アウトプットは、他人との”差別化”を図る近道だ ー 成毛眞「黄金のアウトプット術 インプットした情報を「お金」に変える」(ポプラ新書)

「インプットよりアウトプットが大事だよ」といったことが、先だってレビューした「アウトプット大全」の中で主張されていたのだが、元日本マイクロソフト社長で、現代きっての論客・成毛眞氏が

今の時代、情報収集、勉強をして、知識、教養を溜め込んで満足しているようでは、もうダメだ。
得た情報をどう発信して、自分の血肉とするのか、価値あるものに変えていくのか、もっとわかりやすく言えば、「お金」に変えるのかを意識せよ。
それを強烈に意識してより良質なアウトプットができれば、センスが磨かれ、アイデアが生まれ、人脈が広がり、評価が上がり、必ず成果がついてくることだろう。

として、「効率的なインプット+効果的なアウトプット」といった観点から各種のTipsをアドバイスしてくれるのが本書である。

【構成は】

第1章 アウトプット時代の到来
 ーインプットは、もう終わりだね
第2章 書くアウトプットがいちばんラク
 ー書ければ、必ずお金になる
第3章 やるほど上手くなる!話すアウトプット術
 ー説得、プレゼン、雑談のコツ
第4章 印象を操作する「見た目」のアウトプット術
 ー戦略的ビジュアル系のすすめ
第5章 インプットするなら「知識」ではなく「技法」
 ー日常に潜む優良インプットソース
第6章 アウトプットを極上にする対話術
 ーコミュ力は今からでも上げられる

となっていて、「書く」「話す」といった主要なアウトプットのコツとあわせて、アウトプットを念頭においた「インプット」の手法についても書かれていて、結構欲張ったつくりである。

【注目ポイント】

いくつか注目ポイントを上げていくと、まずは、アウトプットで一番多用される「書く」分野では、「文章のコツ」的なことが紹介されていて、

アウトプットの目的は、読みにくくわかりにくい文章を書くことではない。インプットを消化し、形を変えて放出することだ。
そしてその結果として、誰かに「あの人はこういう人なのか」と思ってもらい、フィードバックを得ることだ。
あの人は賢い人なのかと思ってもらいたいという欲もあるかもしれないが、まずまちがいなく、その試みは失敗する。

あるいは

読みやすい文章とは、サプライズのない文章であり、その先に曲がり角がある場合にはそれを予め教えてくれる文章のことである。サプライズだらけの文章を悪文という

ってなあたりは、文章を書く上での「基本」というものをもう一回復習させてくれている。今どきは「美文」調の文章を書く風潮はないのだが、よく見るのが「長くダラダラとどこまでも続く文章で、「簡素」「簡潔」というところは基本としても、最後に気をつけないといけないのが「文章のリズム」であるらしく、「そのリズムのお手本としておすすめなのが 都々逸調」といったところがユニークなところである。

次の「話す」ということなのだが、「書く」より「話す」のが難しい、というのは多くの人が実感するところで、文章表現では理路整然と展開している人が、いざ喋る段になると論旨不明になったしまうことが多い。そんな方には「話すときにも、書くときのように、「何を話すか」を最初に決めるべきだ」とした上で

厳密に決める必要はない。だいたいこんなところかなといった程度でよろしい。その「だいたいこんなところ」は、見えないアドバルーンとして、頭上に浮かべる。そしてそのアドバルーンを毛糸玉に強引に置き換える。そしてその毛糸玉から毛糸をするする引き出すように、言葉を引き出す。
途中で言葉に詰まったら、はて、なんの話をしていたかと、その毛糸玉、さらにはアドバルーンを思い出す。すると、次の言葉が出てくるはずだ。文法通りである必要などない。

という本書のアドバイスが参考になると思うのだが、けして「原稿を作って読め」というアドバイスではないことは要注意。本書の「アドバルーン」や「毛糸玉」は頭の中に浮かべて実践するものなので、ここらはちょっと自分なりのトレーニングが必要になりそうである。

最後に注目しておきたいのが「インプット」をする上での「苦手なこと」の扱いなのだが

その勉強熱心な情熱の持ち主が 10 代の若者なら、私は応援するかもしれない。  しかし、 30 代以上なら、何をバカなことをやっているのだろうと思う。なぜ、苦手なこと、嫌いなことのために貴重な時間を使うのか、さっぱり理解できないからだ。
(略)
そんなことに時間を浪費するのなら、得意なことをもっと得意にし、好きなものを好きにするために労力を注ぎ込み、その分野で周りに差をつけ、差別化を図るべきだ。

としているところには安心する方々も多いはず。小さな頃から、苦手な分野をどうにかしなさいと言われ続けたことが影響して、社会人になってもそのクセが抜けないことが多いのだが、苦手分野は放っておいて、思い切って「得意分野」や「教務ある分野」を究めろと、名うての論客から言ってもらうと、とても心強いな。

このほかにも、ブログを書く場合の「100字×8ブロック」の方式とか、「プレゼンではできるだけ資料は配布するな」とか、目を惹くアドバイスもたくさんあるので、詳細は原書で確認してくださいな。

【レビュアーから一言】

いざ「アウトプット」しようと思っても、ノウハウがなくて躓いたり、面倒くさくなって「アウトプット」自体を諦めてしまったり、ということがよくあるのだが、本書は、そういう経験のある人にとって、非常に役立つ「道標」である。
さらに、筆者の著作の常として、リズム感があって、表現も切れ味はいいので、テンポよく読み進めることができるのが良いですね。

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