アイルランドの貧乏少女・アメリアはセントルイスでイザヤの秘密を知る=北野詠一「片喰と黄金」6

土地のほとんどをイギリス人の地主たちに所有され、慢性的に食料不足の状態におかれている状況の重ねて、人々が主食にしているジャガイモの伝染病で国中が飢饉となったアイルランドから、ゴールドラッシュのアメリカへ一攫千金を狙ったやってきたアイリッシュ少女・アメリアとその従僕・コナーの冒険を描く「片喰と黄金」シリーズの第6弾と第7弾。

前巻で南部ケンタッキーでの黒人の逃亡劇の巻き添えをくって大怪我を負い、さらにアイルランドからいつも一緒だったコナーと離れ離れになったアメリアだったのですが、次にやってきたシンシナティで、西部行きに反対する教師あがりのエリ・ブルームフィールドの旅の参加をめぐる騒動に巻き込まれていきます。

あらすじと注目ポイント

構成は

第23話 シンシナティ②
第24話 インディアナ
第25話 セントルイス①
第26話 セントルイス②
第27話 セントルイス③

となっていて、冒頭は、シンシナティの街角で知り合った、アメリアたちの西部行きを、小さな少年少女が危ないことをしでかそうとしているとして、止めようとしているエリと彼の妹との、西部行きを賭けてのギャンブルが描かれます。

前巻の最後で、上から目線でアメリアの西部行きに反対していたエリなのですが、実は彼自体、理想の学校ををつくろうとしたものの、勉強嫌いの生徒や、理解のない父兄、そしてエリにやろうとすることに全く理解を示そうとしない両親や親戚や知り合いの中で、「心折れてる」状態であることがわかります。

ここでエリを誘惑して西部で連れて行こうとしていると邪推するエリの妹の代理人・ハイラムとアエリアの間でエリの西部行きを賭けて、ポーカーに似たカードゲーム「ブラグ」の勝負が始まるのですが・・という展開です。

どうも、ルールを見ると、手札の開示はほとんどない、ブラフとメンタルの強いほうが勝つ、というカード・ギャンブルのようなのですが、こうした心理戦に昔から鍛えられていたアメリカ人のメンタルの強さは半端ない感じがしています。バブル崩壊後の自信をなくした日本の企業人が叶わなかったわけが分かったような気がします。

そして、そのアメリカ人の典型のようなハイラムとアイルランド少女・アメリアとのギャンブル勝負は意外な結果を呼び込むことになって・・という展開です

中盤では、アメリアを銃で撃ってしまったトラウマを癒すため鉄道技師のジェダ夫妻と先発したコナーたちは、イザヤの旅を全面的にバックアップしているセントルイスのラルフ・ホーキンス邸の世話になることとなります。
ここで、アメリアを撃った精神的なショックから立ち直れないコナーを元気づけるため、レスリングやらをしかけるのですが結局不発に終わります。
さらに大陸横断鉄道敷設の夢を叶えるため、ジェダ夫妻はここでコナーと別行動をとることなるのですが、ここらが後でまた混乱を増幅することとなりますね。

そして、ジェダ夫妻やコナーが旅立ってから数日後にアメリアやイザヤたちがホーキンス邸に到着するのですが。ここでアメリアはイザヤが他人と距離を置く人格となってしまったわけや、それに関わって、ラルフがイザヤの自由な旅を支援している理由を知ることになるのですが、それはイザヤの両親の不幸な死に関わっていて・・という展開です。
まあ、ここでラルフの財産に目が眩んだアメリアが暴言を吐くのですが、ここは彼女の素直すぎる性格に免じて許しておきましょう。

さらに、ラルフがイザヤに対して負い目を感じているあることをばらしてしまうのですが、コレラに罹患していることがわかり・・ということで次巻へと続いていきます。」

Bitly

レビュアーの一言

本シリーズでは駅馬車に乗ってスルーしてミズーリ州にあるセントルイスに向かってしまわれる状態の「インディアナ」なのですが、南北戦争時には全体の帰趨に大きな影響をもっていたなど、意外に侮れない「州」です。州名の由来は「インディアンの土地」を意味してたそうです。アメリアが旅をしていた当時はドイツ人やアイルランド人の移民が数多く流入していたようですので、もしアメリアたちが立ち寄っていれば、なにかエピソードが生まれていたかもしれません。

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