「努力」はアメリカ・日本共通の処世訓 — アンジェラ・ダックワース「GRIT やり抜く力ー人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける」(ダイヤモンド社)

きらびやかな才能の磨き方や、パンチのあるプレゼンの力の伸ばし方など、キラキラ光るビジネスの能力の鍛え方をコーチするビジネス本は多いのだが、今回、本書で注目し推奨するのjは「古くて良き」能力である。

構成は

PART1 「やり抜く力」とは何か?なぜそれが重要なのか
 第1章 「やり抜く力」の秘密ーなぜ彼らはそこまでがんばれるのか
 第2章 「才能」では成功できないー「成功する者」と「失敗する者」を分けるもの
 第3章 努力と才能の「達成の方程式」ー 一流の人がしている当たり前のこと
 第4章 あなたには「やり抜く力」がどれだけあるか?―「情熱」と「粘り強さ」がわかるテスト
 第5章 「やり抜く力」は伸ばせる―自分をつくる「遺伝子と経験のミックス」
PART2 「やり抜く力」を内側から伸ばす
 第6章 「興味」を結びつける―情熱を抱き、没頭する技術
 第7章 成功する「練習」の法則―やってもムダな方法、やっただけ成果の出る方法
 第8章 「目的」を見出すー鉄人は必ず「他者」を目的にする
 第9章 この「希望」が背中を押す―「もう一度立ち上がれる」考え方をつくる
PART3 「やり抜く力」を外側から伸ばす
 第10章 「やり抜く力」を伸ばす効果的な方法―科学では「賢明な子育て」の答えは出ている
 第11章 「課外活動」を絶対にすべしー「1年以上継続」と「進歩経験」の衝撃的な効果
 第12章 まわりに「やり抜く力」を伸ばしてもらうー人が大きく変わる「もっとも確実な条件」
 第13章 最後にー人生のマラソンで真に成功する
となっていて、後段のPART3でわかるように、自分で自分の能力を伸ばすビジネスノウハウ本ではなく、もともと教育書として書かれたもの。
本書で説かれる一番大事なものとは、表題のとおり「GRTIT やり抜く力」であるのだが、それがなぜかというあたりは
ウェストポイントの入学審査では、志願者総合評価スコアがもっとも重要な決め手となっていたが、「ビースト」の厳しい訓練に耐え抜けるかどうかを予想するには、残念ながらあまり役に立たなかった。
それどころか、志願者総合評価スコアで最高評価を獲得した士官候補生たちは、なぜか最低スコアの候補生たちと同じくらい、中退する確率が高かった。
といったように、アメリカの名だたる陸軍士官学校の実例などの実例やインタビューで実証していくのが、アメリカの論文らしいところ。

アメリカのビジネス書といえば、GoogleやFacebookなどなど若くて才能あるアントレプレナーをとりあげた「天才」「タレント」のビジネス手法を紹介して、そのうち少しばかりでも真似出来ないか、といったものが目立つのだが、こうした「努力」「積み重ね」「たゆまない力」といったところを強調するものが評価される場面もあるのだな、とアメリカの多様な評価を見直してみる。

そういえば、ハリウッドのヒット映画のパターンの一つは「外敵に対し、才能のない(若い)人が、努力・修行の末、敵を倒す」ってのがあることを思えば不思議でもないのかもしれない。
一方で、
偉業を成し遂げた人たちに、「成功するために必要なものは何ですか?」とたずねると、「夢中でやること」や「熱中すること」と答える人はほとんどいない。
多くの人が口にするのは「熱心さ」ではなく、「ひとつのことにじっくりと長いあいだ取り組む姿勢」なのだ。
とか
時間の長さよりも「どんな練習をしているか」が決め手になることだった。
ほかのどんな練習よりも「意図的な練習」が、大会を勝ち進むための要因になっていることがわかったのだ。
と「努力の大事さ」と「特別な練習」を強調するとともに
自分の興味があることを掘り下げるにしても、練習に励み、研究を怠らず、つねに学ぶなど、やるべきことは山ほどある。
だからこそ言っておきたいのは、好きでもないことは、なおさらうまくなれるはずがないということだ。
保護者や、これから親になる人や、年齢を問わず親以外の人たちにも、伝えたいことがある。
それは、「必死に努力する以前に、まずは楽しむことが大事」ということだ
と「刻苦勉励」ばかりを主張しないところが現代的であるところかな。
もっとも、
おそらくパットナムには想像に難くないはずだが、家庭所得とグリット・グリッドのスコアには、懸念すべき相関関係が見られる。
私の研究に参加した高校3年生のうち、国から給食費の援助を受けている生徒たちは、恵まれた家庭の生徒たちにくらべて、平均でグリット・グリッドのスコアが1ポイント低いことがわかった
といったように、「才能」が成功の秘訣ではないにせよ、「やり抜く力」をつくるには「環境」が影響するところも大きいといったところも指摘されているので、あらゆる環境に人に平等の理論ではない(所得の低い環境の人たちは、そうでない人よりGRITを身につけるに一層のちからが必要になるということだな)のは注意が要る所。
なんにせよ。成功の決め手は「才能」だけではない、という提案は、キラキラした輝きを見せる同僚の横で、力を落としているフツーの人達への一つの光明ではある。さらには失敗して落ち込んでいるフツーの子どもたちにどうアドバイスしていくかの道標にもなるだろう。
「努力」というのは日本もアメリカも共通の処世訓であるのですね。

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