上杉謙信、没す。センゴクは播州へ ー 宮下英樹「センゴク天正記9」

落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる「センゴク」シリーズのSeason2「センゴク天正記」の第9巻。

「手取川の合戦」で上杉謙信によってぼこぼこにやられた柴田軍の撤退と前巻での敵前逃亡による改易をなんとか免れた秀吉の播州攻略が始まります。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.80 霞越え
VOL.81 合戦と静謐
VOL.82 秋気清し
VOL.83 鉄血の播磨人
VOL.84 犠牲と平穏
VOL.85 陸の線 海の線
VOL.86 虎千代の望み
VOL.87 管領の御為に
VOL.88 西の大国
VOL.89 城主の命運

となっていて、まずは「手取川の合戦」で上杉勢の総攻撃に川べりまで追い詰められた柴田勢が、センゴクの「水がもうすぐひく」という言葉を信じ、鎧を脱いで川を飛び込む鬼柴田の「霞越え」のシーンからスタート。

この戦いでのセンゴクの加勢と進言のおかげでからくも逃げ切れた柴田勝家が、信長の秀吉の赦免をとりなすことが、秀吉が改易・追放を免れた要因の一つでもあるのですが、ここでのセンゴクの働きについては、後の秀吉のセンゴクへの扱いをみると、知らなかったか、忘れていたかのどちらかでは、と思います。

この辺の割り切りの良さが秀吉を天下人へしたのでしょうが、反面、秀吉没後の豊臣家没落の原因の一つかもしれません。

ここで、エライのが上杉謙信で、川を渡ろうとする柴田勢へ追い討ちをかけずに引き上げます。

これには、彼が求めている「天下静謐」とは

「戦が連続することによる静謐」という、彼独特の価値観が根底にあるようなのですが、一般人には理解困難でありますね。このへんは、巻のなかほどの「謙信の死」のあたりでも、独特の世界観が展開されているので、原書のほうを読んでください。

ここで、物語は、「手取川の合戦」から「「播州攻め」へ移ります。手取川の合戦で、敵前逃亡をした秀吉の挽回戦ですね。
この播州攻めは、最初のほうは、但馬・播磨を降し、「上月城」へ尼子の残党を入れて織田領にしたまでは良かったのですが、三木城主・別所長治の重臣・別所賀相が長治を説得して、謀反に踏み切らせ、そこに毛利勢が加勢して

といった感じで長期戦へ突入していきます。

【レビュアーからひと言】

この巻で、現在の織田家の最大の脅威である上杉謙信が上洛に向かうところで急死し、武田信玄の急死と同様、織田家は窮地を脱却することになります。信玄も謙信も信長の前の世代に属しているので、信長より先に没するのは予測されることなのですが、二人とも「キモ」の時期に命を落とすというのは、信長の運がよかったのか、あるいは何か「闇の力」が働いたのか、疑惑にかられるところですね。どなたか、この辺をテーマに「裏・信長史」を書いてもらえると嬉しいのですが・・・。

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