アントワネットの評判をだだ下がりさせた「首飾り事件」の真相は?=「イノサン Rouge」5・6

フランス国王からの委託を受けて、パリで死刑を宣告された囚人の処刑を執り行う一族「サンソン家」の一員で、ルイ16世やマリーアントワネット、ロベスピエールなどフランス革命期の多くの有名人の首を刎ねた伝説の「シャルル・アンリ・サンソン」と女性でありながらベルサイユの処刑人「プレヴォテ・ド・ロテル」となった妹「マリー・ジョセフ・サンソン」を中心に、フランス革命を裏面からとらえた歴史コミック・シリーズ「イノサン」の革命篇となる『坂本眞一「イノサン Rouge」(ヤングジャンプコミックス)』の第5弾と第6弾。

前巻では、正式の王妃として即位したマリー・アントワネットを中心に宮廷の勢力構図がかわっていったのですが、アントワネットに媚びを売らないマリー・ジョゼフとアントワネットとの関係が険悪になっていきつつあります。さらに、アントワネットの寵を狙うローアン枢機卿に詐欺をしかけるジャンヌや、ルイ16世暗殺を企むジャック・ダイソンなど革命へ向かって世の仲が動き出しています。

あらすじと注目ポイント

第5巻 処刑人マリー・ジョゼフは「王制」でも「革命」でもない独自路線を歩む

第5巻の構成は

n°28 死神に理想を
n°29 理念の絆
n°30 真紅の命題
n°31 狂った世界
n°32 死神と毒婦
n°33 爛熟の首飾り
n°34 醜聞狂想曲

となっていて、前巻に引き続き、死刑の報酬の支払いを請求してきたシャルル・サンソンに対し、ルイ16世は、王政が自分の世代で廃止となるであろう予測と死刑制度の廃止を告げます。これに対し、サンソンは犯罪抑止力としての「死刑」の有効性を訴えながら、その残虐性を排除するため、新しい処刑器具「ギロチン」の開発許可を嘆願します。シャルル・サンソンは死刑廃止論者であったはずなので、実際にどこまで関与したかはよくわかりませんが、このギロチンの開発が、フランス革命期における、大量処刑の基礎となったのは間違いないですね。

そして面会室の外では、ルイ16世を暗殺しようとするジャック・ダミアンと、ベルサイユ宮殿の御精を務めるマリー=ジョセフ・サンソンとの間で激しいバトルが続いています。これは肉体的な闘いであるとともに、二人の「革命」に対する考えのぶつかり合いなのですが、ここでマリー=ジョセフはジャックの語る「革命の理想」が男性目線からのもので、そこに女性の姿がないのを喝破します・ここから、アントワネットの「王政」でもなく、ジャックたちの「革命」でもない、マリーの独自路線が始まっていくことになります。

中盤からは、謁見の際に完全無視されたことで、アントワネットへの復讐を企むジャンヌが、アントワネットに瓜二つの娼婦を手に入れ、ローアン枢機卿への最後のペテンを仕掛けます。宝石商ベーマーが、マリー・サンソンから譲ってもらった巨大ダイヤを使った「首飾り」を詐取して売りさばくのですが、この詐欺はベーマーたちが宮廷へ請求書を持ち込んだことからばれ、ジャンヌたちは捕まってしまいます。しかし、この請求書を受け取ったアントワネットが買った覚えがないと請求書を燃やしてしまったことから、この詐欺事件の黒幕がアントワネットではないかという噂が蔓延していくことなります。

第6巻 ヴァロア家の末裔詐欺師「ジャンヌ」の処刑失敗!!

第6巻の構成は

n°35 ”共闘”の処刑台
n°36 天誅の針
n°37 最高存在
n°38 それが運命
n°39 悲劇の雫たち
n°40 父権への反乱
n°41 畏れとは
n°42 血の洗礼

となっていて、前巻の後半で警吏に捕まり、「焼鏝の刑」と終身禁固刑となったジャンヌの処刑が始まります。この執行はシャルル・サンソンが行うのですが、ジャンヌを生かしておくと、獄中からあることないこと書き連ねた手記を発表して王室の権威をさらに失墜させることを危惧し、マリー=ジョセフ・サンソンの助けをかりて、焼鏝の刑の執行を利用して殺害して舞うことを企みます。

「焼鏝の刑」は罪人であることを示す印をかたどった鏝を炭火で熱し、罪人の両肩に押しあてて焼き印をつける刑で、苦痛はひどいものの死に至ることはないのですが、今回は鏝に針を仕込み、肩に押し当てるとみせかけて両肺に穴をあけて呼吸困難をおこそうという計画です。

シャルルとマリーの協働作業をもってすれば、万が一にも失敗はないはずだったのですが、ジャンヌと処刑台での大暴れと突然の豪雨によって、この暗殺計画は失敗に終わります。この後、ジャンヌは脱獄に成功し、亡命先のロンドンでアントワネットに対する誹謗中傷をかき立てて、さらにアントワネットの評判を下落させることに成功するのですが、どうやら「天」もフランス王室は滅びることに力を貸しているような気配ですね。

そして、初めて処刑に失敗したマリーは、ある決意をするのですが、その詳細は原書のほうで。

後半部分では、新章の「暁の子」が始まります。

この章の出だしとなる事件はバベルサイユ近郊のモントレイユ通りにあるマチュラン・ルシャール親方の経営する蹄鉄工場から始まります。

ここには工場主マチュラン息子のオリビエが工場の中心人物として働いています。彼はパリの学校もでている当時のインテリで、王党派で守旧派の父親とは対立気味ですね。そのオリビアは下働きをしているデルフィーユという女性と恋仲になり将来を誓うのですが、彼女は父親が我が物にするために親から買い取った女性であったため、息子から彼女を奪い返し、貞操帯をつけて拘束します。恋人が奪われたことに激高したオリビエは実の父親を撲殺し、親殺しの罪で「車裂きの刑」に処せられることになります。

この処刑を行うため、サンソンの5人兄弟が参集するのですが、処刑の行われる聖ルイ広場には大勢の民衆が集まり、不穏な気配が漂っていて・・という展開です。

レビュアーの一言

第6巻の最後は、フランス革命のほぼ一年前、親殺しの罪で車裂きの刑の宣告を受けたオリビア・シャールが民衆の手によって解放され、処刑が実行できなかった事件が描かれているのですが、フランスの車裂きの刑は手足を打ち砕いて車輪の上に放置して囚人は死亡するまで放置し、その後埋葬させないために火あぶりの刑と同じ方式で死体を焼き、灰をまき散らすという徹底したやり方をとっています。

ドイツでは一定期間が立てば囚人は車輪から降ろされ、解放されたそうで、生還した者もいるそうです、

フランス王室の権威を守るためとはいえ、フランスの刑罰はかなり残虐な感じがしますね。

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