「絵画教室」経験を経て、八虎は「反体制の旗手」に出会う=山口つばさ「ブルーピリオド」11・12

金髪ピアスのパリピ男子高校生が、突然、絵画の道にはまりこみ、東京藝大を目指して悪戦苦闘の受験生活の末に合格、その後もどこへ進むべきか悩みながら画家修業に励む絵画系スポ根マンガ『山口つばさ「ブルーピリオド」(アフタヌーンKC)』の第11弾から第12弾。

前巻まででは、憧れの東京藝術大学に入学したものの、そのレベルの高さと同級生や先輩の技術のレベルの高さに圧倒されていた八虎だったのですが、進級制作もなんとかクリアした後、バイトで雇ってもらった絵画教室で心境の変化が訪れます。

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あらすじと注目ポイント

第11巻 様々な児童のいる絵画教室が、八虎と橋田に教えてくれたものは?

第11巻の構成は

43筆目 なんでなんでなんで
44筆目 とりあえず自分を見直させてもらっていいですか
45筆目 ずっと好きでいさせてください
46筆目 とある小学生は努力して幸せになりたい
47筆目 ゆれる筆先

となっていて、大学の授業料は親から出してもらっているものの、一般の大学生より画材費などの経費がかさむため、絵画教室での講師のアルバイトを始めることにした「八虎」だったのですが、その絵画教室が、高校時代に初心者だった八虎を指導してくれた「佐伯先生」が運営している絵画教室だった、という偶然です。高校の美術教師は非常勤で、こちらの教室のほうが本業だったようですね。

で、現役藝大生ということで雇ってもらうことに成功した八虎は授業の手伝いに入るのですが、相手は世の中の「権威」なんてことには無頓着な小学生ばかりで、早速、教室内一の悪ガキ「翔也」にパシリのように使われています。さらに、美術予備校時代の同級生・橋田もアルバイト講師として勤めることとなり、混乱の度は一層増していくことになります。

しかも、教えるのが単なる絵を描くことが好きな小学生だけではなく、色覚異常があって、黄色が認識するのが苦手な「美玖ちゃん」、悪ガキながら絵を描くのが好きなのに、それを全く評価せず、絵画教室を放課後学級ぐらいに考えている母親のいる「翔也」、父子家庭で、教育熱心な父親の方針でたくさんの習い事をさせられている、上昇志向の強い「小夜ちゃん」など、様々な生徒と保護者がいる中、八虎と橋田は何を学んでいくのでしょうか・・といった展開です。

少しネタバレしておくと、結局、小夜ちゃんは習い事の重圧に耐えかねて辞めてしまうのですが、巻の最後の「書き下ろし」で少し光が見えてきています。

第12巻 八虎は反体制派の旗手「不二桐緒」に出会う

第12巻の構成は

48筆目「嫌いな食べ物はナポリタン」
49筆目 悩みのですループをクリアできる攻略サイトはどこですか
50筆目 熱にあてらっれると逆に冷静になっちゃくアレ
51筆目 迷走2.0 アカデミーハック
52筆目 地盤が弱るとすぐ沼る

となっていて、春休みも終わり2年生となった「八虎」だったのですが、そこで予備校時代の同級生で、一番才能があると噂されながら昨年は藝大に落ちた「桑名マキ」に再会します。彼女は昨年の5月ごろから彫刻を始めて、今年の入試で「彫刻科」に見事豪化しているようです。さすが「芸大エリート一家」の出身は違いますね。

さらに彼女の縁で、日本画科の神山史など、2年次に「八虎」が巻き込まれていくトラブル+出来事の導火線となる人物たちと知り合っていくことになります。

さらに、学生を担当する指導教官も大学の副学長で20年近く油絵専攻の教授をしている「犬飼教授」に替わり、課題のほうも1年次の時のようなフィーリング重視のものから、ドローイング500枚を2週間で書く、といったハードワークへと変わっていきます。

犬飼副学長は、1年次の進級制作がいずれもパワー不足だと感じていて、八虎たち新2年生の「絵画の基礎体力」をとことん鍛え上げるつもりのようです。昨年は「画を描くこと」に恐怖心さえ抱いていた八虎だったのですが、無心に手を動かすことが必要なこの課題には抵抗感なく取り組めたようですが、犬飼からは

自己完結は、あなたを小さくしますよ。人に触れ、作品に触れなさい

という厳しい注文が入ります。

その意味をあまり深く考えていない「八虎」なのですが、後に犬飼の求める経験が向こうからやってくることになります。

第1陣は桑名の友人の日本画科の神山を通じて知り合ったデザイン科の如月と先端藝術表現科の久山から紹介されたアートコレクティブの「ノーマークス」を主催する「不二桐緒」です。

彼女の思想性の強烈さと、梁山泊のような無頼さと共同生活に魅せられて、大学に通わずにノーマークスの拠点に通いつめる「八虎」なのですが・・という展開です。今まで会った人々とは全く違うタイプと思想をもつ人物に出会っての、八虎の変化していく姿が注目です。

レビュアーの一言

「絵画教室編」を経て、「藝大2年生編」になってから、今まで受験生活の延長のように教官から出される「課題」にひたすら良い点をとろうとしていた「1年生編」から脱皮して、「画家」としての成長を描く物語へと変質していっているようです。

異質な登場人物も増え、彼らの影響を受けながら、あるいは影響を排除しながら、「八虎」がどう変化していくのかが、いわゆる成り上がり物語になってしまうのか、若者の新しい成長物語となっていくのか、今後のシリーズ展開に注目しておきたいです。

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