憧れの「東京藝大」に入学するも、八虎の画家修業は前途多難=山口つばさ「ブルーピリオド」7~10

金髪ピアスのパリピ男子高校生が、突然、絵画の道にはまりこみ、東京藝大を目指して悪戦苦闘の受験生活の末に合格、その後もどこへ進むべきか悩みながら画家修業に励む絵画系スポ根マンガ『山口つばさ「ブルーピリオド」(アフタヌーンKC)』の第7弾から第10弾。

前巻までで、東京美術予備校の大葉教室ではただ一人の東京藝大合格者となった「矢口八虎」だったのですが、自らの経験と技術不足を痛感しながら、藝大ライフに踏み出していきます。

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あらすじと注目ポイント

第7巻 「八虎」の藝大ライフは、才能と経験の壁にぶつかるところから始まる

第7巻の構成は

26筆目 藝大ライフ1日目
27筆目 洗礼
28筆目 ガツーン
29筆目 俺、なくね・・・?

となっていて、数少ない現役合格性として、東京藝術大の学生生活に踏み出した「八虎」だったのですが、最初のオリエンテーリングの際に、チューターとなる博士課程1年の花陰真理亜にからかわれたり、と今までの受験生活とは全く違う自由な雰囲気に完全に呑まれています。

また同級生の技術のレベルはもちろん教養の深さでも、「八虎」が足下にも達しないレベルの高さで劣等感を感じざるをえません。こんな時、通常のスポ根ものなら、本番で自分の思ってもみなかった才能が突如が発掘されるものなのですが、現実世界と同様、この漫画ではそういうこともなく、「自画像」を描いた授業の講評でも、「酷評」ともいえないほど相手にされていなくて、これは読んでいて彼の精神状態を心配してしまうほどですね。

一方、藝大を落ちて、姉への劣等感から落ち込む一方だった「桑名マキ」だったのですが、「八虎」とひさびさに会った際に、自分が合格しなかった理由を冷静に告白します。やはり、予備校の夏期講習のコンクールで「優勝」したのが悪い方に響いたようで、無意識に安全な道をとってしまい、その後の「伸び」がなかったことにあると分析しているようなのですが、この分析が、彼女を、「油絵」から「彫刻」へと新たな道へ進ませることになっています。(少しネタバレしておくと、彼女は1年の浪人後、藝大の「彫刻科」に見事合格していますので、彼女の才能は大したものです)

第8巻 藝大の洗礼を浴びてヘロヘロとなった「八虎」は神輿づくりに駆り出される

第8巻の構成は

30筆目 食わず嫌いアカン
31筆目 渋谷は一日にしてならず
32筆目 祭りの準備開始
33筆目 ジゴギセイ精神
番外編 おいしい学生旅行

となっていて、1学期の今までの制作課題の「自画像」の講評で、作品が途中で剥がれ落ちてしまったというハプニングに見舞われ、講評すらしてもらえず落ち込む「八虎」は今回は「東京の風景」をテーマにした「平面作品とマケット(ラフな模型)」の制作に取り組みます。

今回、八虎は江戸東京博物館へ見学に行ったのをきっかけに東京の歴史について目覚め、自分が絵の道に踏み込んでいくきっかけとなった「渋谷」の早朝をテーマにした作品をつくろうとするのですが、調べた知識と情報に振り回されて、今回は消化不良に陥ってしまったようですね。

壁にぶつかったような状態が続いたまま、夏休みに突入した「八虎」だったのですが、ここで、芸大の学園祭名物の「神輿」づくりに参加します、これは美術学部と音楽学部混合の8チームに分かれて、それぞれが神輿と法被をつくり、学園祭初日に、その法被を着て神輿を担いで上野を練り歩くイベントで、1年生が主力のイベントでもあります。

八虎が入ったチームの神輿づくりのリーダーは同じ油絵科の同級生「三木きねみ」が務め、彼女の根っからの明るさと体力に引っ張られていくのですが、彼女が暑さと過労でダウンしたことから、神輿づくりは突然のピンチに見舞われてしまい・・という展開です。

第9巻 学園祭が終わるも、八虎と世田介の悩みは尽きない

第9巻の構成は

34筆目 これは慶事の前触れだ
35筆目 何も描けなくて・・・
夏36筆目 ハロー!ワールド
37筆目 鎧を着たヴィーナス
38筆目 才能と努力

となっていて、神輿づくりの制作が遅れに遅れて、学園祭までに間に合わないかも、と思われたところで、村井八雲ほか同級生のメンバーがかけつけ、なんとか間に合わすことに成功するのですが、八虎はスランプからまだ回復していないようです。

しかし、この自信のなさは「八虎」だけではなく、才能の塊のような「高橋世田介」も同じのようで、美術以外の教科の成績が良かったことから、2次試験を実質免除されて入学した、という疑いを拭うことができず、鬱屈に繋がっています。もとは「猫屋敷教授」の「頭良いんでしょ、君?、良い頭は使わなきゃ」の発言に端を発しているようなのですが、教授の意図は持てる力の出し惜しみをしている与田介をじれったく思ったことから出た発言で、けして彼の才能を貶したわけではないのですが、悩みの多い青年期で傷つくのが怖い世田介の心は木津憑いているようです。

そして、二人は、自らの才能についての悩みが解消されないまま、進級の審査を受ける「進級制作」の時期がやってくるのですが・・という展開です。

第10巻 「進級制作」は、八虎と世田介に何をもたらしたのか?

第10巻の構成は

39筆目 踏まれたり蹴られたり
40筆目 気がついたら友達の地雷を踏んでいる俺のスキルが優秀すぎる
41筆目 気がついたら俺の地雷を踏んでい友達のスキルが優秀すぎる
42筆目 絵は嘘をつかない

となっていて、この巻は自らの方向性を見失っている八虎と世田介が悪戦苦闘するタームになっています。

まず世田介くんのほうは、小学校に通って、動物飼育小屋の兎と過す毎日が続く中で、自分が愛おしいと思うものや、同級生で気の合う仲間を再発見しているようです。母親からは「絵しかできない」と過保護に育てられ、周囲の友人からは勉強もでき、絵も描けるということで特別扱いされている彼が何をつかんだのか、は原書のほうで。

そして、行き先に迷っているもう一人、八虎のほうは落ち込んでいる世田介を元気づけるため、一日中遊びに付き合うことを約束し、世田介の要望で、八虎がいつも遊んでいる「渋谷」で徹夜で遊ぶことにし、美術館と画廊めぐりとスポーツバーで徹夜するのですが、その朝帰りの朝、自分の原点に立ち返ることgあできたようです。

少しネタバレしておくと、進級制作の講評はかなり厳しいものに終わるのですがあおれぞれが掴んだものは結構大きかったように思えます。その詳細は原書でどうぞ。

レビュアーの一言

途中、何度も挫折したり、ストレスに負けそうになりながらも、最終的には「合格=入学」という目標が明確にあったせいで、物語展開も見やすかった「東京藝大受験編」とうってかわって、「藝大1年生編」は、自らの才能の拙さや方向性に悩みこむ、沈鬱なところの多い物語展開となっています。

まあ、このへんは八虎が「いっぱしの画家」になっていけるかどうかの試金石みたいなものなので、ここをどう脱け出すかが、正解のない中で悪戦苦闘姿が興味深いです。

もともとは「受験スポ根もの」として始まったこのシリーズなのですは、ここらから芸術家の「青春もの」に昇華していっているようです。

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