ローズは新ヘアスタイルで宮廷にのりこむー「ローズ・ベルタン 傾国の仕立て屋」5

フランス革命期に、ルイ16世の王妃・マリーアントワネットのモード商を務め、40年間にわたってフランス宮廷、すなわちフランスのファッションをリードした平民出身の女性ファッションデザイナーの元祖「ローズ・ベルタン」の成り上がり物語を描く『磯見仁月「ローズ・ベルタン 傾国の仕立て屋」』シリーズの第5弾。

前巻でマリー・アントワネットとルイ15世の公妾・デュ・バリー夫人との間で繰り広げられていた「あいさつ戦争」を、アントワネットがフランス入りした時の衣装を仕立て直したドレスを使って集結させた見返りに、デュ・バリー夫人の援助で自分を店をオープンさせたローズが、宮廷の奥深くにさらにその力を伸ばしていくのが本巻です。

構成と注目ポイントーベルタンは宮廷へ進出

構成は

21針目 髪型の神様
22針目 仮面舞踏会
23針目 ケサコ
24針目 共闘
25針目 サンティマン・プフ

となっていて、まずはローズ・ベルタンがパリのサン・トノレ通りに開店させた仕立て屋「オ・グラン・モゴル」の大繁盛の様子から始まります。「オ・グラン・モゴル」というのは「大ムガール帝国」という意味で、ルイ14世の頃からフランスで流行していた「東洋趣味」をガッツリと入れた感じの店仕立てのようですね。

そして、ここに訪れてくるのが、この店の出店にあたって大スポンサーとなったでゅ・バリー伯爵夫人で、彼女はベルタンが密かに想っている髪結師のレオナールの結婚といった近況を知らせてきます。この物語上は、デュ・バリー伯爵夫人が大スポンサーになっているのですが、史実的には後にオルレアン公爵となるシャルトル公夫人のパンティエイーヴルが大スポンサーであったようですが、物語的には、マリー・アントワネットやルイ16世の対抗勢力であった、デュ・バリー伯爵夫人やオルレアン家にローズ・ベルタンが食い込んでいる設定なので、彼女の権力への貪欲さを表している感じがよいですね。

そして、ローズの次の目標である、王太子妃のマリー・アントワネットの調略は、レオナールの弟が兄の「頼み」としてもってきた当時の伝説的ファッション誌「婦人の雑誌(ジュルナル・デ・ダム)の復刊とともに発表した「ケサコ(それは何)」風髪型」や

王太子妃付きとなっている髪結師レオナールと共同制作した「愛着風髪型(サンティマン・プフ)」で、宮廷内の女性たちの関心を一手に集め、これを足がかりに、まりー・アントワネットのモード商、つまりはアントワネット付きのファッションコーディネーターへの階段を登り始めます。

ここの場面ででてくる髪型は歴史の教科書とかで宮廷文化の「頽廃」の象徴のように描かれる高さの「バカ高い」髪型で、目立とうとすればでかくなったり、高さを高くしたりというのは、フランス宮廷も日本の「紅白歌合戦」も変わらないようです。

一方、マリー・アントワネットのほうは、フランス宮廷内の彼女の足を引っ張る勢力もおとなしくなり、ルイ16世との仲もまずまず。民衆も新しい王太子妃へ称賛の声をあげているといった具合で、一応平穏無事な宮廷生活が進行しています。しかし、「好事魔多し」の言葉通り、遊びにでかけた仮面舞踏会で、あのスウェーデン貴族・フェルゼン伯と出会っています。「ベルばら」などでおなじみのようにアントワネットとの悲恋物語の開始ではあるのですが、このフェルゼン伯は、一時期勢いを失っていた北欧の強国・スゥェーデンを再興したグスタフ3世の忠実な臣下と外交政策の一翼も担った人物ですので、単なる「イケメン」として考えていては危険な気がいたします。

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レビュアーの一言ー貴族たちの最後の輝きの時

ルイ15世の治世の終わり頃、王が自ら言ったのではないのでしょうが「朕の後には大洪水がくるであろう」という言葉が流布していた、という話があります。オーストリア継承戦争や七年戦争などので莫大な軍費を使いながら、多くの植民地を失うなど、彼の晩年には国力がかなり低下しています。さらに、国内的にもパリ高等法院との対立で国王の権威を傷つけられるなど、フランスは、あちこちに瑕のみえる状態になっていたようです。
マリー・アントワネットを筆頭にした貴族たちにとっては、このあたりが陽が落ちていく前の最後の輝きを見せる時代であったのかもしれません。

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