「伝達すること」の難しさを吹き飛ばすテクニック — 池上 彰「伝える力」(PHPビジネス新書)

フリージャーナリストとして、様々な場面で顔をみる池上 彰氏による物事を「伝える」ための技術論。
もともとはアナウンサー、キャスターであるので、「喋り」自体はプロであるのだが、そjのプロがこうした平易な技術論を書くということは、ネタバレであるとともに、読者がえっと思うと、本業のほうにも影響があるので、結構勇気のいるものと推察されて、そのあたりは「おわりに」の「この本は”陰謀”によって実現しました」といったあたりに表れている。

構成は

第1章 「伝える力」を培う
第2章 相手を惹きつける
第3章 円滑のコミュニケーションする
第4章 ビジネス文書を書く
第5章 文章力をアップさせる
第6章 わかりやすく伝える
第7章 この言葉・表現は使わない
第8章 上質のインプットをする

となっていて、奇をてらう構成になっていないところが、実は「能ある鷹は爪を隠す」というところでもある。で、その「伝える力」は、

意味がわからないまま読んだり話したりすると、それを聞いている相手も意味がわからない(P19)

「伝える力」を高めるためには、自分が深く理解することが必要であるとわかります。
では、理解を深めるにはどうしたらよいのか。そのためにはその前段階として、「自分がいかに物事を知らないか」を知ることからスタートするしかありません。(P29)

といったところ基礎にしていて、オーソドクスなところに立脚点がある。
そして、その技術とは「「つかみ」が大切」「10秒あれば、かなりのことを言える」「「型をくずす」のは型があってこそ」「会議では一人一人の目を見ながら話す」といったわかりやすくはあるが、不自由なく使いこなすには結構練習が必要であろうようだ。

ついでに言うと、「伝える」技術論だけでなく、

日本にはいわば「けしからん罪」が存在しています。
それは、法律には違反していないけれど、何かけしからんよね、という多くの人たちの気持ちであり、感覚、空気です(P77)

謝ることは危機管理になる。
一言謝られることで、なんとなく納得し、なんとなく許してしまう。非常に日本的といえば日本的ですが、これが多くの日本人の感性です。(P93)

といった処世の技も披露されると思うと

仮説を立てて現場に臨めば、たとえ仮説とは状況が大きく異なっていたとしても、土台があるので、軌道修正をすれば、対応は比較的容易にできるのです。
つまり、白紙の状態で調査を開始するよりも、効率はずっとよいといえます。(P115)

現地にいって問われるのは「五感」や「雑感」(P117)

といった取材の技術のようなものもあって、結構おトクな本であるようだ。
「伝える」ということは、何の苦労もなくひょいとできる人もいれば、汗水たらして頑張っても「よくわからない」という無情な一言で全てを破壊されてしまう人もいる。どちらかというと後者のほうが圧倒的多数であるように思われるのだが、こうした「方法論」を地道に学んで練習する、っていうのが「伝達力」上達の近道なのかもしれないな。

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