癒やされカフェの店主が抱える兄弟対立の溝は埋まるか?ー清水ゆう「鹿楓堂よついろ日和」8~10

東京郊外にある、古民家風の小さな甘味処を舞台に、この店で働く4人のイケメンが、店に訪れるお客の悩みを、絶品の「菓子」や「料理」、「珈琲」を使って解決していく、癒やし系スィーツストーリーの「鹿楓銅よついろ日和(バンチコミックス)」シリーズの第8弾から第10弾まで。

構成と注目ポイント

第8巻の読みどころー鹿楓堂の効用は”癒やし”

第8巻の構成は

第37話 カラフルデイズ
第38話 スイートビターメモリー
第39話 ビジネスは時間との戦いだ
第40話 春先サプライズ
第41話 クリーム・パフ・ライズ

となっていて、第37話はシングル・オペで育児に苦労している「ママ」を激励する話です。赤ちゃんや幼い子どもの相手は不思議と「グレ」が大得意です。

育児書に載っている成長の目安に右往左往させられる新米のお母さんの心をほっこりさせる話ですね。

第39話は忙しい仕事やアポイントメントに追われて、つい心の安定を見失ってしまいそうになっているビジネスマンが、鹿楓堂のランチメニューでほっこりする話。この「角煮定食」はうまそうです。

第40話は雪におおわれた鹿楓堂の雪かきと、そのご褒美ともいえる「お汁粉」であったり、第41話は、卒業していく、いかつい先輩へ、後輩からのシュークーリームのプレゼントが巻き起こす淡い恋バナ。
第8巻は、大きな事件も怒らず、鹿楓堂のゆったりとした時間が楽しめる筋立てになってます。

Bitly

第9巻の読みどころー再びのスイーツイベントで「つばき」踏ん張る

第9巻の構成は

第42話 試練のスイーツトラップコレクション 前編
第43話 試練のスイーツトラップコレクション 中編
第44話 試練のスイーツトラップコレクション 後編
第45話 黄金色の衝撃
第46話 それぞれの選択

となっていて、前半部分はイーストサイドホテル内の名洋菓子店「白宮」を切り盛りする名パティシエ・角崎さんが、再びデパートでのイベント企画を持ち込んできます。

彼の企画は、とてもハードルが高くて、鹿楓堂のメンバーはヘロヘロになるのが常なのですが、

といった感じで挑発されると、おもわず「つばき」くんがノッてしまうのも彼の作戦どおり、というところでしょうか。もちろん、鹿楓堂のパティシエ「つばき」くんが提供する和菓子も

といった感じで、全力疾走です。この3日間の鹿楓堂メンバーの奮闘は、原書のほうでどうぞ。

第46話では、母親に連れられてやってきた兄妹の姿から、「スイ(京水)」が、兄・八京との仲に隙間風が吹き始め、ついには絶縁状態になった原因を思い起こし始める話です。京水は、成績のいい八京と違って、父親からも期待されずに育ってきたのですが、、祖父の喫茶店を継ぐという目的を見出したのですが、そのやる気が

という言葉になって、「長男」であることを意識して、家族や周囲に気兼ねして、自分のやりたいことを我慢せざるをえなかった八京の「哀しみ」に思い当たる、といった筋立てですね。第7巻の八京の「割れた茶碗」の経緯に、ようやく京水が気付く、といったところで、京水はかなり天然でKYなところがあるので、八京の悩みに気づかなかったというところです。

Bitly

第10巻の読みどころー八京は長期の海外派遣?

第10巻の構成は

第47話 記憶
第48話 ターンングポイント
第49話 心のありか
第50話 添うもの別つもの
第51話 トキメキ☆フュージョン
番外編 白熱炸裂温泉旅行

となっていて、今巻では、八京が突然会稽へ赴任することとなり、それがきっかけで、京水と八京の間にある「溝」が少しうまる筋立てになってます。

もちろん、八京の情報を鹿楓堂にリークして、このお膳立てをつくるのは「白宮」のパティシエ・角崎くんで、前巻のデパートのイベントで、「つばき」に元気づけられた「貸し」を返すという言い訳をしているのでしが、本音のところは八京と京水の仲直りの仲介がしたかっただけのような気がします。

彼から、八京の海外行きの情報を聞いた「スイ(京水)」が動揺をかかえながら、空港でフライトを待つ八京のもとへでかけ、少年時代の彼なりの「鬱屈」と、八京に対する「劣等感」を吐露することによって、二人の間の溝が、ほんの少し埋まってきます。八京の海外赴任も1年ぐらいだそうなので、その後に大きな展開があるのかもしれません。

このほか、第51話では、ツンデレ系美女と、ギャル風女子高生の「ガチバトル系魔法少女」マンガを媒介にして、グレ特製の食パンを、「つばき」が黒糖シロップを使って変化させた「黒糖フレンチトースト極」を通じた絆づくりに成功するので「箸休め」としていい味出してます。

Bitly

レビュアーから一言

第8巻から第10巻の読みどころは、なんといっても、長男ゆえに自分の好みや希望を押しつぶして、「いい子」とそて振る舞ってきた八京の苦悩と、次男で成績も芳しく無く期待されないがゆえに、祖父の技を受け継ぎ、祖父の店を復活するという夢を追い求めることの許された京水の間の「わだかまり」が溶けていくところなのですが、あわせて、この二人が象徴する、彼らの祖父と父親の「溝」のとんでもない深さを想像させます。次巻以降は、京水が仮託する「祖父」と京水・八雲の「父親」との和解もテーマになってくるんでしょうか・・・

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