イングランドの支配権をめぐり、ヴァイキングが大暴れ=幸村誠「ヴィンランド・サガ」3・4

11世紀のイングランドからノルウェー・デンマークにかけたヨーロッパ北部を舞台に、その猛々しさと強さで巨大な北海勢力圏を築き上げたヴァイキングの戦いと、アイスランド生まれのはぐれ者のヴァイキング「トルフィン」の大暴れを描いたシリーズ『幸村誠「ヴィンランド・サガ」(アフタヌーンコミックス)』の第3弾から第4弾。

前巻までで、主人公・トルフィンの父・トールズがデンマークのイングランド侵攻に参陣するヨーム戦士団に加わる途中、フローキの依頼を請けたヴァイキングの海賊・アシェラッドによって謀殺されたのですが、遺児トルフィンは父の仇を討つため、あえてアシェラッドの軍勢に加わったため、デーン人によるイングランド侵攻に巻き込まれていきます。

第3巻のあらすじと注目ポイント

第3巻の構成は

第17話 イングランドー1008年ー
第18話 イングランドー1013年ー
第19話 ロンドン橋の死闘
第20話 ラグナロク
第21話 ヴァルハラ
特別編 はたらくユルヴァちゃん

となっていて、まず冒頭では、イングランド東部の海岸地方で、イングランド兵に追われているトルフィンの姿から始まります。彼は川で気を失っているところを村人に助けられるのですが、結局のところ、ヴァイキングの先乗りとして、彼らを村へ引き入れる手引をし、助けてくれた村人を犠牲にすることとなってしまいますね。ここから、侵略者・略奪者としてのトルフィンの始まりです。

そして時は流れ、5年後、トルフィンが加わっているアシェラッドのヴァイキング軍はロンドン橋の前に布陣しています。当初、楽勝かと思われたロンドン攻略なのですが、ヴァイキングの「ヨーム戦士団」の首領・シグヴァルディの縁戚の「のっぽのトルケル」が裏切り、イングランド側についてロンドン防衛にあたったため、にわかに難しくなっています。

トルケルの裏切りは金目当てという説もあるのですが、本書では、単純に「戦がやりたい」からということになっています。

そして、トルフィンはこのトルケルとロンドン橋で死闘を演じることになるのですが、隙きをついて、彼の指を二本切り落とす健闘はみせたものの全体としてはトルケル優勢のバトルとなっています。

後半部分では、ロンドン攻略を一時諦めたスヴェン王からロンドン包囲を託された、王の次子であるクヌート王子が、トルケルに拿捕されてしまいます。ここで、王子を救出してスヴェン王の歓心をかおうと考えたアシェラッド軍や王子の側近であるラグナルの残党たちとトルケルの率いるヴァイキング+イングランド軍との大バトルが展開されるのですが、詳細は原書で。

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第4巻のあらすじと注目ポイント

第4巻の構成は

第22話 戦鬼(トロル)の子
第23話 援軍
第24話 対岸の国
第25話 ハッタリ
第26話 アルトリウス
第27話 戦士と修道士
第28話 夜間襲撃

となっていて、冒頭は、クヌート王子奪還を目論むアシェラッド軍とトルケル軍とのバトルが続いています。トルケル軍を撹乱するため、アシェラッドたちによって森に火が放たれたため、下手をすると王子が焼死する危険性もあったのですが、トルフィンによってなんとか奪還に成功することとなります。

奪還してはじめてわかったのですが、クヌート王子は、とっても弱っちい、ヘタレ王子であることが判明しますね。後にイングランド、デンマーク、ノルウェー三カ国の国王となり、「北海帝国」を作り上げた人物なのですが、そこにいたるまでにはなにか「脱皮行為」が必要なのでしょうね。

ただ、この当時、いかにヘタレ王子であるとはいっても、クヌート王子がスヴェン王の歓心を買う大事な「玉」であることは間違いないので、王子を安全に送り届けるため、ウェールズ側に迂回して進むことにするのですが、ここでアシェラッドの意外な秘密が明らかになってきます。

単にデーン人の海賊上がりの人物と思われていた彼なのですが、意外にもウェールズの貴種の血をひく人物であることがわかり・・という展開です。

巻の後半では、アシェラッド軍は、ウェールズを抜ける途中で降雪の季節となったため、デーン人の支配地域であるチェスターから本営のありゲインズバラへ抜ける道ではなく、イングランド国内のマーシア伯領のセヴァーンからダービーへ抜ける道を選択したのですが、かえって雪に悩まされることになっています。

この時、一番困るのが食料の問題なのですが、いつも犠牲になるのはヴァイキングの進路の途上にある村々で、ということでここでは村が壊滅する蛮行が繰り広げられることになります。

さらに、この蛮行がトルケル軍の追跡を呼びよせることになるのですが、その詳細は次巻で。

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レビュアーの一言

ヴァイキングものを特徴づけるのは、戦闘によって死んだものしか天国へ行けないというヴァルハラ信仰や、世界の終末思想の代表格ともいえるラグナロク信仰なのですが、本シリーズでもう一つ注目しておきたいのは、キリスト教です。このシリーズでも飲んだくれの修道士が重要な役割をしたりしているのですが、イングランドにキリスト教が伝わったのは7世紀頃とおわれているのですが、その後、侵略してきたデーン人たちによって教会は破壊され、再建されたのは、10世紀のアゼルスタン王の時といわれています。

その頃からイングランド内でのキリスト教は復権を果たしていくのですが、奴隷売買や略奪行為をやめさせるためのヴァイキングのキリスト教化にはまだまだ時間がかかったようですね。ちなみにスカンジナヴィアのキリスト教化は12世紀ころまでかかっています。

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