優れたビジネススタイルはアメリカ流だけじゃない ー 可児鈴一郎+オッレ・ヘドクヴィスト「北欧流 小さくて最強の組織づくり」

ビジネススタイルのトレンドは、移り変わりが結構厳しいところがあって、以前、韓国のIT産業が勢いを増してきていた時は「サムスン」のビジネススタイルがひっぱりだこのこともあったし、ちょっと古いところでは、Dellのスタイルが一番、なんて時もあった。
最近は、というと、ディズニーやGoogleをはじめとしたアメリカ風のサービス業やIT企業のビジネススタイルが話題にのぼることが多いように思うのだが、イケアをはじめとした「北欧」出身の企業のビジネススタイルについて解説するが、本書『可児鈴一郎+オッレ・ヘドクヴィスト「北欧流 小さくて最強の組織づくり」(講談社+α新書)』である。

【構成とチェックポイント】

構成は

はじめに  今も海賊商人文化が生きる北欧ビジネス
第1章 なぜ、幸福度も生産性も北欧は世界トップクラスか
第2章 日本を世界一に押し上げた「ビジネス道」
第3章 三代続くH&Mの類いまれなるマネジメントカ
第4章 不可能を可能にしたイケア流世界進出
第5章 人脈づくりを徹底する「ヴァイキング商人の教え」
第6章 スウェーデン流小さくて最強の組織づくり
第7章 北欧企業はなぜ人づくりがうまいのか
第8章 シンポリック・リーダーが成長の原動カ
おわりに ワイルドなアイデアも評価される社会

となっていて、まず

興味深いことに、サムライ文化をルーツに持つ日本企業と、海賊文化をルーツに持つ北欧企業とは、似ているところが多々あります。
徹底した現場主義の実践、チームワークを大切にすること、人の上に立つ者に対する要求水準の高さなどがそれです。

と、日本の企業文化をもちあげつつも、少ない人口規模の北欧諸国から、グローバルな企業が生まれてくる要因に「異文化適応能力」をあげていて、このキモを解き明かすことが本書の目的といっていい。

本書によれば、その「異文化適応能力」は

自文化だけを優れたもの、正しいものと考えないで、自他の文化差、違いを素直に認識できる「文化的気づき度」と、ひとつの問題を複数の視点からとらえmなおかつ解決策をいくつも用意して、状況にお維持手柔軟に対応していく「異文化許容度」で構成される『柔軟度』

未知の人に足ししても、臆することなく自分の考えを主張・説明できる能力の度合いである「社会的積極度」と”相手にどうみられるか”を意識して自己の行動を調整できる能力の度合いである「自己監視度」で構成される相手が自分のことをどうみているかを考えながら、自己の思考や行動を調整していける能力である「自己調整度」

周りの人とどの程度安定者交流ができるかといった「対人的安定度」と神経質傾向、興奮性、自己信頼傾向で構成される「安定度」

の3つで構成されるとし、このレベルが極めて高いのが北欧企業(本書ではイケアとかH&Mといったスゥェーデン企業を想定してますね)としていて、今の日本企業が、国際競争力を強化していくには、まさにこの「異文化適応能力では?」と問題提起している。

そして、こうした能力がなぜ北欧企業に備わった起源を「ヴァイキング」の歴史に求めていて、ここらになると民族的な歴史経験が共通しないと、ダメなのかな、と思いがちなんであるが、筆者の掲げる「北欧ビジネス」の特徴をみると

(1)運命を切り開こうとする個人による活力あふれる組織
(2)ルールを重んじ能力主義を貫く公平な組織集団
(3)民主的な意思決定によるコンセンサスの形成
(4)小集団による機動的なゲリラ組織

といったことが挙げられていて、これを見ると、日本の一般的な中小企業なら、頑張ればヤレルかもしれんな、と思えてくる。もっとも、じゃあ簡単にできるのね、というわけでもなく、

イケアやH&Mなど先進的なスウェーデン企業にみられる「強烈な企業文化」は、そうしたイメージとは対照的に、チームのリーダーたちが現場でスタッフたちと和気あいあいとコミュニケーションをとりながら、シンボリックに行動することでチームを引っ張っていく独特のスタイル

ということなので、「企業文化」を変える痛みは味わないといけないようですね。

このほかにも、日本企業の特質分析や、イケアやH&Mの企業文化やビジネスタイルの分析とかもあるので、このあたりに興味のある向きは第2章から第4章のあたりを読んでみてくださいな。

【レビュアーからひと言】

正直な感想をいうと、「アメリカ流」だけでやっていくと、疲れ果ててしまって続かないことがないですか?
イケアにしろ、H&Mにしろ、アメリカ出身ではない、スゥェーデン流であっても、世界に存在感を示してるのは間違いなくて、そうしたアメリカやドイツ流とは違う成功例を数多く見て自社に当てはめていくのが、企業文化を変えていくには一番だと思います。

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