「礼」に始まり「礼」に終わる「掃除」で評判を勝ち得た会社の真髄は? — 遠藤功「新幹線お掃除の天使たち」(アサ出版)

最近、偽装やら違法な検査体制などが続発して、日本企業の美点といわれていたものが、かなり揺らいでいる。しかも今まで評判の高い企業でおおがかりな不正がでてくるものだから、企業の成功物語や好事例をとりあげると、あとから「あらら〜」となることがあるのだが、本書で取り上げられている「テッセイ」は、評判になったのが2016年のはじめで、そこから評判を落としたと言ったニュースもネット上にはく、まずは安心してレビューしよう。
構成は
 
プロローグ なぜ新幹線の車両清掃会社がこれほど私達の胸を打つのか?
第1部 「新幹線劇場」で本当にあった心温まるストーリー
    〜エンジェル・リポートから〜
第2部 「新幹線劇場」はどのようにして生まれたのか?
 「地ならし」のための600日
 変革の「芽」を育てた1100日
 「幹」を育てた700日
 新たなステージに向う100日
となっていて、JR東海の新幹線などの車両内の清掃やプラットフォームの案内業務を行っている「テッセイ」という会社のルポである。
ただ、この会社、そんじょそこらの清掃会社ではなく
テッセイの車両清掃チームは、担当する列車が入線する3分前にホームに到着し、ホーム際に一列に整列します。そして、列車がホームに入ってくると深々とお辞儀をして出迎えます。(P25)
に始まり、素晴らしいチームワークで、停車中の「7分間」でトイレから座席までの清掃をピカピカに仕上げる会社で、
おおまかには、プロローグはテッセイという会社の解説。第1部は、この会社に勤務する人のレポート。第2部は、この会社の
で、まあこの会社の素晴らしさ、組織やチームづくりといったことは、今まで多くの記事などで取り上げられているので、当方が蛇足を加える愚は避けて、「おや」と思ったのは、「組織の正式な一員になること(本書では「正社員になること」)への意欲、あるいは「組織へ参加すること」への意欲のあたり。
それは、パートから正社員になるための面接で、
面接で社員になりたい動機を聞かれ、親類に隠していた話、少しづつ仕事に誇りを持てるようになった話をして、こう締めくくりました。
「私はこの会社に入るとき、プライドを捨てました。でも、この会社に入って、新しいプライドを得たんです。」(P43)
であったり、
人間は、形から入る、格好から入ることが大切なこともあるのです。
スポーツでよく言われるのは、道具や靴がその人の潜在能力を呼び覚ますことがあるということです。私は野球やスキーをやっていて、道具の大切さをわかっています。みんなで同じものを身につけて共通の意識を持てるようになるということも、そこで実感してきたことです(P130)
といったように、「掃除」という”3K”でもある仕事にプライドを持たせ、チームとしての一体感をつくっていくという営みが続けられる中で、”組織体との帰属感”というものが、強い会社、頑張る組織づくりにかなりの効果をもっているように思え、このへんは「ちきりん」さんや「メイロマ」さんには、認識不足と時代錯誤を叱られるかもしれない。
ただ、本書を読むと、旧来型の勤め人をしてきて、組織への帰属になんとはなしの安心感を得ている、大多数の「サラリーマン」に属するであろう当方としては、
 
このプロジェクトでは、現場への大幅な権限委譲を行いました。
これまでは、現場からよいアイデアが生まれても、それを実行に移すためには本社での審議・承認が必要でした。
答が出るまでに時間がかかったり、待たされた挙句にNOの答がでることもありました。それでは、現場のやる気も萎えてしまいます。
そうした弊害をなくすために、現場を散り仕切る現場長に予算と権限を与え、現場のアイデアに即座に対応できるようにしたのです。これおによって、大規模な予算を伴うものでなければ、それぞれの現場で判断し、実行に移すことができます。
「褒める」仕組みも、それぞれの現場での独自性を認めるようになりました。(P180)
といった組織運営の修正パッチはいくつかあてつつも、この「組織への帰属感」というものが、スムーズに組織を運営し、業績を上げる上で、まだまだ大きな力を残しているように思えるのである。
このあたり、本書では
経営は「常」と「変」のバランスが命です。変えるべきものは大胆に変える一方で、変えてはいけない常なるものは、愚直に継続することが大切です(P183)
という言葉もある。何を「常」とすべきで、何を「変」とすべきか、それぞれの置かれた状況に応じて、流行りに流されることなく、よくよく見極めないといけないのかもしれんですね。

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