マリー・サンソン、女性処刑人として鮮烈デビュー=「イノサン」5・6

フランス国王からの委託を受けて、パリで死刑を宣告された囚人の処刑を執り行う一族「サンソン家」の一員で、ルイ16世やマリーアントワネット、ロベスピエールなどフランス革命期の多くの有名人をはじめ300人の人間の首を刎ねた伝説の処刑人「シャルル・アンリ・サンソン」とその妹「マリー・ジョセフ・サンソン」を中心に、フランス革命を裏面からとらえた歴史コミック・シリーズ『坂本眞一「イノサン」(ヤングジャンプコミックス)』の第5弾と第6弾。

前巻で、150年ぶりに行われた「八つ裂きの刑」を執り行い、四代目「ムシュー・ド・パリ」として務めを果たしたシャルル・アンソンと、彼に刑執行の見事なアドバイスを処刑台の上で行ったマリー・ジョセフ・サンソンだったのですが、今回から、二人がサンソン家を代表する”処刑人”となって国王たちのいるベルサイユ宮廷に近づいていきます。

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あらすじと注目ポイント

第5巻 処刑人マリーは、フランスの元帥に復讐を試みる

第5巻の構成は

n°42 混色の時代
n°43 私は真珠
n°44 月陰る洗礼
n°45 彗星現る
n°46 紅き闘争
n°47 畢生閃く剣
n°48 ”マリー”の茨道
n°49 月読の砦
n°50 華麗なる”殺戮する女”
n°51 生命の祈り
n°52 慈悲に濡れた洗礼
n°53 私かな儀式

となっていて、冒頭は1756年から1763年にかけておきた「七年戦争」でのウィリングハウゼンでのフランス軍の敗北から始まります。

フランスが9万の大軍を要しながら、6万のイギリス・プロイセン連合軍に大敗したこの戦いは、史実ではフフランス軍はブロイ公とスービーズ公に率いられているのですが、本作ではブロイ公ではなく、「グリフォン元帥」という貴族に率いられていて、スービーズ公の戦闘放棄によって破れ、敗北の責任をとらせられることとなっています。

このグリフォン元帥というのが、マリー・サンソンが、ダイソンの八つ裂き刑のショックで修道士となったニコラ・サンソンが務めていたベルサイユ、ランスの処刑を執行する「プレヴォテ・ド・ロテル」の職を受け継ぐときに、政府への推薦状の見返りにマリーの体を求めた人物ですね。

このときの恨みを晴らすため、グリフォン元帥の処刑を担当することとなったマリーは正面からグリフォンへ刃を向けたり、切りそこなったり、とこの場を借りて復讐を始めます。しかし、それは傍から見ると、処刑に手こずっているマリー・サンソンとしか見えないわけで、ここで、グリフォンと友人であった、療養中の三代目サンソン「ジャン・バチスト」が処刑台に登り、ロングソードを振り下ろし・・という展開です。

後半部分では、後にルイ15世の公妾となった「マリー・ジャンヌ・べキュー」が、修道女をやめ、美しく成長した姿で登場し、シャルルと関係を結びます。この時期は、パリで売れっ子のお針子となっているときで、ローズ・ベルタンのライバル的存在であった頃ですね。彼女はシャルルに相当濃い思い出を残すのですが、その濃厚なベッドシーンは原書のほうで。

第6巻 マリーは「立像斬首」の難題を見事解決する

第6巻の構成は

n°54 七色の”夢”の都
n°55 ”闇”の一族の愛
n°56 私かな”理想と自由”
n°57 美への挺身
n°58 漆黒の断頭術
n°59 鮮血の序奏
n°60 自由への”立像斬首”
n°61 愛溢れる”お別れ”
n°62 翠緑の遭遇
n°63 ”死”の崇拝

となっていて、前巻の最後で、べキューと関係をもったシャルルは突如、覚醒して、「強い兄貴」としての自覚が目覚めます。そこへ、前巻でグリフォン元帥への処刑台での復讐劇の報復のため、マリーへ闇討ちをしかけてきた「ラトゥール公爵」の処刑命令がサンソン家へ下るのですが、先回のような私情を晴らすための処刑を避けるため、シャルルはマリーを拘束し、彼女から「プレヴォテ・ド・ロテル」の座を取り上げようとします。

兄の束縛から逃れ、天職と考えている「処刑人」の職務を果たすため屋敷を脱出したマリーは、兄の先回りをして「ラトゥール公爵」の処刑礼状を手に入れるのですが、これに記されていた処刑方法は、罪人を直立不動させた状態で首を斬るというもの。ここには、王位を狙っている「ルイ・フィリップ」の陰謀が隠されているようなのですが、その詳細は原書のほうでご確認を。

今巻の注目ポイントは、代々伝わっているサンソン家の技術をもってしても不可能と思われ、さらに、処刑されるショックで腰を抜かしてしまい座り込んでいる「ラトゥール」をどうやって「立像斬首」するか、というところなのですが、ここでマリーの”美貌”と”甘い言葉”を使った「処刑術」が開花することとなります。

最後半では、シャルルと幼いベリー公「ルイ・オーギュスト」、後にのルイ16世との出会いがありますので、次巻以降のためにここはしっかりチェックしておきましょう。王室内では、けっこうハズレ者扱いされていることと、彼の「厭世思考」と「希死念慮」の傾向が読み取れるところです。

レビュアーの一言

第5巻ででてくるウィリングハウゼンの戦いは「七年戦争」の中の一つの戦闘なのですが、これははオーストリアのハプスブルグ家がプロイセンからシュレージェンを奪還しようとして始まった戦争で、イギリス・プロイセン側とフランス・オーストリア・ロシア・スペイン・スウェーデン側とヨーロッパの有力国が2つに割れて戦ったもので、ヨーロッパだけでなくインドでも戦われた、当時の”世界大戦”ともいえる戦争です。

この戦争はイギリス。プロイセンの勝利に終わり、北アメリカ大陸の広大な植民地を手に入れ、プロイセンはシュレージェン地方を確保しています。オーストリア、スペイン、スウェーデンは参戦したものの得るところがない状態に終わったのですが、フランスは北アメリカのヌーベルフランスの一部など多くの植民地を失ったほか、莫大な戦費で国家財政が大赤字となる一因となっています。このあたりがフランス革命の遠因の一つともいわれているところですね。

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