今すぐ仕事で「脱皮したい」あなたに ー 金井壽宏「仕事で「一皮むける」」

以前はそんなに冴えのある人とは思っていなかったのだが、しばらくぶりに会うと、その人物の幅がとても大きくなっていた、とか、リーダーとしての器が大きく変わっていた、ということがある。
 
こうした「器を大きくする」経験は、よく「修羅場をくぐり抜ける」とはいうものの、では、「どんな場面?」というと千差万別で一般化していないことが多い。
本書『金井壽宏「仕事で「一皮むける」 関経連「一皮むけた経験」に学ぶ」(光文社新書)』はそんな経験を類型化し、まとめたもの。
 

【構成は】

 
「一皮向ける経験」が最大のキャリア・チャンス
「入社初期段階の配属・異動」で一皮むける
「初めての管理職」で一皮むける
「新規事業・新市場のゼロからの立ち上げ」で一皮むける
「海外勤務」で一皮むける
「ラインからスタッフ部門・業務への配属」で一皮むける
「ラインからスタッフ部門・業務への配属」で一皮むける
「プロジェクトチームへの参画」で一皮むける
「降格・左遷を含む困難な環境」に直面して一皮むける
「昇進・昇格による権限の拡大」で一皮むける
「ほかのひとからの影響」で一皮むける
「その他の配属・異動、あるいは業務」で一皮むける
「節目」に一皮むけ、キャリア発達を続けるために
「一皮むけた経験」からリーダーシップ開発へ
 
となっていて、関経連が行った調査「一皮むけた経験と教訓:豊かなキャリア形成へのメッセージー経営幹部へのインタビュー調査を踏まえて」をもとにして、まとめなおされたもので、多くのインタビューに基づいた「一皮むける」経験の集大成である。
 
 

【注目ポイント】

 
当方が悩んだのは、本書を読むスタンスである。
 
というのも、目次を見てもわかるように、「一皮むけた」経験がおきる場面は、「入社初期」「海外赴任時」「新規事業の立ち上げ」「降格・左遷」「昇進・昇格」と様々で、シチュエーションの共通性はほとんどない。
 
そして、「一皮むけた」経験から汲み取ったことも
 
組織風土は、ボスの影響が強いのは当然であるが、ボスだけでなくみんなが注意して育ててゆくものであることを繰り返し確認したいものである
 
とか
 
「新規事業・新市場のゼロからの立ち上げ」から何が学べると確認されているかをみておこう
①何もなく、あるのは使命だけという状況のなかで、管理者は何が重要かを識別することを学び、または使命を成し遂げるために組織化することを学ぶ
②必要な人員構成を図ることは、どのように部下を選び、訓練し、動機づけるかを管理者に教える
③成功裡にことを成し遂げれば、「生き残れる」ということを管理者に教える(生き残れること以上の目的があろうが、修羅場はそこをうまくくぐり抜けることが肝心)。この原体験は、自信を強めさせ、リスクに立ち向かわせる心構えを培う
④管理者は、どのくらいのリーダーシップが必要であり、またそれがどのくらいの孤独であるかを学ぶ
 
であったりして、まあ有り体にいうと、シチュエーションによって様々なのである。
 
レビューするにあたって、これをどうまとめるか、ということを一応考えたのだが、結論から言うと、「まとめない」ことにした。
 
というのも、ネタバレ的にいうと、本書の最後の方で
 
ここで指摘しておきたいことは、本書を読んでもその(読書)経験で一皮むけるわけではなく、読書や座学は「一皮むけた(仕事)経験」にカウントできないということだ。・・・一皮むける状況(時間・空間)はほかの誰でもなくあなたが握っているし、その状況を通過して初めて経験になるからである。
 
というところを読んで、この「一皮むける」経験談は、一般化、普遍化するよりも、それぞれのシチュエーションによる事象として、個別のものとしてとらえでおいたほうがよいのでは、と思ったからである。
 
つまり、誰でも共通して効能のある体験談ではなく、それぞれの個人が悩んでいる、まさにその時点で、その人が置かれている状況に応じて、先人の例として辞書のように「引いて」みる、といった使い方がぴったりくるような気がしているのである。
 

【まとめ】にならない【まとめ】

 
ということで、一皮むけるためには、修羅場をくぐったほうがいいのかそうでないのか、一筋のしごとしたほうがいいのかそうでないのか、どうやら、万人向けの処方箋はないようだ。
 
ただ何事も見ているだけでは始まらない。「宝くじを当てるには、まず宝くじ」を買え、というのが最大公約数の真理であるようだ。
 

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