亡命政権がきっかけでバーゼルランドとヴァイセンの戦争が開幕し戦線は広がる=「軍靴のバルツァー」13~15

19世紀の帝国主義まっさかりの頃、こちらの世界でいうとヨーロッパ大陸の北東部に位置する軍事国家・ヴァイセンの軍人「ベルント・バルツァー」が隣国「バーゼルランド」へ軍事顧問として派遣され、大陸の強国と弱小国の間で繰り広げられる戦争と謀略に巻き込まれながら、士官学校の生徒とともに国際政治の中心に乗り出していくプチ異世界戦争物語『中島三千恒「軍靴のバルツァー」(バンチコミックス)』シリーズの第13弾から第15弾。

前巻でアウグスト王子のバーゼルランドでの王制廃止が引き金となって、軍国ヴァイセンの政情が一挙に不安定化。軍国の支配と隣国への侵攻を狙うホルスト参謀総長によるクーデターによって、追われる身となったバルツァーとフェルディナンド皇太子が、隣国バーゼルランドで亡命政府を創り、祖国との闘いが始まります。

あらすじと注目ポイント

第13巻 バルツァーは亡命政権を樹立するが、ヴァイセン軍の攻撃から守れるか?

第13巻の構成は

第76話 国境越え
第77話 生存本能
第78話 混迷の扉
第79話 意外な援軍
第80話 忙殺
第81話 模倣
第82話 変転

となっていて、ヴァイセン軍の追及から逃れるために、バーゼルランドへ出国して、そこで亡命政府をつくることを計画したバルツァーたちだったのですが、彼らの前にヴァイセン軍の厳重な国境封鎖が立ちはだかります。突破手段として、国境付近に出没する密輸商人に頼むのですが、当局に恩を売る材料として逆に突き出されそうになってしまいます。ここでモノをいったのが、バルツァーのお祖母様の強大なコネクションですね。国内の有力者や闇の世界の大物にコネがきく隠れた有力者ですね。

一方、バーゼルランドの士官学校の方では、騎兵科の生徒のほとんどが戦死するか退校した中でヘルムートだけはまだ学校に残っています。しかし、ほとんど授業の成立しない中で、学校を去る日も近いと考えていたのですが、砲兵科の生徒たちへの騎馬訓練という新たな仕事に取り組むこととなります。この前の戦闘でエルツライヒ軍が攻撃に用いていた騎馬砲兵の導入ですね。

こうして士官学校の体制が新たになったところで、バルツァーたちがやってきて、バーゼルランドの王宮の一角を借りて、ヴァイセンの亡命政権が発足します。この政権の内閣の顔ぶれというのが、遊び人のフェルディナンド皇太子の人脈をフルに活用したもので、ヴァイセンの貴族だけでなく、有力資本家からベストセラー作家までと雑多な人々が集まっています。この雑多さが後々、有利に作用するのですが詳しくは原書でお確かめを。

この亡命政権樹立の動きには、エルツライヒの女帝をはじめ周辺諸国も反応をはじめるのですが、一番強硬な対応に出たのが、ヴァイセンの本国政府で、王党派貴族や議員の逮捕や処刑、参謀総長を襲撃した「ユーリ」の相棒「ティム」を国王暗殺の犯人に仕立て上げ、国内の体制を引き締めた後、バーゼルランドへ兵を進めてきます。

ヴァイセン亡命政府側は、エルツライヒ側からの王女ヘレナのフェルディナンド皇太子との婚姻と言う条件を受け入れ、エルツライヒからの援軍を引き出します。(この王女ヘレナは、マリア女帝の当初構想ではアウグストに嫁入りさせるつもりだった娘さんですね。各国の権力バランスで嫁入り先を平気で変える王室外交というのは怖いもんですねー)

このエルツライヒからの援軍が到着するまでの3週間、なんとかヴァイセン軍を食い止めないといけないわけですが、ヴァイセンのバーゼルランド派遣軍の指揮をとるのは、バルツァーの恩師にあたる人物で、バルツァーの思考形態や作戦の特徴をよく知っている人物です。さらに、バルツァーの指揮に従わない古参将軍もごろごろいて、防戦体制の構築も容易ではありません。

この事態に、バルツァーは、ホルスト参謀総長と袂を分かったリープクネヒトを亡命政府軍顧問として雇いいれ、ヴァイセンの派遣軍の妨害工作を担当させます。もともと陰謀と諜報戦に長けた男が本気でヴァイセン派遣軍にとった戦法は、かなりエグイのですが、詳細は原書で。

このほか、国境近くの防衛線から動かない住民の強制避難を、ヘルムートが悪役となって進めていきます。第一王子軍の粛清の時と同様、「黒ヘルムート」の魅力再び、といったところなのですが、侵攻してくるヴァイセン軍に接収されないよう兵糧の焼却と駐屯拠点の破壊に、彼女の容赦ない手腕が発揮されていきます。

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第14巻 リープクネヒトの妨害工作は光るが、ヴァイセン軍はバーゼルランドへ侵攻開始

