校から退去したものの、父親のいる第一王子軍には加わらず、故郷のバーゼルランド北部へ帰郷したヘルムートなのですが、彼女は、父親が第一王子軍への援軍として招集していた軍隊を乗っ取り、アウグスト王子側の援軍として組織し直します。さらに、進軍の途中で、日和見をしている北部の貴族たちを煽って、アウグスト王子側へ引き込んでいく、という策士ぶりを発揮します。女性であることに悩んでいた頃とは様変わりですね。

このヘルムートのアジ活動と呼応して、バルツァーは、従軍記者のアンネリーゼを停戦協定を利用して学校から脱出させ、こちらも第二王子側の広報戦を開始します。まあ、こちらのほうは偶然に各国の記者が軍の交通管制のため、缶詰状態になっている宿を見つけることに成功し、労せずして、効果をあげることとなりますね。

そして、停戦期間の終了と同時に、エルツライヒ側は士官学校への総攻撃をしかけます。密かにしかけた下水道内への爆薬による進入路も確保し、とうとう学校の敷地内へエルツライヒ側の兵士も入りこみ、バルツァーたちは追い詰められていくのですが、そこに、ヘルムート率いる北部貴族の軍隊が到着し、反撃体制がとられていきます。

Bitly

第10巻 内戦はアウグスト王子の勝利に終わるが、ヘルムートには残酷な結果が訪れる

第10巻の構成は

第55話 馬上の友
第56話 追跡者
第57話 永遠の決別
第58話 高度な政治判断
第59話 追う時間
第60話 師の教え
第61話 最後の騎兵

となっていて、前巻の最後で、気球にアウグスト王子と国王を乗せて脱出した後、降伏するつもりだったバルツァーのもとへ、ヘルムート率いる北部貴族軍が到着し、彼女は騎兵を率いてエルツライヒ軍へ突撃を敢行します。学校へ押し寄せるエルツライヒ軍を蹴散らした後、気球に乗っているアウグスト王子と国王を保護しようとするのですが、そこに立ちはだかったのが、幼馴染で騎兵科の同級生であったユルゲンで、という展開です。

ここから、ヘルムートをアウグスト王子側から引き離しそうとするユルゲンと、バルツァーの師事して軍制改革の実現を目指すヘルムートの間でバトルが展開されます。ユルゲンは幼馴染の女性としてヘルムートに好意を寄せていて、ヘルムートもそれを薄々知りながら、彼を拒否せざるをえない、というところが切ないですね。

そして、エルツライヒ軍の追及を逃れたアウグスト王子は、北部の貴族軍と合流し、彼らを新政府で厚遇することを約束して味方につけると、第一王子軍に対して正面攻撃をしかけます。国王を擁していることから、こちらが正規軍であることを見せつける動きですね。

これに対し、あくまでも抗戦を声高に叫ぶ第一王子なのですが、エルツライヒ軍の指揮官の下した判断は、国際情勢に睨んだ冷静かつ非情な選択肢である、この戦線からの離脱と国外亡命です。

ここから今まで官軍感のあったユルゲンやヘルムートの父親たちや南部の貴族軍に動揺が走り、一一気に崩れ、敗軍の様相を示していきます。彼らは近くの王室由来の都市へと向かい、そこで、まだ政権奪取の望みを捨てないフランツ第一王子は、ここの教会で戴冠式を行い、国土を二分しようと宣言します。

この段階で、急遽、バーゼルランドに進入し、バーゼルランドの治安回復を理由にした軍事介入を目論むヴァイセン軍の動きが迫る中、アウグスト王子たちの正規軍の先鋭部隊を率いるヘルムートは、第一王子に付き従、あくまで抵抗する父親たちへ非情の処置をとることを迫られ・・という筋だ出です。さらに、並行して、ゲリラ活動を続けていたユルゲンたち元士官学校の騎兵科生徒たちの騎兵隊も、ヴァイセン軍の餌食となり、ヘルムートには残酷な結果となりますね。

Bitly

レビュアーの一言

第9巻の中ほどで、士官学校へ侵攻しようとするエルツライヒ軍を爆殺しているのが、バルツァーの仕掛けた地雷兵器で、近代的な地雷が登場したのは、南北戦争の際に爆弾の振動に反応する信管をとりつけた砲弾が使われたのが最初と言われています。

大々的に使われ始めたのは、第1次世界大戦時に対戦車地雷が開発されてからで、その後、保存性に優れ、破壊力のあるTNT火薬が発明されたこともあって、第2次世界大戦では3億個の地雷が戦争に投入されたと推測されています。

地雷はその機能が長く維持され、対人地雷は体重の軽い子どもが踏んでも爆発するため、戦闘員だけでなく、非戦闘員も無差別に死傷させる武器で、第9巻でエルツライヒの連隊長が言うように「圧倒的に卑劣な火薬兵器」といえるでしょう。

現在「オタワ条約」によって地雷の禁止運動が進められているのですが、条約の非批准国で生産を続けている国もあり、現時点で世界には1億個の地雷が埋められていて、安全に地雷を完全撤去するには1000年以上かかるのでは、と言われています。

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