会社活動の基本と言われながら、多くの人が敬遠してしまうのが「営業職」というものらしい。それは、実戦が展開される危険な最前線よりも、机上の指揮がまかり通る安全な後方を好む「人の性(さが)」かもしれないし、幕政時代の”士農工商”的な価値観の影響を拭い去れない日本人特有の性向なのかもしれない。
そうした「営業」にスポットライトをあて、まっとうな評価を与えようとしているのが本書といっていい。
構成は
第1章 営業部はなぜバカにされるのか
第2章 ものが売れる瞬間とは
第3章 おたくの営業はこのままで大丈夫か
第4章 営業力は誰が伸ばすものなのか
第5章 総力戦を戦える組織とは
となっていて、「営業」というものの分析・評価とそれを昇華させて、会社の中心として位置づけていくための方法論を説くという流れなのだが、なにせ
営業部への評判(もしくは悪評)には、どのようなものがあるのでしょうか。
冒頭の会話を分析すると、次のように分類できるように思えます。
①何となく押しが強くて嫌な感じ。
本心が見えない。
②体力勝負というか、汗臭いというか、うっとうしい。
③やたらと接待と称して酒ばかり飲んでいる。
仕事でなくても酒を飲んでいる。
④社内の決まりごと(精算など)をきちんとやらない。
それで平気な顔をしている。
⑤古いやり方から脱却できない。
頭が固い。
⑥他部署から「古い」などと指摘されることを嫌がる。
といった「営業」部であるから、その道はなかなか平坦ではない。
ではあるのだが、筆者のソフトバンク時代の
もしも私がセールス以外の仕事に踏み込まなければ、プロジエクトはうまくいかなかったかもしれません。
私自身としても、大きな価値を生み出す瞬間というのは、現場(顧客との接点)に近い人間、つまり営業部が、新しい価値に踏み込み、会社全体の仕組みまで変更するようなことに関わった時に生まれるのだということを初めて経験
をもとにしながら
企業活動の中で、これまでは、この顧客価値を際立たせるストーリー作りや分析眼は、製造部門が担ってきました。
そして最近では、商品企画部門やマーケティング部門も担っています。
しかし、本当に一番情報の集まっているところは、実際の顧客と対面するセールスを担当する部門、つまり営業部のはずです。
と営業部の重要さを訴える辺りは、「営業マンであるな」と妙な感心をしてしまう。
さらに、スーパー営業マンを
私は多くの会社、多くの部署を経験し、スーパー営業マンと呼ばれている人を数多く見てきましたが、それは概ね三つのタイプに分類されることが分かってきました。
「優等生タイプ」「達人タイプ」「芸術家タイプ」です
に分類し、例えば「優等生タイプ」であれば
まず優等生タイプ。
彼らは、一口で言えば、社内営業が得意で、既存顧客売上を拡大し続けるタイプです。
「既存顧客から売上を伸ばすなんて当たり前のことで、社内の方ばっかりを向いているいけ好かないやつだ」――新規営業が得意な野武士的営業マンからは嫌われるタイプかも知れません。
でも彼ら優等生タイプは、その野武士的な営業マンのことを決してバカにはしません。
むしろ彼ら違うタイプの営業マンを讃えながら、自らへの批判をよそに常に圧倒的な数字を上げ続けます
といったふうにそれぞれの特徴を明らかにし、さらには、それぞれのタイプの使いようを指南してくれるのは、マネジメントや製造担当にも有り難いことである。
さて、本書によれば、「総力戦」の場合の戦力が試さられる現在のビジネス戦線の主力ともいえる「営業部」。経営者には
経営者自身がもしも長年、顧客価値が固定化されていた伝統的な組織の出身であるなら、自分自身からは新しい価値は生まれないのだ、と「諦めてしまう勇気」も必要です。
もちろんそれは新しい価値を生み出すことを諦めるという意味ではありません。
そうではなくプロセスの変更や、新しい人材の確保によって新しい価値を生み出せるシステムを作るようにすればいい
といった価値観の転換も必要であるようだが、本書を契機に「営業部」を見直してみてもよいかもしれないですね。
コメント