ハルピンの二大ボス斃れる。そして次のターゲットは満州旗人=門馬司・鹿子「満州アヘンスクワッド」7・8

第二次世界大戦前、中国東北部に徒花のように成立した国家「満州国」を舞台に、その闇を支配しようとする日本陸軍の「関東軍」、中国の闇組織「青幇」、革命政府に対立する無法組織「ロシアン・マフィア」に対抗して、独立した犯罪組織をつくろうとする「日下勇」や「麗華」「リン」たちの活躍を描くクライム・ストーリー『門馬司・鹿子「満州アヘンスクワッド」(ヤングマガジンKC)』シリーズの第7弾から第8弾。

前巻でハルピンで麗華の策略でロシアン・マフィアと青幇が本格的に噛み合い始め、双方の勢力の削り合いが始まった「哈爾濱(ハルピン)」篇に決着がつきます。そして、この抗争の中で青幇のボス・憑英九によって狙撃されて負った大怪我の治療のため行った吉林
で、旧清朝時代の支配階層だった満州旗人をターゲットにしたビジネスが始まります。

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第7巻のあらすじと注目ポイント

第7巻の構成は

第五十四話 悪魔再来
第五十五話 悲しみの銃
第五十六話 夢
第五十七話 現実と信念
第五十八話 新拠点
第五十九話 満州旗人
第六十話  俥引きの旗人
第六十一話 引き金の破片
第六十二話 初期投資

となっていて、火をつけられ混乱する白系露人事務局からニーナとナターシャを救出しようするバートルに、ハルピンの青幇のボス・憑英九が手下とともに襲ってきます。前巻の最後半で、ロシアン・マフィアの頭目・ロジャエフスキーが車で崖から転落死しているので、ここで一気にロシアン・マフィアの根拠を潰してハルピンの支配権を握ろうという魂胆ですね。

マシンガン片手にバートルたちを圧倒する憑英九なのですが、彼の野望を砕く一弾が思わぬところから撃たれます。それは弟を誘拐された恨みを抱える、あの少年で・・という展開です。憑英九はここで今までの旧悪を一挙に精算させられた格好ですね。そして、この戦闘後、キリルが新たに麗華と勇たちのパーティーに加わることとなります。

ここで舞台は「吉林」に展開します。闇医者「クワン」によって傷も随分癒えてきた麗華だったのですが、彼らを追って奉天から関東軍の憲兵隊伍長・長谷川圭人がやってきます。勇のつくる「新阿片」摘発のため、聞き込みを始め、クワンの闇診療所にいきついたというところです。。

一方、麗華のほうは、傷の治療代に上乗せして「六千圓」の報酬を提示して、クワンの酒場の裏の倉庫に新拠点をつくります。
彼女の狙いは、清朝滅亡後、ここ吉林に逃れてきている、かつての中国の支配階級「満州旗人」にビジネスの網を広げようというもの。ここで、その手先となっていく、満州旗人の「大臣」家の奉公人である「ハオティエン」と彼の憧れの人「神美(シェンメイ)」の淡い恋物語が描かれるのですが、詳しくは原書で。

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第8巻のあらすじと注目ポイント

第8巻の構成は

第六十三話 肉薄の追及
第六十四話 漢人からの礼品
第六十五話 陥落
第六十六話 饅頭
第六十七話 潜入
第六十八話 模倣品
第六十九話 没収
第七十話  裏切り者
第七十一話 旗人の饗宴
第七十二話 支え

となっていて冒頭では関東軍憲兵隊の長谷川伍長がクワンの酒場に乗り込んでくるところから始まります。なんとか彼の追及をごまかすクワンだったのですが、ここから長谷川の本格的な捜査が始まります。

まず手始めは、抗日戦線のゲリラの一人を妻娘を人質にとってスパイに仕立て、クワンの診療所へ潜入させます。拷問を加えて怪我をさせ、クワンの闇病院に入院させて内部事情を探ろうという作戦ですね。クワンやリンの目をどうごまかして情報を掴んでいくかの詳細は原書のほうでお確かめください。

一方、麗華から多額の報酬を提示され、シェンメイの窮乏を助けるため「満州旗人」たちへのビジネス拡大の尖兵となった「ハオティエン」は、まず彼の主人をターゲットにします。彼の主人は安物の骨董品を、自家の先祖伝来の秘蔵品だと偽って中国人や日本人に売りつけて大儲けをしていたのですが、ここに麗華がつけこんだわけですね。贈り物と称して勇のつくる「新阿片」の虜にした上で、評判を近くの富裕な満州旗人に広め、そこから満州旗人の上流階級へと広げていきます。

麗華の闇ビジネスに手を貸すことに罪悪感にかられる「ハオティエン」だったのですが、憧れのシェンメイが家の借金のため、身を売ろうとしていることを知り、とうとう麗華にがっちりと取り込まれていきます。

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レビュアーの一言

「吉林」篇で、新しいターゲットとなるのが、「満州八旗」の末裔である満州旗人たちで、彼らの歴史的な経緯は第7巻の中盤に書かれているのですが、この物語の当時はすでに中華民国政府の成立で支配階層を追われ、姓名も「漢族」化が進んでいった時代です。
満州族の多くは瀋陽や大連のある「遼寧省」に居住しているようですが、この物語では吉林省にも、満州旗人たちの一大居住地がある設定となっています。

満州旗人たちには、全盛期には「旗地」とよばれる農地が支給されていたそうですので、吉林周辺に旗地をもつ貴族たちがまとまって住んでいる、という設定かもしれませんね。
いずれにせよ、清朝期には人数も少なく様々な特権が与えられていた階層ですので、ボツ託したとはいえ、多額の財産を抱えた人々もいたはずで、そこに麗華が目をつけたということなのでしょう。

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