センゴクのジェットコースター人生いよいよクライマックスへ ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 1」

センゴク権兵衛(1) (ヤングマガジンコミックス)

織田信長によって斎藤龍興の稲葉山城が落城するシーンから始まった「センゴク」の物語のいよいよ最終章(と思う)。隆盛を極めていた武田信玄や上杉謙信も亡くなり、織田信長も本能寺で明智光秀によって弑逆。そして、賤ヶ岳の戦、小牧・長久手の戦を経て、センゴクが仕えてきた豊臣秀吉が「天下人」として日本全土を手中に収めていく時が舞台となる。

時代背景的には、天正13年からこの第四部は始まっていて、大徳寺での大茶会の終了後、紀州攻めを本格的に始めるあたりである。

【構成と注目ポイント】

構成は

プロローグ 肥前の熊
Vol.1 淡路大名仙石家
Vol.2 西国平定
Vol.3 根来の里
Vol.4 孫市の母
Vol.5 奉行
Vol.6 物量戦

となっていて、プロローグとして、天正12年の龍造寺隆信と島津・有馬連合軍と戦って敗れるシーンからスタート。

この戦は今のところ、センゴクたちとは直接の関係はないのだが、後に、センゴクが改易・追放される原因となる戸次川の島津側の総大将・島津家久が顔見世をしています。

本編のほうは、淡路を治めていたセンゴクのもとへ、三好家に仕える地侍の息子・田宮保富こと「某」が仕官のためにやってくるところから、この第四部の幕開け。この田宮保富という人物、ネットで調べてみるがヒットしない。作者がこのシリーズの「語り部」「狂言回し」として登場させた人物のようですね。

で、時代の趨勢のほうは、毛利家と和睦した豊臣秀吉が、いよいよ天下統一に乗り出し、「西国平定」を始める。その一番目の標的は、織田信長の頃から石山本願寺の武の中心として織田・豊臣勢を苦しめてきた「根来」である。当時の根来は真言宗の一派の総本山で、学問を担う学侶700人、根来を守る行人1万人あまり、彼らが住む坊舎3000弱で

といった学問の中心であるとともに武力の大集積地でもあったところ。この根来の本拠地に、和睦の可能性を探るため「センゴク」「某」「妙算」が潜入するのだが、ここで「妙算」の意外な過去が明らかになります。

その後、豊臣勢と根来衆との和睦はまとまらず、というか第ニ巻の根来陥落のところでもわかるように良いりーだーのいない責任をとらない評論家集団のようにこの頃の根来はなっていたようで、強い征服欲をもって譲歩を強いる「秀吉」とは折り合うはずもなく、まあ、必然的に「戦」の選択肢しか残っていなかったように思えます。当方の推測ながら、以前は戦力の消耗を防ぐために「和睦」を優先していた秀吉は、根来との戦いで

といった戦法に切り替えてから、彼の方向性が確実に変わっていっていて。それは

といった政務の様子でも明らか。センゴクがずっと仕えてきた「秀吉」はもはや以前の「秀吉」ではなくなっているような感じですね。

そして、物語は豊臣勢の根来攻めがまず陸戦から始まります。センゴク率いる水軍もいよいよ出陣なのだが、ここから先は次巻で。

【レビュアーから一言】

ご存知のように、このシリーズの主人公である「センゴク」こと仙石秀久は最後は信濃小諸藩主となったのだが、そこに至るまではジェットコースターのように、出世と馘首(クビ)の間を行ったり来たりした人物で、仕えた主人も、斎藤龍興、豊臣秀吉、徳川家康、徳川秀忠と変わっています。
第一部から第三部までは、信長・秀吉という二大巨星のあとを付いて走ってきた、センゴクが自らの人生の大きな岐路を迎えてどうふるまっていくか、この第四部は、すべてのビジネスパーソンの参考となるような気がいたします。

【関連記事】

根来の里滅ぶ。妙算はセンゴクと根来、どちらを選ぶ? ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 2」

熊野山中での「削り合い」の戦をセンゴクは凌げるか? ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 3」

紀州攻略は和睦で終わる。そして舞台は四国へ ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 4」

「四国」と「京都」。「武」と「文」。豊臣を取り巻く二つの「戦」に勝利せよ ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 5」

四国攻めの後、センゴクは大加増。そして、彼を待ち受ける島津家とは? ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 6」

島津四兄弟は九州の大勢力となり、秀吉と対峙する。そしてセンゴクは・・ ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 7」

センゴクは、大友勢と合流し守りを固めるつもりなのだが・・・ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 8」

島津家久との戦闘始まる。突出するセンゴクと信親の運命は? ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 9」

「神がかり」の家久軍の前に、センゴク・長宗我部軍屈する ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 10」ネタバレ

仙石家改易。家臣もバラバラになる中、センゴクの行動は? ー宮下英樹「センゴク権兵衛 11」ネタバレ

センゴクは高野山で人が変わる。そして西国平定間近の秀吉は・・ ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 12」ネタバレ

世の中は泰平に向かい、センゴクは未だ「浪人中」 ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 13」ネタバレ

【センゴク第一部〜第三部+外伝】

センゴク全15巻 完結セット (ヤングマガジンコミックス)
宮下 英樹
講談社
売り上げランキング: 23,155
センゴク天正記 全15巻完結セット (ヤンマガKCスペシャル)
宮下 英樹
講談社
売り上げランキング: 51,031
センゴク一統記 コミック 全15巻完結セット (ヤンマガKCスペシャル)
センゴク一統記 コミック 全15巻完結セット (ヤンマガKCスペシャル)
posted with amazlet at 19.09.23
宮下 英樹
講談社
売り上げランキング: 74,532
センゴク外伝 桶狭間戦記全5巻 セット (KCデラックス)
宮下 英樹
講談社
売り上げランキング: 46,753

【スポンサードリンク】

仙石秀久、戦国を駆ける 絶対にあきらめなかった武将 (PHP文庫)
志木沢郁
PHP研究所 (2016-01-04)
売り上げランキング: 208,249

コメント

タイトルとURLをコピーしました