「令和」の前の「平成」とはどんな時代だったのか? ー 原田曜平「平成トレンド史」

「平成」から「令和」に年号もかわり、皇室の行事のほうも終了したところなのだが、関連する式典や儀式への関心は老若男女を問わず高さに、あらためて驚きを感じた人も多いだろう。
「年号」というのは、世界的にみても日本だけに残っている独特の制度であるらしいのだが、日本人の精神にしっかり根をはっていて、年号が変わると何やら時代が大きく転換したり、変化するような気がしてくるから不思議なものだ。
その「平成」のほぼ30年間について、時代的特徴と消費の動向について、若者研究やトレンド研究で有名な筆者が総覧したのが本書『原田曜平「平成トレンド史 これから日本人は何を買うのか?」(角川新書)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめにー平成は6つの時代からできている
第1期 平成元ー4年(1989‐1992年) 不自由と享楽
第2期 平成5-7年(1993ー1995年) デフレと団塊ジュニア
第3期 平成8-12年(1996-2000年) ネットとケータイ
第4期 平成13年ー18年(2001-2006年) 変化への期待と格差
第5期 平成19年-24年(2007ー2012年) 失望と不安
第6期 平成25年ー29年(2013-2017年) SNSと炎上
総括 今後の消費を展望する
 「女性消費」から「新男性消費」へ

となっていて、この平成の時代を、筆者は6つの時代に分けて、その特徴を見出しているのだが、諸外国でも、この30年間は

1989 六四天安門事件
1990 湾岸戦争勃発
1995 Windows95発表
2001 同時多発テロ「9.11事件」
2004 Facebookサービス開始
2006 Twitterサービス開始
2008 リーマンショック、iPhone3発売開始
2009 アメリカ・オバマ大統領誕生
2010 欧州ソブリン危機、ギリシャの財政破綻、アラブの春
2011 チュニジアのジャスミン革命
2014 クリミア危機・ウクライナ東部紛争
2015 パリ同時多発テロ
2016 アメリカ・トランプ大統領誕生、イギリスのEU]離脱の国民投票

といった出来事がおきていて、世界的規模の戦争こそおきてはいないものの、けして平穏な時代ではなかったといえる。

さらに、この30年間で特筆すべきは。インターネット・スマホの普及で、このあたりが日本の「平成」に色濃く影響を及ぼしいることは間違いないだろう。

で、この時代それぞれの分析は本書のほうで詳細を確認してほしいのだが、トレンドの分析やマーケティングの長らく関わってきた筆者の分析らしく、一味違っているところが随所にあって、例えば第五期で、韓流ブームに対する認識が

2012年を境として日本のテレビで韓国ドラマやK-POPの露出は格段に減り明日。新大久保に通う中高年の女性も減りました。しかし、10代や20第の若年層の女子の間では、韓国人気は衰えることなく、むしろその後も影響力は拡大し続けていきます。
この最大の理由は、SNSの普及でしょう。(P123 )

と世間の常識はちょっと違っていることを指摘したり、第4期と第6期のキャリアウーマンの置かれた状況を比較して、第4期が

勝間和代氏が多くの女性の共感を得た理由がよくわかります。就職氷河期によって非正規雇用が増えたわけですが、そこで一番割を食ったのは女性です。第1期には大学の進学率が男女ほぼいっしょになり、新規就職率で女性が男性を上回ることもありました。それが就職氷河期に入ると、多くの企業は正社員の採用を絞り、正社員を採るにしても男性の堋を多く採る、ということになったのです。難関大学を出て成績も優秀なのに、非正規雇用になってしまった女性たちに対し、きちんと頑張れば「年収600万円になれる」と勝間和代氏は語りかけたわけです。(P86)

であるに対し、第6期は

自立して働いても大変な割に報われない。
だったらそんなに頑張らない方がいいんじゃないか……。
第5期、評論家の勝間和代氏は「女性も年収600万円稼いでインディベンデントな生き方をしよう」と説いたわけですが、歯を食いしばって頑張ってもそこまでなかなか稼げないし、やっぱリパートナーがいた方が安心だし……と考える女性も徐々に増えていきました。
(略)
「女子力」や「モテ」といつたキーワードが出てきたのも2009年(平成21年)くらいから。
「自立した女性」がみんなの憧れだった頃には、「男女差別だ!」と非難章々だったでしょうが、そういう日本社会の現実を少しずつみんな受け入れるようになっていきました。
今の女子大生は専業主婦願望が逆に強くなっていますが、本当になれると思っている子なんてほぼいませんから。(P180)

といった風で、むしろ皮肉な状況に転化していることを看破してくるんですね。ここらは、覚えておくと、雑談の時に、ちょっとした世相論として使えそうな気がします。

そして、筆者がこれからの消費トレンドとして推測するものをネタバレすると

「男の時代」の昭和が終わり、「女の時代」の平成が始まった。そして「女の時代」が終わって、また新しい「男の時代」に入りつつあると感じています。(P183)

ということのようなのですが、詳細は本書でしっかり確認してください。

【レビュアーからひと言】

最近、観光客を増やすための方策として、インバウンドに注目するのが政府も地方自治体も定番のようになっているのだが、ここにも筆者はちょっと斜めのところから分析していて

旅行離れしている若者を中心に、日本人全体があまり国内旅行にお金を使わなくなってきたのです。年間2、3兆円の(インバウンドの)新しい市場ができたとはいっても、既存の構内旅行市場の減少を取り戻すところまではいっていない。金額でみれば、インバウンド消費の影響は実はそれほど大きくはないのです。(P169)

といったことであるようなので、インバウンドといえば何でも解決すると思っている関係者はお気をつけあれ。

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