第14巻の構成は

第83話 奸計の王
第84話 経済の理
第85話 敬意
第86話 印象操作
第87話 戦場の常
第88話 新世代

となっていて、ヴァイセン派遣軍の妨害工作を引き受けたリープクネヒトは、手始めに敵軍の通信設備を手に入れ、物資輸送のフェイク情報を入れて兵站部門を混乱させます。そしてそれを適度なところで切り上げると、今度はヘルマンたち士官学校歩兵科の生徒数人とエルツライヒの先発隊を率いて国境付近にある交通の要衝都市「ヴォセドルフ」に潜入します。ここで仕掛けたのが、バーゼルランド国境近くの川にかかる鉄橋と機関車の爆破です。ヴァイセン軍は敵に回すと一番やっかいな人物を亡命政府側に走らせたことを後悔することになるでしょうね。

リープクネヒトやヘルムートのヴァイセン軍侵攻の妨害作戦は着々と進められていくのですが、ここでネックとなってきたのが、頑として撤退しようとしない国境の要塞守備隊です。士官学校の校長が守備隊長と親しいことから説得工作に乗り出すのですが失敗。

ヴァイセン派遣軍側は、立て籠もる守備隊が少年兵を楯にしているなどのプロパガンダをはって周辺国の世論を味方につけたうえで、要塞への総攻撃を敢行します。そして、守備隊をとことん追い詰めたうえで、名誉の撤退を許すという「騎士道精神」をアピールして、「正義の軍隊」感を出して、亡命政府とバーゼルランド側を国際的に孤立させることに成功します。

そして、本格的にバーゼルランドに侵攻するため、独立専行師団「クアドラット」が投入され・・ということで、ヴァイセン内乱は新たな局面へと突入していきます。

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第15巻 士官学校生徒たちは、独自判断でヴァイセン軍の攻撃を撃破する

第15巻の構成は

第89話 奇襲作戦
第90話 政治的宣伝戦
第91話 砲兵の役割
第92話 パウルの機転
第93話 浸透攻撃
特別描き下ろし 最近のバルツァー

となっていて、前巻の最後で参陣してきたヴァイセン軍最強の師団「クアドラット」に対し、バルツァーの迎撃が始まります。

一番目の標的はシュトライヒ将軍率いる胸甲騎兵師団です。まず前衛部隊として、ヘルムート率いる騎兵隊が正面から突撃をしかけます。1/3の味方の軽騎兵を犠牲にしながら敵陣を切り裂いた後、右に旋回し、上空にチカチカ光るものに向かった馬を走らせ、シュトライヒたちヴァイセン胸甲騎兵団を誘い出していきます。あと少しで追いつかれるというところで、シュトライヒ軍を待っていたのは、気球にのって待ち構えるのがヘルマンたち歩兵部隊です。彼らは上空から爆弾を投下して、胸甲騎兵師団を撃破し、シュトライヒを捕虜にすることに成功します。

この後、敵将シュトライヒと亡命政府のフェルディナンド皇太子との涙の対面がセットされていて、このシーンの広報で、周辺の強国「ラトフ」と「モレイユ」のの支持と参戦をとりつけていきます。この二国からも出兵されれば、ヴァイセンを東、西、南からの三方から攻撃することができるのですが、両国とも出兵準備には1週間ほどかかるため、その間、バーゼルランド単独でヴァイセンの攻撃を凌がなければなりません。国境付近に塹壕を掘って迎撃態勢を整えるバルツァーたちなのですが、そこに現れたのがバーゼルランド軍の20倍の10万人のヴァイセン軍です。

ヴァイセン軍は、バルツァーたちの設置した鉄条網による防御陣の対策も装甲板を使ってしっかり講じたうえでじわじわとバーゼルランド陣へと迫ってきます。このままでは兵量の多さに押しつぶされるだけか、と思われた時、危機を脱するのは、マルセルたち歩兵の反撃です。

シュトライヒ将軍の胸甲騎兵、10万人の歩兵による中央突破という第一波、第二波の攻撃を粉砕されたヴァイセン軍は、20人程度の数個の正体に携帯型の砲を装備させて、夜間に乗じてバーゼルランド軍内に入り込み、内部から砲撃しバーゼルランド軍を混乱させるという陽動作戦に出ます。それに乗じて、正面から精鋭部隊を投入して塹壕を奪取していくという作戦なのですが、バルツァーの逆襲策は・・という展開です。

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レビュアーの一言

第15巻の中で、リープクネヒトは胸甲騎兵隊を撃破した気球による空からの爆撃や、前線を突破する移動防護縦といった新しい攻撃方法の中に、その後技術の進展によって大化けするであろう最新兵器の危険性を見出して、人間が世界を滅ぼす力を手に入れてしまうのを危惧しているのですが、それを言うなら、彼がヴァイセン軍を混乱させた際に用いた、電信システムをハッキングしたフェイク情報による攪乱なんていうほうが、もっと危険性が高いように思えます。

ただ、15巻で、リープクネヒトが謀略活動を行う目的もはっきりし始め、次巻以降、本格的に罰ツァーと対立していくであろうところが明らかになっていってます。

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