腎移植を悪用する悪徳官僚をぶっとばせ=「フラジャイル」13~14

臨床にでることなく、生体検査や病理解剖などを通じて、病気の原因過程を診断する専門医が病理医。都会の大病院・壮望会第一総合病院の病理部診断科長・岸京一郎と女性見習い病理医・宮崎、病理部たった一人の敏腕臨床検査技師・森井を中心に、臨床をもたずに患者を治療する病理医たちが、臨床医たちの誤診と傲慢や医療業界の理不尽に立ち向かっていく姿を描く医療コミック・シリーズ「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」の第13弾から第14弾。

前巻で、担当医の診断の間違いに気づき、治療法を診断したものの、経験不足から担当医に診断結果を信用されず結果として患者が亡くなり、大ショックを受けた宮崎医師が、今回は熱血暴走系の感染症内科医・壬生と一緒に世界初の症例の謎を解くとともに、泌尿器科の大月医師と腎移植のタブーに挑戦していきます。

あらすじと注目ポイント

第13巻 ヘタレ病理医・宮崎は、腎移植の推進に一役かう

第13巻の収録は

第50話 世界初の症例 第51話 ガイドライン 第52話 越境者 第53話 矛盾

となっていて、冒頭話では、感染症内科の壬生医師から肺組織の中に多数のダニがいる生検が持ち込まれるところから始まります。猿や熊ではそういう症例はあるのですが、人間ではまだ一例も発見されておらず、世界初の症例に、壬生と宮崎は沸き立つのですが、という筋立てです。

まあ、ネタバレ的には、その後、宮崎医師がダニがいるにもかかわらず肺組織に炎症がおきていないことを見つけて、ある人為的なミスに気づくのですが・・という展開なのですが、この壬生医師が次話からの腎移植編で宮崎たちを追い詰める引き金をひいてしまうことになります。

後半からの腎移植篇は、宮崎医師が泌尿器科の大月医師に地下搬入口に呼び出されるところから始まります。彼は自分が依頼した病理診断について「万が一、何かがあった時は、何も知らなかった、と言うんだ」と謎の言葉を告げるのですが・・というスタートです。

実は、この大月医師は、移植のガイドラインすれすれの腎移植を今までも施術していたのですが、今回、病理医がいつもの岸ではなく、宮崎に替わったため、あえて念押しに来ていた、というわけ。最初、そのあやうさにビビり、さらに壬生医師の助言もあって協力を拒もうとした宮崎だったのですが、今回の移植患者・源生あみるの事情、かつて母親の腎臓を移植して不適、今回、ガンにかかっていた父親の腎臓を移植しないと人工透析にならざるをえない、という事情を聴いて大月に協力を申し出るのでですが、父親からの移植手術でも再び拒絶反応が出現してしまいます。

さらに壬生医師の厚生労働省へのチクリによって本省の万城目特別査察官が緊急の医療指導監査に入ってきて、壮望会が腎移植から撤退しなければ、診療報酬の特別監査を実施した上で、特定機能病院指定も取り消すという脅しをかけてきます。

「あみる」の移植手術で出現した拒絶反応が実は拒絶反応ではないのでは、と診断した宮崎の意見を確かめるため、各科の臨床医たちが過去の症例や論文の大捜索に取り組む一方で、岸は万城目の横暴を阻止するため、ある禁断の手を使うのですが・・という展開です。

第14話 腎移植を悪用する悪徳官僚をぶっとばせ

第14巻の収録は

第54話 10割の診断 第55話 巡り合い 第56話 寸秒を争う 第57話 鼓舞

となっていて、最初の「10割の診断」で、腎移植編の決着がつきます。岸は間瀬の医薬新聞でのコネクションを使って、大月医師の腎移植の賛同記事を出させ、擁護キャンペーンをはろうとするのですが、万城目は意に介さず、壮望会への圧力を強めてきます。そこに何か理由があることに気づいた岸と間瀬は万城目の「悪事」をある機関に通報し・・という展開です。

さらに、病理診断のほうも宮崎医師の見立てが間違いないことが証明され、移植治療が好転していきます。見立ての自信を大月医師に聞かれ、「10割です」という宮崎医師の顔は、以前の巻で経験不足を問われて涙した時とうってかわって自信に溢れています。

中盤以降は、学会にでかけ壮望会病理を留守にしている宮崎医師の担当症例も含めて、岸が穴埋めをしています。病理診断を一人でやったため夜遅くまで仕事をした岸は、昼間に外科で診てもらったものの足の腫れが悪化して緊急外来にやってきた患者に出くわします。救急医の倉木は岸に検査を依頼しようとするのですが、その患者は外科医の一村が投薬で治ると診断したのだから検査は必要ない、と拒否します。もし壊死性筋膜炎であれは一刻を争う事態なのですが、患者の思いは・・という展開です。

毎日の多忙さから、機械的な診療に陥っていた外科医の一村が脱皮する物語です。

そのころ、宮崎医師は学会でベテラン女性病理医に出会って刺激を受けたり、唯一の後輩・布施ちゃんからライバル宣言されたり、充電しっぱなしなのですが、まあたまにはこういう時もないと燃え尽きてしまいますよね。

レビュアーの一言

第13巻で腎移植の件数が少しづつ増えているのが朗報、といって大月医師からどやしつけられているザッキー(宮崎医師)なのですが、彼女の発言の1600例ぐらいという数字から見ると2014年ぐらいの頃の時代設定でしょうか。

腎移植の件数は2014年に1606件だったのですが、その後じわじわ伸び2019年には2057件と2000の大台にのってきています。

ただ、新型コロナウィルスの影響のせいか、2020年には1711件と再び減少している状況です。今後、コロナウィルス前まで復活するかどうか、こちらもアフター・コロナがどうなるか気になるところですね。

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