若竹七海「悪いうさぎ」ー女子高生失踪事件に潜む謎に葉村晶が挑む

若竹七海

小さな探偵事務所・長谷川調査探偵調査所の、アラサーのフリーランス調査員・葉村晶が持ち込まれる揉め事を解きほぐしていくうちに、隠されていた黒い秘密まで引きずり出してしまう女性私立探偵もの「葉村晶シリーズ」の第3弾
本書では、葉村晶も31歳となり、3年間の長谷川探偵調査所の正社員を経て、自由契約となってますね。

【あらすじと注目ポイント】

構成は

 前哨戦
 序盤戦
 前半戦
 中盤戦
 後半戦
 終盤戦
 前哨戦再び

となっていて、まずは、大手ゼネコンの役員の家出娘を連れ戻す依頼をこなすところからスタート。この家出娘「平ミチル」という子が、今回の重要なキーとなる人物となってきます。

彼女の連れ戻しは、長谷川所長の知り合いの探偵事務所からの再委託なのですが、そこの事務所の社員で、マザコンならぬババコン、さらには女性への暴行常習者の「世良」という男が、本書のそこここで晶にいやがらせをしかけてきますが、これは作者がはった本筋の目くらましという感じが強いので、読者は注意してトラップを避けましょう。

本筋の依頼のほうは、「ミチル」の同級生で、ホテルチェーンの会長の娘「滝沢美和」という女子高校生が行方不明になっているので捜索をしてほしい、というもの。この滝沢家は父親は二代目で経営手腕は全くなくて、会社を潰しかけて社長から会長に祭り上げられている、こうしたミステリーでは典型的なオーナー一族。妻とは十年前に離婚していて、その元妻は宝飾店の経営者兼デザイナーなのだが、こちらのほうも財産はあるものの、経営のほうは景気のいい話を聞かない、という設定です。

で、こんな時、娘は遊び人、というのがお決まりなのですが、今回はそうではなくて、正義感の強いお嬢様で、友人で、男グセが悪くて薬物にも手を出している「柳瀬綾子(アヤ)」という同級生をなんとかこっち側に戻そうとしたり、昔、乳母をしてくれていた女性とその娘「カナ」の生活を援助しているといった女の子ですね。

そして、捜索を進めていく過程で、ミチルが再び家出をして晶の家に転がり込んできたり、「美和」の行方不明の原因を知っている可能性の高い「カナ」も行方不明になっているのが判明したり、さらに、「カナ」が行方不明になる前に「アヤからワリのいいバイトを紹介してもらった」と言われていたアヤこと柳瀬綾子が麻薬の売人によって扼殺されてり、とミチルの友人たちを巻き込んだ大がかりな事件である様相を示してきます。

そして、事件の真相のほうは、女子高生たちの集団薬物疑惑とか、売春とかいうものではなく、彼女たちの「親父たち」のグループによる、けっこうおぞましい「趣味」につながっていくのですが、詳しいところは本書のほうで。

【レビュアーから一言】

最初の登場のときは、はねっかえりで生意気で、という感じで良い印象をもてなかった「平ミチル」が、物語が展開していくに従って、だんだんと好意的な目で見られるようになるのは間違いないですね。特に、最初の家出後、葉村晶とひさびさに再会した時に、男の子のような短い髪型になっていた理由や、物語の結末のところを読むと、彼女を応援したくなること間違いなしです。

悪いうさぎ (文春文庫)
女探偵・葉村晶(あきら)は、家出中の女子高校生ミチルを連れ戻す仕事を請け負&...

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