星野之宣「海帝5」ー鄭和はセイロンで、明の諜報部のトップと戦う

コロンブス・マゼランといったヨーロッパの大航海時代の百年以上前、アジアの大国・明の三代皇帝・永楽帝から第五代・宣徳帝の時代にかけて、7回のわたって派遣された明の大艦隊の指揮をとって、アフリカまで到達した、異色の宦官「鄭和」の大航海を描いた「海帝」シリーズの第5弾。

前巻で、マラッカで海賊たちとアラビア商人の攻撃を撃退し、その地の華僑たちを保護した鄭和であったのですが、ここまで匿ってきた建文帝と皇女の姿を海賊の頭目に目撃され、無事、二人を保護できるかが問われる巻となります。

【構成と注目ポイント】

構成は

 第32話 焔の影で
 第33話 代償と決断
 第34話 上陸作戦
 第35話 錫蘭の王
 第36話 仏陀の足跡
 第37話 漂流船
 第38話 青市島
 第39話 海に生き・・

となっていて、まず前半部分は、燕王こと永楽帝に、父親を殺されながらも、彼の護衛役として彼の生命を救い信頼を得た鄭和と建文帝との出会いのところが描かれます。

南京城を取り囲んだ永楽帝に命をうけて、鄭和は南京城内で、謀反の手引をする宦官の蔡全人、王契光と会います。彼らは貧しい農家の七男と剣客あがりで、どちらも立身出世を狙っての裏切りです。明の初代皇帝・洪武帝は決裁文書のほとんどを自分で決裁する「専制型」の君主だったので、出世を望んで宦官となった者にとっては不満が溜まっていたのでしょう。このあたりから、明朝でも宦官の影響力がどんどん強くなってくるきっかけですね。

そして、燕王の命令をうけた鄭和は皇帝の居室へ進み、皇帝一族の殺害をしようとするのですが、ここで建文帝を守ろうとする皇后と刃を交えることとなります。
通常、皇后となる人は貴族か王族の一族で、とても剣をふるうような女性はいるはずはないのですが、この皇后は洪武帝と同じところの出身です。洪武帝は農民の出身で、前の王朝への反乱軍の一員から王朝を築いた人物なので、同郷の彼女が、洪武帝の命令で孫の建文帝を護る密命をうけていたってのはある得ることかもしれません。

自分の命と引換えに、建文帝と娘の生命を救うように依頼する皇后の気持ちに応え、建文帝と皇女を南京城から脱出させるのですが、自分の命とk¥ひきかえに息子の生命を救った父親の思いが出現したのかもしれません。

その後、舞台はセイロンに到達した鄭和船団の場面に戻ります。ここで、鄭和は建文帝の亡命先にここにある「寺」を選びます。建文帝とその娘を出家させて、帰れらの生命を狙う永楽帝から守ろうということですね、
ここで、鄭和は、彼を殺して艦隊の指揮権を奪おうとして、密かに船団に乗り込んでいた、靖南の役の功績で、朝廷の諜報機関の一つ「西廠」の長に出世していた王契光と一騎打ちをするのですが、そのあたりは本書のほうで。

後半部分では、セイロンを出発し、鄭和艦隊はインドのカルカット(当時、中国名では古里)へ向かって航行しています。
ちょうどインド南岸沖を航行中、漂流船と遭遇します。その船には、死骸と真っ黒に変色した人間が乗船していたのですが、これは鄭和艦隊についてきている青市島の倭寇がかつて遭遇した「ペスト」に罹患した船でありました。
ここからは、青市島がペストに襲われどういう顛末で、鄭和たちと出会ったかが語られていきます。

【レビュアーから一言】

本書では、毒気の強い燕王こと永楽帝に迫害される建文帝なのですが、戦力で劣る燕王軍が皇帝軍に勝てたのは、初代・洪武帝が有力武将や皇族の謀反を怖れ、彼らを処刑したり圧迫したりといったことが遠因にあるようですね。さらに、建文帝自体も、軍事のほうにはからっきしだったのもあるようです。もし、安定した時期であれば名君であったのでしょうが、王朝創設時の混乱の時期には適合していなかった、ということでありましょうか。

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