室町時代のダンス・キング「世阿弥」登場=三原和人「ワールド イズ ダンシング」1・2

朝廷と武家がそれぞれ二つの勢力に分かれた争った「南北朝」時代と、戦国大名が互いに領土の拡大を目指して戦いあった「戦国時代」の間の室町時代は、農業生産力があがり、それに伴って商工業も隆盛となり、このおかげで後世に影響を及ぼす「文化」が華開いた時代でもありました。

その中で、大和の猿楽の名役者・観阿弥の子供として生まれ、観世流猿楽を集大成して、後々、日本の舞楽の大流となった「能楽」として昇華させた「舞」の芸術家・世阿弥を描いたシリーズ『三原和人「ワールド イズ ダンシング」(モーニングコミックス)』の第1弾から第2弾を紹介しましょう。

あらすじと注目ポイント

第1巻のあらすじと注目ポイント

第1巻の構成は

第一話 よい!
第二話 身体(からだ)
第三話 YARUSENAKIYOの乱舞
第四話 血の気
第五話 君が好き」
第六話 虹の
第七話 喰う
第八話 新熊野(いまくまの)①

となっていて。冒頭では、大和の猿楽の名優。観阿弥の息子に生まれながら、そのぼんやりした振る舞いから、周囲から侮られている「世阿弥」の姿から始まります。

彼は、自らの家業である猿楽の「舞」の良さがや必要性がまったく理解できず、舞の練習もそっちのけであちこちをほっつき歩いているのですが、ある時、町外れのあばら家で、今は落ちぶれてしまった白拍子の舞を見て、衝撃を受けます。

その女は、かつては白拍子として室町将軍の前で踊ることを夢見ていたのですが、望み叶わず、今は身体を売って暮らしているのですが、その彼女のたった一つの「身体」を武器にした踊りに魅せられていくのですが、その後、その女は貧しさによる病で死んでしまいます。

そして、その女を一人河原で弔う世阿弥は、一つの極意を会得し・・という展開です。

巻の中盤では、市場で商人見習いをしている片腕の少女「サツキ」と知り合い、彼女の人形を売る商売を手伝いながら、ここでも「舞」の技を身に着けていくこととなります。

そして、後半部分は、父の観阿弥が将軍の前で舞う「新熊野」の勧請猿楽の「翁」の舞の助演を務めることとなるのですが、肝心の本番では緊張のせいが踊りのキレが悪く、観衆たちからはブーイングの嵐で・・というとこで次巻へ続いていきます。

ちなみに「新熊野」は現在の京都市東山区にある神社で、後白河法皇が自らの御所の領域内に熊野権現を勧請したのが始まりといわれている神社で、能楽発祥の地といわれています。その所以は本シリーズで明らかになってきます。

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第2巻のあらすじと注目ポイント

第2巻の構成は

第九話 新熊野②
第十話 新熊野③
第十一話 新熊野④
第十二話 新熊野⑤
第十三話 三条坊門
第十四話 まだ
第十五話 立つ鳥
第十六話 自己紹介
第十七話 鉢木
第十八話 横溢

となっていて、前半部分は、第1巻に引き続いて、新熊野猿楽勧請の場面です。ここで、「翁」を舞う父・観阿弥の舞の大きさに圧倒される世阿弥なのですが、舞の秘伝を記したと言われる「翁の書」が秘蔵されているという噂を信じて、神社のあちこちを探しているうちに、社殿内で女性とまぐわっている男と出会います。彼から「翁の書」の所在を聞かされるのですが、それは真っ赤なウソで、と翻弄される世阿弥の姿がコミカルに描かれるのですが、これが将軍・足利義満に世阿弥が見出され、重用される第一歩となっていきます。

新熊野猿楽勧請での舞は義満に気に入られ、世阿弥は御所へ上がることとなるのですが、曽の際、観阿弥の弟子たちとの間で少々諍いがおきます。まあ、名門の嫡男として生まれ、時の権力者に気に入られ、という恵まれすぎの境遇への嫉妬も混じってのことですが、のほほんと上昇気流に乗っていく世阿弥と下積みの役者たちとの落差を感じてしまうシーンです。

そして、御所に上がったところで、世阿弥は、彼のライバルとなる田楽新座の増次郎、後の「増阿弥」と出会うこととなります。彼は世阿弥を重用した三代将軍・足利義満の次代将軍・義持に重用され、世阿弥の人気を脅かしてくこととなるのですが、それは少し後の時代の話となります。

ここでは、義満の御所内での騒動を鎮めるため、田楽新座の増次郎と、猿楽の鬼夜叉(世阿弥)との間の舞の勝負が催されることとなります。それを聞いた増次郎の態度は初対面のときとは違って、高慢な様子で・・と彼の敵役キャラが炸裂していきます。

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レビュアーの一言

第二巻の後半部分では、世阿弥の才能を見出した足利義満が、彼を評して近習に

とつぶやくシーンがあります。

一見、破天荒な遊び人というイメージを出している足利義満なのですが、数々の政変を生き延び、最終的には南北朝の対立を収拾して、自らのもとに権力を集中させるといった政治的な部分とあわせて、武家と公家と禅宗を綜合した北山文化の保護者となるなど、多種多様な面を持っていたことが伺い知れる場面ですね。

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