新九郎と伊都は龍王丸の家督相続を勝ち取るが、前途多難は続く=ゆうきまさみ「新九郎奔る!」12

戦国時代の「下剋上」の典型として、堀越公方足利政知の息子・茶々丸を攻め滅ぼして「伊豆」を我が物にしたのを皮切りに、関東管領の上杉氏の家臣から小田原城を奪い取り、その後、相模国を領土とし、戦国大名の魁といわれる「北条早雲」の若き頃の姿を描く『ゆうきまさみ「新九郎奔る!」』シリーズの第12弾。

前巻までで、駿河守護の今川義忠の戦死に伴う、義忠の従兄弟・今川新五郎と、姉・伊都の子・龍王丸との家督争いに巻き込まれ、京都と駿河を往復し、関東の雄・太田道灌に翻弄されながら調整を続けてきた新九郎だったのですが、政情不安と大御所・義政の気まぐれにも助けられ、本巻で一定の成果が見えてきます。

あらすじと注目ポイント

構成は

第七十三話 裁定
第七十四話 新五郎の苦渋 その1
第七十五話 新五郎の苦渋 その2
第七十六話 複雑怪奇 その1
第七十七話 複雑怪奇 その2
第七十八話 それぞれの道 その1
第七十九話 それぞれの道 その2

となっていて、冒頭で、伊都が幕府に提出していた、今川義忠から龍王丸への家督の譲状についての足利義政の裁定が下ります。この時期、将軍位はすでに義政の息子の義尚に譲られているのですが、実権のほうはまだ義政ががっちりと握っている状態ですね。

新九郎は家督相続をめぐって大御所の不興をかったままですし、龍王丸を後押しする有力者たちも義政の父が三十五年前の今川家の家督争いに下した裁定に従わなかった者が多い上に、龍王丸はまだ幼児ということで、家督相続にはアゲインストの風ばかりなのですが、なんとか最低限のところはクリアすることができます。

この裁定を受けての、駿河での今川新五郎と彼の支持派との家督相続と領地支配の交渉はかなり難航するのですが、都で「交渉事」に慣れた新九郎の手管が発揮されるところなのですが、詳細は原書のほうで。

ただ、ここで今川新五郎と交わした約束の履行をめぐって、龍王丸の元服後に血を血で洗う騒動が起きることとなりますね。

中盤では、今川新五郎と新九郎とが手打ちをしている一方で、関東の情勢はどんどん混乱の度を増していっています。
今川家の家督争いで新九郎を翻弄した太田道灌はこの頃、下総を支配する千葉一族と戦っていたのですが、この千葉一族の宗主である古河公方・足利成氏は道灌の千葉攻めを承認した上で援軍を送っており、関東の情勢は大田道灌を軸に動いている、といった状況ですね。

ただ、こういった情勢に、道灌の主家である扇谷(上杉)定正や、関東管領の上杉家が不満の念を持ち始めていて、ここらに彼が野望途中で上意討ちされた気配が見えています。

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レビュアーの一言

本巻では、将軍位を継いだ義尚の初仕事の前に管領が辞任しようとしたり、細川京兆家の細川政元が丹波国守護の一宮宮内大輔に拉致されたり、と京都の支配層内部であいかわらずのゴタゴタが続いていますし、関東は関東で、堀越公方や古河公方、関東管領家同士が入り乱れて勢力争いを繰り広げています。今シリーズでは、京と関東だけがとりあげられているのですが、ほかの地域でも同じような争いが起こっているのは想像できるところで、この各勢力が入り乱れて争うところが室町時代をわかりにくくしているんでしょうね。

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