「閉じられた職場環境」下での普遍的な仕事のコツ ー 泊太郎「海上自衛官が「南極観測船白瀬」で学んだきつい仕事に潰されない人のルール」

「仕事術」の本というと、昨今はフリーランスの仕事が増えたうえに、仕事の環境も「クラウド」を活用したものが増えたせいか、内容的には、ネットを使ったノマド的なものが多いのだが、多くの職場は、まだまだ「オフィス」に通勤して仕事で、紙を使った書類が仕事が中心の形態が主流であることは間違いない。

そんな多くのビジネスマンにとっては、やはり、人間関係も、仕事環境も、一定程度「閉ざされた」環境にあることを前提とした仕事術でないと、皮膚感覚的に「ちょっとなー」と思うことが多いはず。
そうした大多数のビジネスマンに向けて、南極船「白瀬」といういやおうなしに5か月間船上にあるという「閉じられた」環境の中で、いかに人間関係を良好に保ち、円滑に仕事をやっていくかのコツを、元海上自衛官の筆者がアドバイスするのが、本書『泊太郎「海上自衛官が「南極観測船白瀬」で学んだきつい仕事に潰されない人のルール」(秀和システム) 』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 5ヶ月間閉じこめられて学んだ「ストレス」に負けないルール
第2章 怖い上官たちから学んだ「上司」とうまく付き合うルール
第3章 怒鳴られまくって身に付けた「上手な叱られ方」のルール
第4章 厳しくも野菜い先輩たちから学んだ「後輩指導」のルール
第5章 制限の多い艦内で快適に過ごすための「気遣い」のルール
第6章 忙しさにすりつぶされないための「手抜き」のルール
第7章 不要なトラブルを起こさないための「同期」と付き合うルール

となっていて、この仕事術の舞台となる「南極観測船白瀬」の航海というのが、南極までの往復5か月間の間、物資の積み下ろし以外は海の上、そして海上自衛隊という規律に厳しい組織内での仕事なうえ、娯楽や食事のメニューも限定で、個人スペースはベッドの上だけ、というまあ、仕事環境からすると「ブラック」なところに間違いない。

で、そうした白瀬での任務を、筆者が2回もこなすことができたのは

私が2回の南極行動を無事に乗り切れたのは、理由があります。
それは、「しらせ」という艦に、キツい仕事に潰されないための様々な知恵が蓄えられていたからです。
具体的には、「いかに手を抜くか」「いかに上司や同僚と付き合うか」「いかに楽しむか」等々…

といったところにあるようで、あまり「生真面目にならない」ということがキモの一つであるようだ。

これは、うまくいかない問題に直面した時の解決法に

そのようにストレスが溜まった時、一番危険なことは何だと思いますか?私は、逃げ場がないことだと思います。
「逃げる」と言うとイメージは良くないかもしれませんが、これは重要なことなのです。
いざというときに逃げられる場所を用意しておかないと、追い詰められて最悪の事態を招いてしまうかもしれません。

とアドバイスされていることにも現れていて、こうした「閉じられた」環境下ででは、真正面から受けて抱え込むのが一番よくないことのようで、ここらは今いる職場に勤めつづめるかどうか悩んでいる人も応用してもよいやり方だと思いますね。

また、

艦が修理中のある日、カマ長を含めたディーゼル員の複数名で雑談をしていた時のことです。
どういう経緯かは忘れてしまいましたが、話のネタがストレスや怒りになりました。
そこでカマ長が、「キレそうになった時は『まっ、いいか』って流すことが大事なんだよ」と言ったのです。

であったり、

私たちは必要以上に、空気を読みすぎているのではないでしょうか? 必要以上に空気を読んでしまうと、その空気が悪くなった時に、状況を打破できなくなってしまいます。
(略)
時には「空気を読まない」ことも役に立つのです。

といったあたりは、メンバーが固定されている閉鎖空間ならでは、「仕事を上手くすすめる」コツの一つですね。

このほか、意外なのは

自衛隊というのは、例えば紛争地域など危険な場所に派遣されることもあるわけです。
そのような場所では、マニュアルに規定されていないようなハプニングも日常茶飯事に起きます。
そんな時、マニュアルに縛られていたら何もできません。
それどころか、最悪の場合は命を落とすかもしれないでしょう。
そうならないために、自衛官には臨機応変な対応力が求められるのです

といったところで、場面場面に応じた行動が求められるのは、こうした、一見規律に厳しそうでも、実際の「危険」の直面する可能性の高い「現場」であるようだ。以外に硬直的な「マニュアル」に拘るのは、危険にさらされていないところほど、その傾向が強くなるのかもしれなくて、当方も含め気を付けないといけないところでありますね。

【レビュアーからひと言】

多くのビジネスマンの環境は、多くの場合、人間関係も職場環境も「閉じられた」もので、最近のトレンディな「仕事術」ではどうにもたうまくいかないことも多い。
その点、本書は、南極観測船「白瀬」という、5か月間は、一つの船の中で共同生活を強いられる、というとんでもなく「閉じられた」環境での上手な人間関係を維持していく方法や、要領のいい仕事術が書かれていて、「フツー」のビジネスマンこそ参考になることが多いのではないでしょうか。

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