辺境駐在員

森谷明子

泉にまつわるストレンジ・ストーリー ー 森谷明子「七姫幻想」(双葉文庫)

<br /><br /> 「七姫」の謂れは、織女の7つの異称、秋去姫、朝顔姫、薫姫、糸織姫、蜘蛛姫、梶葉姫、百子姫であるらしい。 そのあたりを受けて、収録は ささがにの泉 秋去衣 薫物合 朝顔斎宮 梶葉襲 百子淵 糸織草子 とな...
森谷明子

「都」という魔性の存在 ー 森谷明子「葛野盛衰記」(講談社)

<br /><br /> この物語をミステリーととらえるかどうか微妙なところであるが、古代に京都府にあった郡で、区域の一部が平安京になっているところ葛野あるいは葛野郡を舞台にした、いかにして「京都」あるいは「平安京」は「都」とな...
歴史

単身赴任のお父さんの江戸暮らしといったところか ー 青木直己「幕末単身赴任 下級武士の食日記」(NHK出版)

紀州の下級藩士の万延というから幕末に近い頃の江戸の勤番日記である。 「江戸の侍」というと将軍家、大名家といった大きな武家の暮らしや旗本の暮らし、あるいは与力・同心といった捕物帳の常連の方々の暮らしは、書物でも小説でも、はたまた時代劇TVでも...
仕事術

国学院久我山のサッカー部の外部コーチの発言に”プロの傭兵の仕事”の心意気を見た

進学校でありながら、全国高等学校サッカー選手権大会にベスト4入りをした、国学院久我山の記事がYahoo Newsに掲載されていた。 久我山では進学校ということもあって、サッカー部の練習に使えるグラウンドも手狭である上に、朝練禁止、18時10...
磯田道史

磯田道史「武士の家計簿 ー 「加賀藩御算用者」の幕末維新」(新潮新書)

堺雅人と仲間由紀恵のキャストで映画化もされた作品の原作である。映画では、猪山直之を堺雅人を演じていて、TVで見た記憶で言えば、彼が息子に背負われてお城から退出(?)するあたりで終わっていたと思うのだが、このへんは退出であったのか登城であった...
ミステリー

権勢欲と子を想う気持ちは仲の良い主従の間も割くのだね ー 森谷明子「望月のあと ー 覚書源氏物語『若菜』」(東京創元社)

<br /> 源氏物語の作者 紫式部とその周辺の人たちを主人公とした時代ミステリーの第三弾。 一作目、二作目では源氏物語の進展も栄耀栄華に向かっていたのだが、そろそろ源氏も老境にさしかかる頃。それと並行するように。現実の世界でも、藤原道長に...
森谷明子

平安時代の女房生活の追体験という不思議な読み心地 ー 森谷明子「白の祝宴ー逸文 紫式部日記」

<br /><br /> 「千年の黙 異本源氏物語」で大胆にも、紫式部の源氏物語の創作秘話として「かがやくひのみや」の帖がなぜ失われてしまったか?をとりあげ、「古典」も時代ミステリーになるんだと驚かせてくれた、森谷明子氏の「源氏...
ミステリー

久々の異譚・奇譚 ー 太田忠司「奇談蒐集家」(創元推理文庫)

そのミステリーの腕力は、登場人物とシチュエーションの巧妙さにかかっているといってよい。このミステリーもそのあたりは巧妙に仕掛けてきていて、都会の場末の「starwberry hill」が舞台。ここで新聞記事で募集した「世にも稀な奇談」が買わ...
ミステリー

明治末期の風情やいかに ー 三木笙子「人魚は空に還る」(創元推理文庫)

<br /><br /> 時代ミステリーというやつは、その時代についての知識や興味がないと入り込むのに手こずるもので、このミステリーの時代も日露戦争の後、明治40年代を舞台にしていて、恥ずかしながら、当方にとってかなり霧のかかっ...
関 裕二

日本古代に「但馬」という新しい舞台が登場 ー 関 裕二「海峡を往還する神々」(PHP文庫)

国情が不安定になったり、国勢が下がっている気配が見えると、ナショナリズムが高揚するというのは、他の国々でもよくあることと思うのだが、ここ日本においては、その国の成り立ちのルーツというか、その頃の王権に関わる言説があれこれ飛び交うことが多いよ...