ルシャールの死刑中止で革命の流れは加速。そして、大量斬首機・ギロチン登場=「イノサン Rouge」7・8

フランス国王からの委託を受けて、パリで死刑を宣告された囚人の処刑を執り行う一族「サンソン家」の一員で、ルイ16世やマリーアントワネット、ロベスピエールなどフランス革命期の多くの有名人の首を刎ねた伝説の「シャルル・アンリ・サンソン」と女性でありながらベルサイユの処刑人「プレヴォテ・ド・ロテル」となった妹「マリー・ジョセフ・サンソン」を中心に、フランス革命を裏面からとらえた歴史コミック・シリーズ「イノサン」の革命篇となる『坂本眞一「イノサン Rouge」(ヤングジャンプコミックス)』の第7弾と第8弾。

前巻までで、アントワネットがその評判をダダ下がりさせた詐欺事件「首飾り事件」の首謀者であるヴァロア家の末裔・ジャンヌを焼き鏝の刑を利用沿て殺害することに失敗したマリー=ジョセフ・サンソンだったのですが、今回は、フランス革命の1年前の先ぶれともいわれる「オリビエ・ルシャールの車裂き刑事件」の処刑人として、現場に立ち会うこととなります。

あらすじと注目ポイント

第7巻 「オリビエ・ルシャール」の処刑中止で国王の権威失墜。そしてマリーは革命側の用心棒へ

第7巻の構成は

n°43 民衆の力
n°44 血塗られた道
n°45 「革命」の兄妹
n°46 紅き反乱分子
n°47 サンソンの刺客
n°48 その名は「ゼロ」
n°49 球戯場の誓い
n°50 国王処刑の序曲

となっていて、前半は前巻の「オリビエ・ルシャールの処刑」の続きです。前巻で親殺しの罪によって車裂きの刑に処せられる

オリビエの処刑台の周囲には、彼の解放を求める多くの民衆が集まり始めていて、なにかきっかけがあれば暴動gあおきかけない雰囲気です。そこで処刑の剣をふるうのは冷徹で物事に動じない「マリー・ジョセフ」なのですが、彼女は打ち損じたように装ってオリビエの顔の左半分の皮を削ぎ、処刑台の下に置いた籠の中に潜んでいる我が子「セロ」へ「血」を注ぎかけています。このことをマリーは「母の血の洗礼」と称しているのですが、これをきっかけにセロは処刑の介添人として成長することになります。

そし死に損なったオリビエの姿に興奮した民衆は処刑台を取り囲む柵にとりついて倒し、オリビエを救出し、死刑のほうは中断せざるをえなくなります。さらに処刑台には、フランス革命を主導する第三身分を象徴する「ジャケット」が掲げられ、警吏たちを退けます。この騒ぎの中で、マリー・ジョゼフは、サンソン一族の処刑人の道を捨て、新たな道に踏み出すのですが、詳細は原書のほうで。

オリビエ・ルシャールは、恋人デルフィーユを彼の父親の毒牙から救うために父親殺しをするのですが、当のデルフィーユは父親の後妻としてちゃっかりルシャール家の財産や事業を横取りしていた、という皮肉な目にあっています。そのオリビエのところに我が子ゼロ用の鉄仮面を注文したマリーがやってくるのですが、そこで第3身分の国会議員で組織する「ブルトン・クラブ」の用心棒としてスカウトされることなります。

彼女は、貴族出身ながら第3身分側についたラファイエット将軍の警護役となり、パリへと赴くのですが、官女を待っていたのは、兄シャルルによって差し向けられたサンソン一族の刺客たちです。一族同士が争うバトルの様子をご覧くださいね。

第8巻 シャルル・サンソンは大量斬首機ギロチンを、ルイ16世のアイデアで完成させる

第8巻の構成は

n°51 処刑機(ギロチン)誕生(1)
n°52 処刑機誕生(2)
n°53 国王処刑
n°54 九月虐殺(1)
n°55 九月虐殺(2)
n°56 九月虐殺(3)
n°57 ガブリエルの心臓

となっていて、冒頭では、兄シャルルが開発を進めていた大量斬首機・ギロチンの実用化試験がパリのビセートル監獄の中庭で行われています。この物語では、当初、斬首機の「刃」は首斬り斧を模した丸型で、うまく首を両断できなかったのですが、ルイ16世のアドバイスで斜め刃に改良され、見事実用化の運びとなったことになっています。

このギロチンはレバーを落とせば斬首できるので、専門職の処刑人であったサンソン一族の役割はなくなりそうなものですが、やはり処刑をするストレスに通常に人間が耐えられるものではなく、引き続きサンソン一族が処刑人として勤めを果たしています。しかし、処刑人の職務を続けるのが苦しくなったシャルル・アンリ・サンソンは辞職嘆願を続けているのですが、うまくいっていません。国内では「9月虐殺」に代表されるように王党派と革命派、革命派の中も穏健派と急進派に分かれて対立が続き、国外ではプロシアやオーストリアとの戦争が激化していて、政情不安が続いて処刑する数も増えていく一方で会ったことが理由のようです。(すでに、一般人が死刑を執行するのは精神的な負担が大きすぎて無理なことは、シャルル=アンリ自体が証明していますしね)

ここのあたりから物語は、回想部分が挿入されたりして、時間がいきつもどりつしながら進んでいきます。中盤では、国王ルイ16世の処刑直前のシーンがあるのですが、史実では彼の処刑までには多くの議論と何度も投票が重ねられていてかなり時間を要しています。そのあたりの詳しいところは次巻以降ですね。

そして革命の動きは加速し、1792年のジョルジュ・ダントンの過激演説をきっかけにおきた反革命勢力の大量処刑が行われた9月虐殺に突入するのですが、実は「ムシュー・ド・パリ」を務める兄シャルル=アンリの家では、長男ガブリエルが香水職人の処刑のどさくさで事故死するという不幸に見舞われています。

この香水職人ピエール・ホファーは師匠ベルモンドの代理としてドイツで香水販売を始めていたのですがそれが外国との密通の疑いをもたれ死刑判決が下されたものです。このホファーと仲の良かったガブリエルがその処刑にショックを受け処刑台から落下して死亡する事態となったわけですね。

実はホーファーの外国との密通疑惑は師匠ベルモンドが自分のやった罪をなすりつけていたもので、ここらにすでに倫理観を地に落ちてしまった当時のフランスの姿が現れているようですね。この長男死亡のショックでシャルル・アンリが廃人同様になってしまうのですが、その詳細は次巻で。

あらすじと注目ポイント

第8巻の中盤に出てくる国王ルイ16世の処刑では387対334の僅差で、処刑が可決されています。このシリーズの前半にでてきたオルレアン公フィリップもルイ16世の処刑に賛成票を投じた人物ですね。

彼はもともとオルレアン家に王位をもってこようと画策していたのですが、首飾り事件を契機にアントワネットと宮廷への批判を激化させ、早くから第3身分に加担し、貴族の反乱を主導しています。

ただ、彼の思惑の底が見えたせいか、国王の位に未練を残していたのか、ルイ16世の処刑から11カ月後、享和政府転覆の陰謀の疑いで逮捕され、1793年11月6日に断頭台でギロチンにかけられています。

革命がなければ、派手な遊び好きで、陰謀家の貴族として、フランス宮廷の実力者としてのし歩いていたのでしょうが、彼も革命の奔流に巻き込まれた人物であることは間違いないですね。

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