若竹七海「さよならの手口」ー元女優の依頼が過去の連続殺人の謎を暴き出す

きれあじのいい調査をするのだが、調査をすすめると思ってもみないトラブルが向こうのほうが寄ってくるというフリーランスの探偵・葉村晶シリーズの第5弾が本書「さよならの手口」。

非常勤の探偵の籍をおいていた「長谷川探偵調査所」が閉所してしまい、探偵として働く場所と、生計をたてる手段も失った「晶」が、ミステリ専門の新古書店「MURDER BEAR BOOKSHOP」で新たな職を得て、探偵仕事を再開始します。

【あらすじと注目ポイント】

晶が再就職した新古書店は、吉祥寺の住宅街にある2階建てのアパートを改築したもので、出版社を定年退職した「富山」と元テレビ局員「土橋保」という男性二人が開いたものなのだが、二人とも、筋金入りのミステリーマニアで、店の売上アップのため、様々なフェアを開催し、そのための新刊と古書の仕入れに余念がない、というところなので、遺品整理や蔵書整理などからの買取で、アルバイトの「晶」も、」店番だけでなくあちこちに仕入れと商品運搬に駆り出されていて、そのあたりは探偵時代とかわらない「外仕事」の毎日です。

で、今回も、店主の知り合いの遺品整理人の真島から紹介のあった、昔小説家志望の老人の家からの古書の買取で、家の押入れの床の下から「人間の頭蓋骨」を発見してしまうのが出だしの事件です。少しだけネタバレすると、いわゆる「なりすまし」事件なのですが、以前に行方不明になっている、この家の旦那がキーですね。

そして、本書の本体となる事件は、引退した有名女優から二十年前に言えでしたまま行方のわからない娘を探して欲しい、という依頼からはじまります。この女優は末期のガンにかかっていて、余命幾ばくもないのですが、彼女の遺産をめぐって親戚たちが蠢いているという設定ですね。

この女優の娘は私生児で、父親については、大物政治家から実業家、大物俳優と様々な噂があったのですが、ここらが彼女が失踪し、今まで行方がわからなかった理由と関連してくるので、ここらの人間模様は注意して読み進めておいたほうがよいですね。

そして、複雑な家庭環境が産んだ失踪事件と思わせておいて、この女優が秘めていた性向であるとか、女優の周囲や、娘の潜伏先でおきた連続殺人とか、事件は広がりを見せていくのですが、ここらは作者が仕掛けるままにハラハラ・ドキドキと場面の展開の速さに驚きながら読んでいくのがよいと思います。

メインの事件の結末は元女優の入院する病院での大アクションシーンでクライマックスを迎えるのでお楽しみに。

さらに、この女優の娘の失踪当時、調査を頼まれた私立探偵の失踪事件であるとか、晶の務める「MURDER BEAR BOOKSHOP」で知り合い、シェハウスに入り込んでくる「倉嶋舞美」という女性がシェアハウスで企む悪事とか、並行して展開する事件のほうも、サイドディッシュとして上出来の仕上がりですのであわせてご賞味ください。

【レビュアーから一言】

物語の途中で、「晶」のシェアハウスに強引に入居してくる倉嶋舞美には、裏カジノに関与している疑惑があって、彼女の身辺調査を、警察に脅されて「晶」が行うことになりうます。彼女が脅されて理由が、非合法の探偵事業を行っているということで、このために結局、再就職の可能性があった探偵事務所の就職話が潰れてしまいます。
ところが意外にも、この危機を救ったのが、「MURDER BEAR BOOKSHOP」の店主・富山の行動で、彼の気まぐれで「晶」がこれからも探偵稼業が継続することとなるのですが、詳細は本書のほうでお確かめください。

さよならの手口 (文春文庫)
探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引き取りの際に白骨死&...

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