「空き家」は田舎だけの問題ではない ー 牧野知弘「空き家問題ー1000戸の衝撃」(祥伝社)

最近とみに社会問題化してきた「空き家」の問題なのだが、それについて2014年段階でレポートされたのが本書。しかし、この問題、今の段階でも抜き差しならない課題と認識されているか、となるとそのあたりは心許ない状態にある。
構成は
はじめに 地方に残された親の不動産
第1章 増加し続ける日本の空き家
第2章 空き家がもたらす社会問題
第3章 日本の不動産の構造変革
第4章 空き家問題解決への処方箋
第5章 日本の骨組みを変える
おわりに 認知症が進む日本の未来
となっていて、出版された時期の関係で、最近の放置空き家の税制や特別措置法のことには及んでいないが、ざっくりと「空き家問題」を知るには充分であろう。
とりわけ、この「空き屋」問題を
地域内で空き家の比率が増加し、地域を支える商業店舗がなくなり、車を使うことも困難になったお年寄りがバスで他の地域の店舗に買い物に出かけるという、ほんの十数年前、地方で問題となった「過疎地」問題がまぎれもなく、今首都圏で生じているという事実(P35)
と、都市部、地方部、過疎部問わず、人口の角の集中と国全体の人口減少がもたらす全国的課題ととらえているところは、我々もきちんと認識すべきであるし。その解決手段を考えるに際しても
しなければいけない決断とは、この土地の持っている価格を今以上に引き出してやるか、あるいはその価値を他者に売却することによってお金に替えることです。ところが、この本来持っているであろう土地の価値に対して、もはやニーズがどこにも存在しないということになれば話はややこしくなる(P62)
といった八方塞がりの事態すら発生している所を訴えているのは慧眼といっていい。
もちろん「自治体消滅」の解決手段としての道州制や、市町村のさらなる大合併を行ったうえでの市街化地域の縮小など、辺境地に住まうとともに、デジタルなネットワーク社会の促進と地域的にはリージョナリズムの進展がこれからの社会のあり方ではないか、と思う当方としては、中心化推進、集中化バンザイの議論の部分には賛同できないものがあるが、権利返還方式や管理処分方式といった「市街地再開発手法」の応用(P166)や「シェアハウス」としての利用(P174)などの提案や、学校や空き店舗を介護施設に転用するメリットやハードルなど、不動産業界にいた人だけあって話が具体的である。
「空き家問題」をさっくりと把握しておこうという人は一読しておいてよいのではないか。

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