徳川幕府の威勢が弱まり、攘夷倒幕を主張する志士や長州や土佐、薩摩といった西国雄藩の動きが活発化する幕末の京都。新選組屯所屯所となった八木邸で、近藤勇以下新選組のメンバーが、酒を酌み交わしながら己が立ち会った剣客について語り合う、異色の幕末剣豪コミック・シリーズ『細川忠孝「ツワモノガタリ」(ヤンマガKCスペシャル)』の第3弾から第5弾。
前回では、対決の第1弾として、新撰組の初代筆頭局長・芹沢鴨の暗殺での神道無念流の芹沢vs天心理念流の沖田との死闘が描かれていたのですが、今回は、第2巻から始まった、田中新兵衛と藤堂平助の対決の決着と槍の遣い手・原田左之助と長州の倒幕派のリーダー・高杉晋作との対決が展開されます。
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あらすじと注目ポイント
第3巻 藤堂の「木ノ葉落とし」に親兵衛は「蜻蛉切り」で対抗する
第3巻の構成は
第16話 木の葉落とし
第17話 地軸のそこまで
第18話 二の段 終幕
第19話 長州の剣
第20話 最強への夢
第21話 間合いの武術
第22話 心の眼
第23話 松下村塾四天王
第24話 高杉晋作と柳生新陰流
第25話 三の段 開戦
となっていて、冒頭では、「蜻蛉」の斬撃を浴びせられてても倒れない藤堂平助の姿に驚く田中新兵衛の様子から始まります。今までは立ち会ってきた相手は逃げるか、気合を入れる間もなく切られていて、藤堂のような相手は初めてだったようですね。
そして、その後、剣の切っ先が折れてしまうというハプニングに見舞われるのですが、立ち会いのあらゆる状況を的確に把握し、迅速に判断することに長けた藤堂は「木の葉落とし」の連続斬りを仕掛け、新兵衛を削っていきます。
これに対し、田中親兵衛の繰り出す剣剣は、やはり相変わらず「蜻蛉」なのですが、その単純な技が藤堂の技を打ち砕いていくのですが・・という展開です。
このあと、剣の勝負を中断させる事態が起き、それは藤堂にとって少々屈辱的な出来事なのですが、詳細は原書のほうでどうぞ。
中盤からは、原田左之助が高杉晋作との勝負を語るのですが、最初のところは、原田が江戸の練兵館で桂小五郎の剣を見て、自分の才能の無さを痛感し、槍の道へ転身するのですが、彼が自分の流儀を他に例をみない「種田宝蔵院流」と名乗っていた理由がわかります。当時、槍術の代表的な流派は「種田流」と「宝蔵院流」で、槍の形も素槍と十字槍と異なっていて、両派は交わるはずがないですが、原田がその二つの流派を重ねねた理由が彼の修行の歴史を物語っています。
第4巻 原田左之助の修行遍歴は、高杉の天才性を粉砕する
第4巻の構成は
第26話 陰陽不和
第27話 不平等な駆け引き
第28話 電電霹靂
第29話 誠
第30話 足跡
第30話 迷い路の果て
第31話 無敵の剣
第32話 新撰組最強の剣客
第33話 一雫の殺意
となっていて、冒頭では、原田左之助と高杉晋作との立ち会いが始まります。剣と槍では普通、槍のほうが相当有利なのですが、高杉は柳生新陰流の免許皆伝である上に、相手の心を読み、相手を操ることに長けていて巧みに駆け引きを仕掛けてきて、左之助の槍も翻弄されてしまいます。さらに、高杉は手裏剣の遣い手でもあって、槍の長さも無効にしてきます。
高杉は左之助に対し、屋台骨が傾いて倒れるのを待つばかりの「幕府」を捨てて、新時代をともに築こうと誘うのですが、左之助はこれを拒否し、「時代と共に腹を切る」と宣言します。
そして、宝蔵院流に詳しい高杉によって、左之助は体制を崩され、上段の構えから頭をかち割られそうになるのですが、そこで繰り出したのは左之助の今までの修行遍歴を象徴する技の数々で・・という展開です。
第5巻 斎藤一は、天才人斬り・河上彦斎との対決で覚醒する
第5巻の構成は
第35話 箱庭
第36話 芝居
第37話 非現実
第38話 型無し
第39話 会話
第40話 天禀
第41話 如水
第42話 勇気
第43話 昇龍
となっていて、今巻で語られるのは、新撰組のメンバーが浪士隊へ参画して京へ上って来る前に、人を斬ったために一足先に京を逃れてきていた斎藤一と河上彦斎との対決です。
幕末四大人斬りと言われた「河上彦斎」なのですが、もとは肥後の細川家の藩主の側仕えをしていた茶坊主で、その剣技は全くの我流のようですね。初めて剣を振るった城下を荒らす盗賊退治でも一刀のもとに賊を両断していて、まさに天才の剣の風情です。
そんな彼が、浪士組の結成を呼びかけた清河八郎に頼まれ、近藤勇を切る前に、先乗りをしていた斎藤一で腕試しをしておこうという魂胆です。
斎藤一も一刀流の免許皆伝で、相当の手練ではあるのですが、もとは「素人」で「我流」の剣を使う彦斎の繰り出す剣技はどの流派の技とも違っていて、勝手が違うようです。しかも、彦斎は立ち会いの中で繰り出される斎藤の技を即座に覚え込むという「天才」ならではの特技を発揮して斎藤を苦しめます。
しかし、相手と立ち会いの中で相手の戦い方を知り、囲碁の盤面を読むように技を繰り出していく、斎藤の一刀流の剣技は彦斎と立ち会っている内にどんどん進化していきます。そして、一刀流の最高奥義で、未だに会得できていなかった「水之位 独妙剣」の極意に近づいていき・・という展開です。
レビュアーの一言
少しネタバレしておくと、第一弾の「芹沢鴨vs沖田総司」のときと違って、第2弾の「藤堂平助vs田中新兵衛」、第3弾の「原田左之助vs高杉晋作」、第4弾の「斎藤一vs河上彦斎」の対決では、どちらも命を落としていません。まあ、このあたりは史実尊重といえるわけで、どちらかというと登場人物たちのその後の行動や転身の理由を明かす「秘譚」という色合いですね。
まあ、このあたりは本当に立ち会ったかどうか詮索するより、幕末志士や幕末の人斬り、新撰組隊士たちのよくできたフィクションとして楽しんでおきましょう。
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