アシリパは他勢力と決別し、独自の金塊探しを誓うー「ゴールデンカムイ」20〜21

アイヌの娘「アシリパ」と日露戦争の生き残りで「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一たちが、極東アジアを舞台に、幕末の新選組の生き残りの土方歳三や日露戦争で頭蓋骨の上半分を失った情報将校・鶴見中尉率いる第七師団を相手にアイヌ民族が明治政府打倒のために集めていた大量の金の争奪戦を繰り広げる明治のゴールドラッシュストーリー『野田サトル「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミックス)』の第20弾と第21弾。

亜港監獄から脱獄したソフィアに出会うことで、金塊の隠し場所の暗号の鍵を思い出したアシリパたちは日本への帰還を目指して樺太を南下し、鶴見中尉たちの本隊との合流を果たすのですが、そこでアシリパの決断が問われます。
そして、北海道のほうでは、刺青人皮をめぐる土方一派と第七連隊との争奪戦が激化を始めています。

第20巻 登別温泉で刺青人皮の争奪戦始まる

構成は

第191話 故郷の水
第192話 契約更新
第193話 登別温泉
第194話 硫黄のにおい
第195話 有古の庭
第196話 モス
第197話 ボンボン
第198話 音之進の三輪車
第199話 坂の上のロシア領事館
第200話 月寒あんぱんのひと

となっていて、前巻で命を落としたキロランケを雪原に埋葬し、北海道への帰還を目指します。

亜港監獄近くの雪原でアシリパを撃とうとした尾形は、アシリパの毒矢で目を負傷した状態で連れてきているのですが、ここにきて傷の状態が悪化してきています。彼の背後関係について聞き出すことがあるため、町の診療所での治療をすることを杉元が決断するのですが、これが裏目。尾形の逃走を許してしまうこととなります。

この尾形の逃走の際、彼からかけられる「ボンボンが・・」という言葉によって、鯉登少尉の封じていたトラウマが蘇ってきます。それは海軍軍人の家に生まれつつ、優秀な兄への劣等感に悩み続けてきた彼の黒歴史なのですが、それを克服したきっかけが父親の赴任地である鹿児島で鶴見中尉に出会い、さらに次の赴任地の札幌で鯉登少年がロシア人の強盗殺人犯に誘拐されたのを鶴見に救出されたこと。それ以来、彼をずっとリスペクトしてきたのですが、ここで「尾形」の言葉によって、その誘拐犯の正体についてある疑惑が・・という展開です。

一方、北海道のほうでは、登別温泉で、第七師団の宇佐美上等兵、二階堂一等卒、菊田特務曹長、有古一等卒といったメンバーが傷の治療のため湯治中ですが、ここに都丹庵士を筆頭に、土方一派に属した盲目の盗賊団たちが、按摩として潜り込んでいます。彼らは、マッサージ治療を第七師団兵士に施しながら、情報を盗んで土方たちに通報していたのですが、正体がバレそうになってきたため、菊田と有古を始末しようと動き始めます。

都丹たちは、菊田と有古を夜中に外におびき寄せ、暗闇の中で二人を始末しようと企みます。本来、暗闇の中の勝負は圧倒的に都丹たちに有利なはずなのですが、真っ暗闇になる新月の夜を待たずに決行したことが災いします。
さらに有古が八甲田山の捜索隊で冬山の経験豊富なことと、登別周辺を庭のように過ごしたアイヌの村生まれといったことも味方し、都丹を雪崩の頻発地域におびき寄せられ逆襲されてしまいます。

有古は、この戦闘で得た「都丹の刺青人皮」を菊田たちのところに持ち帰るのですが、ここにはある仕掛けが隠されています。

Bitly

第21巻 アシリパは鶴見中尉の野望を見抜き、独自路線へ進む

構成は

第201話 あばよロシア
第202話 狙撃手の悪夢
第203話 似顔絵
第204話 残したいもの
第205話 シネマトグラフ
第206話 ふたりの距離
第207話 塹壕から見えた月
第208話 限りなく黒に近い灰色
第209話 ケソラプ
第210話 甘い嘘
第211話 怒りのシライシ

今巻の前半ではロシア国境付近でアシリパたちを待ち伏せしていたロシア人スナイパーが登場します。

彼は「尾形」への復讐を狙っていて、彼をおびき寄せるために白石を狙撃。白石を餌に尾形と仕留めるつもりだったのですが、尾形はすでに逃亡中のため失敗。これ以降、アシリパたちの後をついてきて尾形への復讐の機会を狙うことになります。

また亜港で行方がわからなくなっていたソフィアと彼女の一味も健在であることが判明。彼女たちもキロランケの仇討ちとキロランケ・ウィルクの夢を実現するために北海道を目指していることが明らかになります。

そして、アシリパたちは、登別温泉でのミッションを済ませた後、樺太へやってくる鶴見中尉たちの本隊と合流して北海道へ帰ることとなり、「豊原」で待機を始めます。

鶴見中尉の「登別温泉でのミッション」というのは、残りの「刺青人皮」の捜索と、土方一派が持っている「刺青人皮」をどう奪うかということ。このため、登別温泉で都丹の探索にあたった「有古一等卒」を二重スパイに仕立てて、土方一派を出し抜こうと画策するのですが、幕末 をくぐり抜けた土方と永倉はそのあたりはお見通しのようで、次巻以降も両者の騙し合いが続きそうです。

アシリパの方は、樺太に来て様々な部族の「文化」が消えていこうとしていることや、父・ウィルタが少数民族やアイヌの文化を守ろうとしていたことや、そのための極東連邦国家のことを知り、金塊への関わり方やこれからの行動について迷い始めています。杉元は金塊探しから脱落して、アイヌの村で暮らしていてほしいようなのですが、彼女がどう判断するか、というのがこの巻の焦点です。

そして、大泊で鶴見中尉たちと合流したアシリパは、自分が杉元や白石と引き離されて隔離されることや、鶴見中尉に彼の考える「未来」でのアイヌの位置づけを聞き、金塊がアイヌのために使われないことを知ります。さてアシリパの決断は

ということで・・と展開していきます。ちなみに、アシリパに会った鶴見中尉は脳漿の流出が止まらなくなってしまいます。ウラジオストックで死んだ自分の妻子やウィルタ、キロランケのことが思い浮かんだのでしょうが、彼らにどういう感情を抱いているかは読めないところです。

Bitly

レビュアーの一言>チカパシは樺太へ残り彼の「家族」をつくる

谷垣をリスペクトして樺太までついてきたチカパシは、ここで樺太アイヌのエノノカとヘンケのもとへ残ります。すでに二瓶の飼い犬で今はチカパシの飼い犬のようになっている猟犬の「リュウ」はすでにエノノカたちの村の犬ぞりの先頭犬に昇格してこの地に残ることになっているので、まあ必然の行動なのかもしれません。二瓶の形見の銃を谷垣から譲られたチカパシの姿は立派な「独り立ちした男」の姿です。

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