アウグスト王子の進める共和制化は、軍国ヴァイセンの政情不安を招く=「軍靴のバルツァー」11・12

19世紀の帝国主義まっさかりの頃、こちらの世界でいうとヨーロッパ大陸の北東部に位置する軍事国家・ヴァイセンの軍人「ベルント・バルツァー」が隣国「バーゼルランド」へ軍事顧問として派遣され、大陸の強国と弱小国の間で繰り広げられる戦争と謀略に巻き込まれながら、士官学校の生徒とともに国際政治の中心に乗り出していくプチ異世界戦争物語『中島三千恒「軍靴のバルツァー」(バンチコミックス)』シリーズの第11弾から第12弾。

前巻までで、バーゼルランドの第一王子と第二王子が国の主導権を巡って争った内戦が終了し、第二王子・アウグスト側が実権を握ったのですが、二人の王子にまつわる出生スキャンダルがもとで、国の体制が激変。これがもとで周辺国へも混乱が広がっていきます。

あらすじと注目ポイント

第11巻 アウグスト王子の次の一手は、立憲君主制を飛び越えて一挙に共和政体への移行

第11巻の構成は

第62話 王国の目覚め
第63話 初めての選挙
第64話 再建への道程
第65話 過去の清算
第66話 粛清と統制
第67話 影響力
第68話 恩讐の果てに

となっていて、前巻でヴァイセン軍が治安維持のための軍事介入に入る前に、第一王子軍を粉砕して内戦を収束させたアウグスト第二王子側は、貴族制を廃止して政府に徴兵・徴税権を集中するなど中央集権化を進めていきます。第二王子側に立って北部貴族の騎兵を粉砕したヘルムートにとっては、実家を没落させることにもなるのですが、彼女に後悔はないようです。

そして、アウグスト王子が次にとった政策は、王政を廃止し、国民投票によって決める大統領制に移行するとものなのですが、これと並行して自らの出自の疑惑を発表する、という付録付きです。王室への信頼を落とすものなのですが、ここには兄・フランツ第一王子を担ぎ出して王制復古を企む輩を排除するという目的があるのですが、実はもう一つ、第一王子派からの王位簒奪の批判を封じ込め、自らが合法的に国の権力を握る策略が隠れています。

このアウグスト王子の行動には、周辺諸国の王族たちが危機感を抱くとともに、バーゼルランドの属国化が遠のいたことで、ヴァイセンのホルスト参謀総長の焦りを産むことになります。このため、リープクネヒトが参謀総長の要請で、王党派の軍の高官を始末する「汚れ仕事」を進めていくことになります。

一方、バルツァーは、参謀総長の命令に背き、バーゼルランドの内戦でアウグスト王子側に加担した責任を問われて、本国へと召還され、陸軍の査問会議にかけられることとなります。

子の査問会議の結果、バルツァーは辺境にある基地の司令官へと祭り上げる決定が下されます。魔バルツァーを中央から遠ざけようという方針なのですが、アウグスト王子とヴァイセンの国王の介入で、王室付きの侍従武官に任命し、左遷を回避しようとするのですが、この動きを危険視した参謀総長からバルツァー暗殺の指令が、バルツァーの護衛兼監視役をしている諜報部の「ユーリ」と「ティモ」に下り・・という展開です。

ただ、この二人の相棒となるのがリープクネヒトであったため、事態は思わぬ方向へと進んでいきます。

Bitly

第12巻 ホルスト参謀総長がクーデターを敢行。ヴァイセンも一挙に騒乱状態に突入

第12巻の構成は

第69話 仇敵捕捉セリ
第70話 妄念鬼
第71話 野望の軍国
第72話 軍国崩壊
第73話 王子を追え!
第74話 思わぬ人
第75話 歴史を動かす者

となっていて、ヴァイセンの国王を退位させ、国の実権を握ろうと企むホルスト参謀総長一派の追及を逃れて、列車で首都脱出を狙うバルツァーたちなのですが、ここでリープクネヒトが雇った傭兵たちがこの当時、まだ娯楽品だった自動車に乗って襲撃してきます。この傭兵部隊のリーダーが、ホルベック紛争で、バルツァーと士官学校生徒によって壊滅されたホルベック騎兵隊隊長のハウプトマンです。機関銃の犠牲になった部下の仇をとろうと、ハウプトマンがバルツァーへと迫っていくのですが・・という展開です。

少しネタバレしておくと、ハウプトマンの襲撃はなんとか撃退したのですが、列車の転覆の衝撃で国王が亡くなる事態となってしまいます。この国王の死は、過去のクーデターの真相を知って参謀総長暗殺を企むも失敗したユーリたちの仕業とされてしまい、参謀総長は自らへの疑惑を振り払って、国の全権を掌握します。

掌握後、彼の目的は隣国への侵攻と、大陸の覇権の奪取で、そうなると大陸の多くが戦火に包まれることは間違いありません。これを阻止しようとバルツァーたちは、たった一人残るヴァイセン王位の継承者・ヨアヒム王子のもとへ向かいます。彼を即位させて参謀総長の企みを挫こうとするのですが、道楽息子で知られる王子はこの要請を拒否し・・という展開です。

まあ、ここは参謀総長の軍隊が王子の排除に動いてきたため、王子もバルツァーたちと行動をともにすることとなるのですが、国土の主要なところは参謀総長の軍に抑えられていて動きが取れません。ここで縋ったのが、王子の元乳母で、今は田舎に隠棲している大貴族の女性なのですが、実はバルツァーの祖母にあたり・・という展開です。

この老婦人がバルツァーたちにこの危機を打開するある提案をするところから、事態は一挙にヴァイセンの国内紛争から国際紛争へと発展していきます。

Bitly

レビュアーの一言

シリーズの最初のあたりから、教官としてのバルツァーから、その存在意義について疑問符をなげかけられ、ホルベック紛争では、鉄条網によって動きをけん制されて機関銃に餌食になったりしているのですが、こちらの正史でも近代になって塹壕の普及や機関銃などの銃火器が一般化、戦車の投入などによって騎兵の存在価値はダダ下がりとなっていて、現在では自動車化・バイク化された上に戦車部隊と統合されて、索敵目的に使われることが多いようです。

ちなみに、中国とインドではまだ「騎兵部隊」が実戦配備されているという情報があって、車の通行が困難な山岳地帯の国境警備に投入されているようです。

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