「DX進化論」=DXは何を変えたか?、DXの未来はどこを目指すか?

新型コロナウィルスが感染拡大によって今までの価値観やシステムが大きく揺さぶられたせいでしょうか、多くのメディアの中で「DX」という言葉が流行病のようにあふれ出したのですが、新型コロナウィルスの沈静化とともに、いつの間にかひところの熱気が拡散し、その方向性もさまよい始めているような気配が漂い始めています。

ただ、オンラインや仮想空間へのシフトという動きは実は勝手に進行していて、私たちにネットで「つながらない」という生活の選択肢はすでにないように思えていて、「DX」の必要性や重要性はむしろ高まっているといってよく、ここらでアップデートしておかないと時代から取り残される可能性大です。

このDXという課題の現在と未来について、「尾原和啓」「宮田裕章」「山口周」というこの分野をリードする論者三人による「鼎談」と各人のプチ考察を収録した本書『尾原和啓×宮田裕章×山口周「DX進化論 つながりがリブートされた世界の先」(MdN)』です。

構成と注目ポイント

構成は

Chapter1 DXは世界をどう変えたのか
Chapter2 私たちはネットの中でつながっている
Chapter3 「生きる」をリ・デザインする
Chapter4 世界はどこへ向かうのか
Last Chapter「進化するDX」後の世界

となっていて、

①DXは世界をどう変えたのか?
②私たちはネットの中でどうつながっていくのか
③「生きる」はどうリ・デザインされるのか
④世界はどこへ向かうのか
⑤さらに「進化するDX」後の世界とは?
(本書「はじめに」より)

がそれぞれのChapterで語られていく構造となっています。

まずChapter1で注目すべきは、中国をはじめとした諸国で起きた「一回性」からの転換で、中国のDiDiの配車サービスで見られた運転士の意識変化で、これは「アフターデジタル」あたりでも紹介されているのですが、騙したもん勝ち、やったもん勝ちという「観光地の誤謬」がもつ一回性の誤謬から、「デジタル・テクノロジー」によって逃れる可能性がでてきた、というところでしょうか。

このことと、尾原和啓さんがChapter2の鼎談でいっているような

私は今シンガポールにいるんですが、それは日本という社会システムではなく、Facebookという社会システムの方が、私にとていきやすいと思ったから。だから5年前に国をです決断をしたんです。

ということをあわせると、すでに仮想的な空間で、電子的な「信頼性」を基礎に生きていくという暮らし・社会がすぐそばに来ているのかも知れません。となると、コロナ禍が沈静化し始めると早速息を吹き返したリアルな「オフィス」ワークに再シフトしたビジネス戦略や(C-netの記事によると、都会に住むビジネスマンの3割が、リゾートワークや地方への移住に興味をもっているという統計がでているようですが)リゾートワークをきっかけにあわよくば定住人口増を狙おうという地域活性化戦略は、やはり、ちょっと先行きをこの動きにあわせておいたほうがいいですね。

「国」「組織」「場所」といった考えが、おおきく流動化、浮遊化していく社会がきそうなのは間違いないようです。

そこで、俗っぽくいくと、こういった社会の前提をもとに、どう立ち回ったらいいのということについては、Chapter4で山口周さんのいう

仕事のない時代において宮家や公家は何をやるのか。
ここで、それぞれの領域が発生するんです。例えば山科家は、服の調達や装束の仕立てでした。
(略)
そこで当時の宮家や公家がどういう領域でそれぞれの仕事をやっていたのかがわかると、それを価値のエッセンスまで掘り下げたら、たぶん21世紀、22世紀のビジネスのヒントがあるという気がしたんですよ。

であったり、

私たちの社会で、これからリモートワークは常態化していくことになると、副業と兼業がなし崩しになっていくと思うんですね。そこは、社会資本を会社の外側に貯めていくということ考えると、すごく良い環境ができている、という気はしています。

と言った言葉が、おぼろげながらヒントになってくるのかもしれません。

ただ、あわせて、

私たちは何か大きなものを作り出そうというとき、そこに設計図が必要だと考えます。設計図がないと動けないと思っている。では、未来社会の詳細な設計図が描けるかというと、そんなものは描けるはずがありません。
(中略)
ここで私たちが自分にかけている呪いは「何かを変えようと思ったらまずは設計図が必要だ」という言葉です、しかし、この考え方は「描く人」と「作る人」との分業が明確になった近代になって成立したもので、人類の歴史の大半において、人間は、詳細な設計図などなしに巨大なシステムを作り上げてきています。

とも指摘されているので、何事も先手をとるよう計画づくりにこだわる傾向の人は、ご注意くださいね。

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レビュアーの一言

本書は「DX」と言う言葉を冠しているのですが、管理人的には、最先端のテクノロジーを背景に、これからの社会やビジネスをどう変えていくか、テクノロジーは進化しているのに、私たちの意識はなぜ変化していかないのか、といったところまで及んだ議論の場の記録と言った具合にとらえておくべきでしょう。中には、日本の県別に「こういう生き方をしたい人はうちに来てください」といった一国多制度構想のようなとんがりすぎた話もあるのですが、それもまた良し、というところかと思います。

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