働き方のスタイルも大きく変わり、終身雇用といった日本型の労働慣行も崩れつつある上に、人口減少で働く人も減っている。そんな情勢のせいでしょうか、「副業」という言葉が今は流行語のようになってきています。
とはいっても、副業解禁とはいいながら企業の執務ルール には旧来のものが残っていたり、副業といっても何が一番効果的なのかわからない、といったビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。本書『俣野成敏「サラリーマンを「副業」にしよう」(プレジデント社)』は19年間のサラリーマン経験から社内ベンチャー、副業を経て現在は独立開業している筆者による「副業の指南書」です。
【構成と注目ポイント】
構成は
第1章 間違いだらけのサラリーマンの”副業”
第2章 副業のスタイルを考える
第3章 副業が売れる仕組みをつくる
第4章 副業を維持・発展させる
第5章 独立も視野にいれる
となっていて、第1章が最近の雇用情勢や経済情勢からの「副業」の将来性、第2章がジョブ・マトリクスによる分析からのオススメの副業、第3章と第4章がせー副業でのマーケティングの基礎、第5章で副業が順調になり独立となったときのミニ知識という内容になっています。
今回のレビューでは、本書オススメの副業領域とマーケティング手法のさわりについてレビュー
しておきます。
◇副業のオススメは何?◇
本書では、まず「ジョブ・マトリクス」を使ってオススメの副業をあぶり出しています。
それによると目指すのは「スペシャリスト」ではなく「セールス」か「サポーター」ということで、よくある副業本では、今の仕事で「スペシャリスト」になってそれを拡張せよ、といった主張にものもあるのですが、本書によると
日本人は「段」や「級」といった格付けが大好きで、どうも「手に職」に安心感を求める傾向があるようです。私もサラリーマン時代の前半は・・・どの部署にもこの道数十年のベテラン社員がおり、常に出世という行列に並ばされました。このSpecialist領域は、すでに職業として確立されていることが多く、数多くの職人たちが競争相手としてひしめき合っています。
ということで、あえてレッド・オーシャンを目指す必要はないのでは、という冷静な分析からのようですね。
「セールス」か「サポーター」をススめるのは、もともとアウトソーシングが発達していたり、参入の敷居が低くて、後天的努力でどうにでもなる、ということが理由のようですが、詳細は本書のほうで。ただ、その場合も
大事なのは「他人が何を欲しがっているか?」ということです、それが時代製です。そこに自分ができることを組み合わせます。「好きなもの」ではなく「できること」です
といったことはキモに銘じておきなさい、という注意書きがありますので、覚えておきましょう。
◇副業のマーケティングのキモ◇
本書では副業のマーケティングの導入として「ペルソナ」を設定することを勧めていて、そのための「ペルソナ設定シート」も用意されてます。このペルソナ設定については、マーケティング関係の本やWebでは定番のように出ているのですが
たった一人の悩みの壊滅や願望を満たすことが、なぜ商売の広がりにつながっていくのか、不思議に思われた方もいるかもしれません。
実は自分だけが抱えている特殊な問題というのはほとんど存在せず、俯瞰して見ると、他の誰かの問題でもあるのです。したがって、一人の問題を徹底的に解決できれば、芋づる式に他の見込客の問題にもアプローとできるというわけです。
といったところで、「ペルソナ設定」の重要性が腑に落ちると思います。
さらに、このペルソナ設定を受けてビジネスコンセプトを固めるにあたっての「ABC理論」とか見込客リストであるとかが提案されているので参考なるのですが、おっと思ったのは「売るものは何でもいい」が
副業を始める前にもう一つ考えてほしい視点は「自分にとっていいものが、必ずしも売リモノに直結しない」
ということと、
マーケットイン思考になるためのポイントとは、「マーケットが求めているもので、自分が提供できるものとは何か?」という視点を持つことです。
ということで、「副業を始める」というと、まず自分の得意ワザとか好きなことに目がいくのですが、ここらはマーケット主体に気持ちを切り替えないといけないようなのですが、現実には結構努力が必要ですね。
さらに、本書では「売れる仕組み3原則」とか「セールスで稼げない人の3つの共通点」あるいは「副業のマネタイズ(収益化)の方法」、「アフターコロナ時代のセールス」とか興味深いTipsが載っているので是非原本のほうでご確認を。
このほか第5章のほうでは、副業が「会社バレ」したときの対処法とか、副業商品の値付けの方法や副業時間の捻出法も載っているので、かなり盛りだくさんな内容になってますね。
【レビュアーから一言】
本書によると
副業とは、自分の内に目を向けて、本当の自分を見つける行為のことであり、かつ会社の外へと目を向けて、自分の本当の顧客を見つける行為でもあります。
ということで、本業の収入の穴埋めのためにやむなく、こそこそやるというイメージから今の
「副業」が大きく変わっていることがわかります。
けして、国や行政が労働生産人口縮小のために煽ってくる施策のためにではなく、自分の仕事人生を再構築のため、「副業」について考えてみてもいいかもしれません。
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