メンタリストによる時間管理術 ー Daigo「週40時間の自由をつくる 超時間術」(実務教育出版)

「メンタリスト」というのは、Daigo氏が広めた言葉で、「心理学に基づく暗示や錯覚などのテクニックを駆使し、常識では考えられないようなパフォーマンスを見せる人」をいうらしく、彼の著書も「人の心を見抜く」「人の心を操る」といった、心理系のものが多いのだが、本書はそんな心理学の知見を活かしながら「時間管理」にまつわる「思い込み」をなくして、どう時間を生み出すか、ということと、そのための「メンタルの整え方」といたところを扱ったもの。

【構成は】

第1章 時間にまつわる3つの勘違い
勘違い1 物理的な時間がない
勘違い2 やるべきことが多すぎる
勘違い3 忙しい人は仕事ができる
第2章 時間感覚を正す7つのフィックス
フィックス1 ゴールコンフリクトを正す
フィックス2 時間汚染を防げ!
フィックス3 呼吸を整える
フィックス4 リフレーミング
フィックス5 親切
フィックス6 スモールゴール
フィックス7 自然
第3章 それでも時間がないあなたにおくるストレス対策
第4章 職場の「時間汚染」に打ち勝つ働き方
働き方1 まずは通勤時間のストレスを防ごう!
働き方2 仕事中の時間汚染に立ち向かうには?
第5章 自分の時間を取り戻す8週間プログラム
第1週〜第2週 時間が伸びる感覚を味わう
第3週〜第4週 乱れた時間角を整える
第5週〜第6週 時間を取り戻す準備を整える
第7週〜第8週 時間の呪縛を逃れる
第8週 時間を捨ててみる

となっていて、最初のほうは、「時間管理に関する誤解」の解消、次に「メンタルの整え方」、最後に2ヶ月でそのテクニックを身につけるトレーニング法といった設えである。

【本書の注目ポイント】

◯「時間がない」という主張は根拠がない

まず、本書の主張で驚くのは「あなたの時間不足は「錯覚」(P49)」というもの。
そんなはずはない、俺はいつも時間に追われている、と言いたい向きが多いと思うのだが、筆者によれば

データを見ると、ここで不思議な事がわかります。現代人は昔の人より働いていないにも関わらず、趣味、娯楽、レジャーなどに使う時間は減っているのです。(P22)

多くのアメリカ人は「自分は週60〜64時間は働いていすはずだ」と答えた。
実際に計測した1週間の労働時間は、平均44.2時間だった(P23)

といったデータをもとに、我々の「忙しい」「時間がない」という感覚は、物理的な「仕事の量」というよりも、その処理・対応の仕方にあって、

「忙しい」と口にだすたびに、あなたの意識は未来や過去に向かい、そのせいで目の前の本当にやるべきことに集中できなくなる。
こうなると予定した作業はどんどん遅れてしまい、本当は余っていたはずの時間が無意識に浪費される。(P27)

忙しい人ほど1日にさまざまな作業を詰め込んでしまう

1日にジャンルが違う作業をいくつも行うと、それぞれのタスクを達成する確立は25%も下がった(P40)

といったように、時間配分や時間内に作業ややりたいことを詰め込みすぎて全てが中途半端になってしまうことによる「不完全感」が「忙しすぎて何もできない」という意識を生み出している、として「時間がない」という感覚が、極めて「心理的な」現象であることを主張している。

さらには

マルチタスクをすると、あなたの脳にストレスがかかり、扁桃体という感情をコントロールするエリアが活性化。その結果、あなたの脳はまるで時間が細切れになったかのように思い込み、つねに時間に追われているかのように感じてしまう。
多くの研究者は、この状態を「時間汚染」と呼んでいます。(P79)

といったように、「忙しい」感がさらに、時間が足りないという焦燥感を煽り立てていくといった悪循環にはまり込んでしまう、というのが「時間不足」の実態であるようだ。

◯時間を生み出すための対策は

「じゃあ、どうすれば」というところで、通常の「時間管理本」であれば、作業を省いたりとか、機器を導入したり、といった提案に行ってしまうのが通例なおだが、本書の場合は、そこが、とても「メンタリスト」的で

人間にこのような性質が備わっている限り、「忙しいアピール」が世の中から消えることはないでしょう。
しかし、この事実を知っていまえば、もう惑わされる必要はありません。
忙しそうにする人を横目に、自分は「本来の自由な時間」を有効に使う方法を考えていけばいい(P48)

といったように、人間の心理面で変わりそうもないことは諦めて

「今日は執筆を3本と瞑想を1時間する」といったように、再低減のやるべきことを決めたら、あとは時計を見ずにひたすら作業に取り組む。このようなスタイルで仕事をすると、いま眼の前のことに集中するしかなくなります。(P53)

といったように「時間ではなく「行動」で自己管理をする。」ことを勧めたり、「ToDo管理はインデックスカードで(P84)」とか、「私たちの脳は、一度に同じ能力を使った時にパニックを起こします。・・・ということは、逆に言えば、まったく違う能力を使ったマルチタスクであれば、何の問題も起きない(P86)」といった心理的なアドバイスが中心となるのは、とても新鮮である。

◯時間を生み出すためのメンタル・トレーニング

とはいうものの、「心の持ちよう」で時間を生み出すには、自然体ではなかなかできないのももちろんで、そのために、

・4秒かけて鼻から吸う
・4秒かけて鼻から吐く

という「サマ・ヴリッティ(等間隔呼吸法)」をはじめとする、「5つの科学的呼吸法」(サマ・ヴリッティ、腹式呼吸、片鼻呼吸法、カパーラバーティ、スダルシャンクリヤ)が紹介されたり、

「不安」も「興奮」も、私達の体に起きる変化は同じ。それならば、何もせずに不安のままでいるよりは、強引にでもポジティブな解釈に切り替えてしまったほうがいい

という発想からの、嫌な状況を前向きに解釈することで、ネガティブな感情に立ち向かうテクニックである「リフレーミング」や自分にとって有効なストレス対策をリストにしておく「コーピング・レパートリー」だとか、トレーニングあるいはスキル的な方法論も紹介されている。詳細のところは、本書を読んで確認していただきたい。

【まとめ】

「時間がない」「忙しい」というのは、働くビジネスマンの口癖のようになっていて、いつの間には、そんな気分でいないと仕事した気にならなくなっている自分に驚くことがあるはず。
本書は、そんな「心の持ちよう」を矯正してくれて、「時間を生み出す」本でもある。「時間の細切れ感」に気付いたら、ぜひご一読あれ。

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