ワーカー、リーダー、職場環境の三方それぞれに原因がある「仕事」がうまくいかない現実への処方箋 — 沢渡あまね「仕事の問題地図 」(技術評論社)

私達が仕事をしていく上でのさまざまな障害について、「職場」に着目して分析してみたのが。「職場の問題地図」であったのだが、「仕事」そのもの、あるいは「仕事をする人」の視点で分析してみたのが、本書である。

構成は

はじめに〜どうして仕事が進まない、終わらない? 1丁目 計画不在 2丁目 進捗不明 3丁目 一体感がない 4丁目 モチベーションが低い 5丁目 期限に終わらない 6丁目 意見を言わない 7丁目 有識者不在 8丁目 抵抗勢力の壁 9丁目 対立を避ける 10丁目 失敗しっぱなし おわりに〜「だって、人間だもの!」に向き合おう

となっているのだが、最初のところで、仕事がうまく進まない、あるいは最後まで完結しないのは

仕事は生きものである 私たちもまた生きものである

としていて、多くのビジネス書のアドバイスが理知的な「べき論」が多くて辟易している、多くのビジネスマンが膝を打って賛同する滑り出しである。

「仕事も、私たちも生きもの」というのを当方流に考えると、うまくいかない原因は、「働く側」と「働かせる側」双方にあるということであるうようで、本書によれば、「働き側」には、たとえば「計画不在」のところでは

なぜマトモな計画がないのでしょうか?3つの原因が考えられます。 ①「勘で何とかなるだろう」と思っている ②計画の標準形がない ③やるべきことがわかっていない

といったように、力任せで仕事をする姿が見えてくるし、「進捗不明」のところでは

①報連相がない ②だれも進捗をフォローしない

といったうまくいかない構造的原因である、日本の職場特有の「相手依存」が垣間見える。 では、こうした「働く側」の原因をなんとかすればどうにかなるかというとそうでもなくて、

①意識バラバラ症候群 ②一部の人だけ突っ走る病 ③終わりが見えないで症 ④低モチベーション症

といった職場の不協和音が、それをますます助長するし、こうした問題を察知して改善策をうつべき「働かせる側」のリーダーたちにも

①意見をいう甲斐がない ②リーダーの独演会 ③カタい雰囲気といった

といった課題が満載で、うーむ、これでは仕事が期限内に終わらないのも尤もだな、と妙に納得してしまうのである。とはいうものの、こういう状態で、ビジネス現場がまわらないまま、というわけにもいかないわけで、たとえば「抵抗勢力をなんとかする」といったお題には

①まず、現場に話をする(これを「仁義を切る」と表現することがあります ②次に、上から落としてもらう(担当役員→工場長→現場の部長などの順に)

といった風に、具体的な処方箋が豊富に提案されているので、詳しくは原本で確認していただきたい(あんまり詳しく書くと営業妨害になるからね)。

さて、仕事がうまくいかない時は、その原因を、自分ではないどこか(管理側とか職場環境)に求めがちなのだが、実はどっちもどっちであることが本書を読むことが明白にわかる。働く側、働かせる側が協力しながら、改善を測るっていう「日本型労働」のスタイルが結構有効なのかもしれんですね。

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