美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第7巻
伊東義祐を破って日向を傘下に収めるなど、着々と将来の織田信長の九州侵攻に備えて領土を拡張する島津四兄弟と、九州六ヵ国を領し、「九州探題」の職にある大友宗麟率いるい大友家とのがっぷり四つの戦いが始まります。
そして、大友との戦を経て、領地を拡大した島津に対して、秀吉に九州征伐に参戦することを命じられたセンゴクと長宗我部との共同戦線を張る交渉などが描かれるのが本巻。センゴクの人生の一大転機となる「戸次川の戦」の「前々夜」というところでありましょうか。
【収録と注目ポイント】
収録は
VOL.48 緒戦
VOL.49 運命の日
VOL.50 耳川の戦い
VOL.51 神降り
VOL.52 情勢
VOL.53 外交
VOL.54 取次
VOL.55 謀り
となっていて、まずは、宗麟ひきいる大友軍と、島津四兄弟の率いる島津軍とが激突するところからスタート。まず、緒戦での戦いで、島津軍が選択した戦法が、伏兵で標的となる大友勢のうちの一隊、一隊を潰していくというもので、この「伏兵」戦術は、後にセンゴクが島津勢と戦ったときにも使われているので、島津軍は真正面から向かっていくのが常道の戦術、というのは改めないといけないようですね。
そして、島津勢に崩された大友軍の重鎮・田北鎮周が
と自らを犠牲にしての戦いを始めるのだが、これが大友軍の大敗の原因ともなる。この行動は、我々日本人の感性に訴えるものがあるのだが、「敗者」の選択であったのは間違いない。
ここで、注目しておかないといけないのが、島津軍の強さは、シラス台地に領土家があるため農業が未発達のため、民の不満を抑えるため、強権政治とならざる得ず、
といったところにあったようで、けして島津家の支配が温情深かったというわけではないところ。ここらは、領国を慈しんだ支配を行ったが滅び去った、後北条家とか明智光秀の統治とはちょっと性質が違っているようですね。
さらに、この耳川の戦いで、大友軍敗走の中、大友宗麟を討つため、深追いした家久の動機について
と筆者が語らせているのは、真実かどうかはいろんな議論があるんだろうが、猛進するだけでない家久の株を上げていて、こういう将に、センゴクが苦杯を舐めさせられたのもしょうがない、と思わせますね。
ここで舞台は一転、上方に移り、秀吉が九州征伐を決断するところに転じます。当初の徳川攻めら、九州攻めに転じると聞いて、戦が始まることにワクワクするセンゴクなのだが、彼に四国勢を率いるよう命じる秀吉の
といった企みを見ると、すでに秀吉はセンゴクと出会った頃から大きく変質していることを感じます。このへんは、石田三成が示す、
という、これからの大名統治策にしっかりと現れていて、当方としては、なんとも薄ら寒くなる思いがするのだが、豊臣家の支配が崩れたのは、ここらの思惑が透けてみてたあたりにあるのかもしれない、と推察します。後にセンゴクをはじめ、多くの豊臣恩顧の武将たちが、豊臣家を見限ったのもこのへんの策略が無造作にあからさまであったからかもしれず、ここらを隠した徳川家康は、策謀家としてはウワテであったということでしょう。
そして、清涼剤は、こうした事情をしっかりと把握しながら
と豊臣家に味方する長宗我部元親の態度でありますね。
【レビュアーから一言】
四国攻めが集結し、豊臣と徳川は和睦し、九州攻めへと進んでいき、15世紀末から始まった戦国時代も終結に向かって時代が動き始めています。
そんな時代の臭いを嗅ぎつけたセンゴクの
という言葉に、彼がこれから見せていく行動を暗示しています。こうしたものの最終決着が「大阪夏の陣・冬の陣」であったのかもしれません。山田芳裕さんの「へうげもの」では、戦国時代・安土本山時代の「へうげ」を潰していったのは徳川家康と描かれていたのですが、豊臣秀吉の統治の最後あたりからすでにその陰は潜んでいたのかもしれないですね。
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